【完結】非モテアラサーですが、あやかしには溺愛されるようです

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……とくべつ?

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「……私ね、ずっと、ずっとひとりで。
 さみしくて、苦しくて、痛くて。
 どうして生まれてきたのかなあって思ってた。
 辛い目に、苦しい目に遭うために生まれてきたのかなあって」


 呟いたら、陵の腕が背に回る。
 私のふるえる肩を、抱きしめてくれる。


「そうだよ」

「……え?」

「人は、辛いこと、苦しいこと、哀しいこと、遭えば遭うほど、輝くんだ。
 結芽は、きらきらだ」


 微笑んでくれる陵が、きらきらだよ――!

 熱い頬で、陵の胸に、もごもご顔を埋める。


「……陵が、美味しいって思ってくれるなら。
 陵が喜んでくれるなら。
 私、哀しいこといっぱいでよかったなあって、初めて、思った」

 ぽそぽそ呟いたら、抱きしめてくれる腕が強くなる。


「結芽が辛い目にたくさん遭ったことは、ほんとに悔しいけど。
 でもだからこそ、俺に逢いに来てくれた。
 あのサイト、絢の魔法が掛かってて。ひとりぽっちの哀しい人にだけ見えるんだ。
 俺たちを、誰よりも求めてくれる人だけに、見えるんだ」

 息をのんだ私は、囁く。


「……めちゃくちゃ疲れ果ててて。
 だまされるかもしれないけど、それでも、癒されたかったの」

 こぼれる涙を、陵の唇がすくってくれる。


「……結芽の哀しみは、俺も哀しいのに。
 めちゃくちゃ美味しくて、ごめん」

 うっとり囁いてくれる陵の唇に、頬が燃える。


「あ、の……皆に、こんなにやさしくしてくれる、の……?」

 聞いたら、陵は白銀の目を剥いた。


「まさか――!
 ふつうは鍵を渡す時に手に触れたりとか、グラスを渡す時に指に触ったりとか、怪しまれない程度に、ほんの少し触るだけ。
 皆、哀しみがはち切れそうなくらい溜まってるから。
 それだけでも俺たちは満たされて、癒される」

 繋がる陵の指を、握る。


「……じゃあ、あの、私は……」

 特別に、やさしく、してくれてる……?


 聞くのは恥ずかしくて、おこがましいのに、聞きたくて。

 こんなに芳しい陵に、私が釣り合うはずなんて、ない。
 解っているのに、陵の瞳がとろけそうにやさしいから。
 見てしまう夢を、止められない。


 私を見つめた陵は、ささやいた。

「……いい匂い、する?」


 きょとんとした私は、頷く。


「陵、めちゃくちゃいい匂いする」

 ほんのり紅くなった陵が、私の手を握る。


「あやかしには、対になる人間がいると言われてる。
 逢ったら、すぐ解るんだって。
 身体の芯から溶けてゆきそうな匂いがするから」


 鼓動が、跳ねる。


「……陵の香り、は……」

「結芽、めちゃくちゃいい匂いする。
 触れたら、頭の奥まで溶けてゆきそうに極上で。
 最初から、わかってた。
 結芽が、俺の対だって。
 …………でも俺は、あやかしで…………結芽は気持ちわるいだろうと思って……」

「そんな訳ない――!」

 陵のふるえる背を、抱きしめた。







――――――――――――――――――――――――――――


はじめましての方、しおりを挟んでくださった方、お気に入りに入れてくださった方、いつも読んでくださる方、心からありがとうございます!

しおりが動く度に、読んでくださる方がいらっしゃるんだと、とても励まされました。

投票してくださった方、ほんとうにほんとうにありがとうございます。
感謝の気持ちでいっぱいです。

もう少しで完結、後にざまぁかもしれない番外編が続きます。

すこしでも楽しんでくださって、癒されてくださったら、とてもうれしいです。

いつも心から、ありがとうございます!


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