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……とくべつ?
しおりを挟む「……私ね、ずっと、ずっとひとりで。
さみしくて、苦しくて、痛くて。
どうして生まれてきたのかなあって思ってた。
辛い目に、苦しい目に遭うために生まれてきたのかなあって」
呟いたら、陵の腕が背に回る。
私のふるえる肩を、抱きしめてくれる。
「そうだよ」
「……え?」
「人は、辛いこと、苦しいこと、哀しいこと、遭えば遭うほど、輝くんだ。
結芽は、きらきらだ」
微笑んでくれる陵が、きらきらだよ――!
熱い頬で、陵の胸に、もごもご顔を埋める。
「……陵が、美味しいって思ってくれるなら。
陵が喜んでくれるなら。
私、哀しいこといっぱいでよかったなあって、初めて、思った」
ぽそぽそ呟いたら、抱きしめてくれる腕が強くなる。
「結芽が辛い目にたくさん遭ったことは、ほんとに悔しいけど。
でもだからこそ、俺に逢いに来てくれた。
あのサイト、絢の魔法が掛かってて。ひとりぽっちの哀しい人にだけ見えるんだ。
俺たちを、誰よりも求めてくれる人だけに、見えるんだ」
息をのんだ私は、囁く。
「……めちゃくちゃ疲れ果ててて。
だまされるかもしれないけど、それでも、癒されたかったの」
こぼれる涙を、陵の唇がすくってくれる。
「……結芽の哀しみは、俺も哀しいのに。
めちゃくちゃ美味しくて、ごめん」
うっとり囁いてくれる陵の唇に、頬が燃える。
「あ、の……皆に、こんなにやさしくしてくれる、の……?」
聞いたら、陵は白銀の目を剥いた。
「まさか――!
ふつうは鍵を渡す時に手に触れたりとか、グラスを渡す時に指に触ったりとか、怪しまれない程度に、ほんの少し触るだけ。
皆、哀しみがはち切れそうなくらい溜まってるから。
それだけでも俺たちは満たされて、癒される」
繋がる陵の指を、握る。
「……じゃあ、あの、私は……」
特別に、やさしく、してくれてる……?
聞くのは恥ずかしくて、おこがましいのに、聞きたくて。
こんなに芳しい陵に、私が釣り合うはずなんて、ない。
解っているのに、陵の瞳がとろけそうにやさしいから。
見てしまう夢を、止められない。
私を見つめた陵は、ささやいた。
「……いい匂い、する?」
きょとんとした私は、頷く。
「陵、めちゃくちゃいい匂いする」
ほんのり紅くなった陵が、私の手を握る。
「あやかしには、対になる人間がいると言われてる。
逢ったら、すぐ解るんだって。
身体の芯から溶けてゆきそうな匂いがするから」
鼓動が、跳ねる。
「……陵の香り、は……」
「結芽、めちゃくちゃいい匂いする。
触れたら、頭の奥まで溶けてゆきそうに極上で。
最初から、わかってた。
結芽が、俺の対だって。
…………でも俺は、あやかしで…………結芽は気持ちわるいだろうと思って……」
「そんな訳ない――!」
陵のふるえる背を、抱きしめた。
――――――――――――――――――――――――――――
はじめましての方、しおりを挟んでくださった方、お気に入りに入れてくださった方、いつも読んでくださる方、心からありがとうございます!
しおりが動く度に、読んでくださる方がいらっしゃるんだと、とても励まされました。
投票してくださった方、ほんとうにほんとうにありがとうございます。
感謝の気持ちでいっぱいです。
もう少しで完結、後にざまぁかもしれない番外編が続きます。
すこしでも楽しんでくださって、癒されてくださったら、とてもうれしいです。
いつも心から、ありがとうございます!
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