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まちがっても

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 瓦礫になってしまった邸と、倒れ伏す三人を見つめたロロァが、ささやくように告げる。

「僕にも、いい気味だって、思う気持ち、あるよ、とーや」

 ちいさな手が、透夜の頭を撫でてくれる。

「でもそれが、さみしい気持ちだって、知ってる。僕ね、いっぱい、いっぱい、いっぱい怨んで、憎んで、呪って、ぐちゃぐちゃになったから。透夜には、そんな気持ち、味わってほしくなかった」

「……ごめん、なさい」

 ロロァは首を振る。

「透夜が真っ暗闇の底に落ちるときも、僕がいる。
 どんな闇の底にも光はあって、ほんとうは闇もやさしい。
 わかるまで、ずっと、傍にいる」


 抱きしめて、笑ってくれる。


 あふれる涙が、止まらない。
 想いは、言葉にしようとした途端、歪に形を変えてしまう。
 言葉になんて、できないけど。
 言葉にしないと、伝わらないから。

 透夜はそっと、ロロァを抱きしめる。


「……あなたの従者になれて、あなたをすきになって、よかった」


 真っ赤な頬で、ロロァが笑ってくれる。


「とーや」

 抱きしめて、頭をなでてくれる。


 人格を壊され強制させられたとはいえ、自らが成した非道は透夜の罪となり、死を以てさえ許されることはないのかもしれない。

 どんなによい子になりたくても、また間違ってしまうかもしれない。

 止めたくても、止まれないこともあるかもしれない。



 でもあなたが隣で笑ってくれるなら。

 やさしい人になれる気がするんだ。

 ほのかな光のほうへ、向かえる気がするんだ。



 間違ったら、謝って、責をこの身に背負って

 何度だって、やり直せる気がするんだ。



 間違わない人生なんて、無理だから

 過ちに苦しみ、泣いて、取り戻せない時が、取り戻せない関係が、取り戻せない思いが、汚泥のように降り積もる

 そんな苦々しい生きることさえ、あなたの隣なら、すべてが輝く光になる気がするんだ。


「ロロァさま」

 あなたを呼ぶ声が、こんなにあまい。


「とーや」

 あなたが呼んでくれる声に、心まで熔ける。



「トゥヤ! もう、ひとりでやっちゃうんだから──!」
「ずるいよ!」

 駆けてきた常葉が、藤が、紅蓮が、柳が、仲間たちが笑ってくれる。

「トゥヤ!」
「無事……!?」

 駆けてきたセオが、ミィが、抱きしめてくれる。

「トゥヤ──!」
「皆、無事か!」

 キァナが、ユィルが、ふたりを守ってくれた空と木蓮が駆けてくる。


 皆の顔を、番号じゃなく、名前で確認する。

 誰ひとり、欠けてない。

 皆の目に、光があった。

 崩れ落ちた帝宮とともに、非道を成し続けた魔道具は破壊された。
 もう誰かが、暗殺人形にされることはないだろう。


 ひとりひとりを見つめた透夜の唇が、ふるえる。

「……よか、った……」

 あふれる涙とのばした腕を、皆の腕が、抱きしめてくれた。
 



 崩れ落ちた帝宮と、竜巻から振ってきた大量の闇衣と、ぽこぽこにされて落ちてきた帝王と、壊滅したゾンデ家とギビェ家を

「いやあ、自然災害って怖いですね!」

 透夜は笑顔でスルーした。


 だって、竜巻だもん。

 特定の人たちだけが損害を受けてるように見えるけど、竜巻だもん。




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