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おまけのお話

予約だよ!

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 新装開店なサイトと一緒に、リニューアルした温泉もアピール!
 停電から復旧した白銀村のイケメン旅館に、おひめさまの予約が入りました!


「……え、あの……真冬なんですけど……」

 絢の目がまるくなる。

「雪ばっかなんだけど」

 麦が首を傾げる。

「送迎のバス、冬仕様じゃないんだけど」

 菫が吐息する。

「予約でいっぱいとか、結芽、すごい!」

 陵がぎゅうぎゅう抱きしめてくれたら、とろけて笑うしかできない。


「えへへへへ。
 『あなただけの専属の執事をお選びくださいプラン』大人気でよかったね!」

「……そのプランの予約しか入ってない。
 このご時世で1万円も価格上げたのに、真冬の雪山なのに予約でいっぱいってどういうこと!?」

 仰け反る絢に、拳を握る。


「皆さんが、ものすんごいイケメンだということです!!」

 イケメンの皆さんが沈黙した。


「ホストクラブにゆくのは敷居が高いですが、イケメン旅館なら気軽です!
 そのうえ専属の執事が選べて、おひめさまとして甘やかしてくれるとか、最高です!!
 ハンドマッサージで触ってくれるとか至福!
 これをアピールすれば、皆さんは餓えません!!」

 ふんすと鼻息荒く断言した。


「……お、おぉお……!」

 ぱちぱち皆さんが拍手してくれて、陵がぬくぬく抱っこしてくれる。

「さすが我らの導きのひめ」

 ちゅ、とおでこに降る唇が、やわらかくて、あったかくて、恥ずかしくて、うれしくて、ふわふわする。


「僕らにはよく解らない理屈が、結芽ちゃんには物凄くよく解るみたいだから、とりあえず結芽ちゃんについていこー!」

 絢が拳をあげる。

「お――!」

 イケメンの皆さんも拳をあげてくれた。



「ねえねえ、結芽ちゃん、お膳行列も予約でいっぱいなんだけど」

 サイトを確認した菫が目をまるくする。

 お皿をひとつずつお盆のうえに載せて、イケメンの皆さんが運んできてくれるお膳行列も、めちゃくちゃうれしかったのでプランにしてみたんだよ!

 旅館の離れの雪景色の庭に面したお部屋でお料理をご用意なので、特別感満載だ。


「追加料金5千円とるのに、お料理の内容一緒なのに、なぜ皆お金を払って予約が殺到するかな??」

 価格を上げたら予約殺到の意味が解らないらしい絢が首を捻って、私は力強く拳を握った。


「皆さんが、凄まじく、イケメンだということです!!」

「……お、おぉお?」

 そなのかな? と不思議そうに顔を見合わせる皆さんがイケメンすぎる。
 周りがイケメンしかいないから、すんごいイケメンがこの村ではふつーなんだよね、わかります!

 うんうん頷いていたら、ぶすりと陵がふくれた。


「……結芽、よろよろしたりしないよな?」

「陵が一番かっこいーよ!」

 きゅう、と抱きついたら、真っ赤になった陵が、ぎゅうぎゅう抱きしめてくれた。
 




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