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ぽこぽこ
しおりを挟む「この──!」
抜いたセオの剣が、襲い来る闇衣の刃に弾き飛ばされた。
「く──! 逃げろ、ロロァ! お前は関係ない! 生きろ──!」
セオの叫びに、ロロァの腕のなかのミィも頷く。
「きみは、生きて。……僕を、たすけて、くれて……ありがとう。……うれし、かった」
はにかむように微笑んだミィが、ロロァの腕から抜け出した。
「だめ──!」
ミィを、セオを、守ろうとするロロァまで両断しようと襲う剣が
バギィ──!
音を立てて砕け散る。
ミィを、セオを、ロロァまで貫こうとしていた闇衣たちが、刃の一閃で吹き飛んだ。
「……遅く、なり、申し訳、あり、ません、わがきみ」
珍しく肩で息をした透夜が、汗で濡れた髪を払った。
『とーやー、あんまり爆速使うと死んじゃうよー』
精霊さんの声に、透夜は眉をあげる。
「ロロァさまが死んだら、生きる意味なんてないだろう」
あまりにも当たり前だったから、唇からこぼれた。
駆けてきたちいさな身体が、透夜の胸に飛び込んだ。
「とーや!」
抱きしめてくれるロロァの腕が、ふるえてる。
「こわい思いをさせました。申し訳ありません、わがきみ」
首を振ったロロァは透夜の胸に顔をうずめる。
「……来てくれるって、信じてた」
ふうわり赤い頬で、まっすぐな瞳で、見あげてくれる。
あまいささやきに、とろけて笑う。
「お守りできて、よかった」
ちいさなあるじの身体を、包みこむように抱きしめた。
「トゥヤ来た!」
「ごめん、多過ぎて押し負けた!」
あちこちに刀傷を負った皆が声をあげる。
「ちゃんと索敵できてなかった……!」
「ごめん……!」
さげようとする柳の、常葉の頭を、透夜の手が止める。
「柳はよく頑張ってくれた。
よく耐えてくれた。ありがとう、常葉」
微笑んだ透夜は、襲い来る闇衣たちを薙ぎ払いながら声を張る。
「皆、よくやった! 酷い怪我してる子はいるか? ロロァさま、手当お願いできますか!」
「もちろん!」
ちいさな主が、胸を叩いて笑ってくれる。
それだけで、何だってできる気がするんだ。
「『よい子の隠密団』集合! 結界の精霊さん、皆を守る結界張って! 風と土の精霊さん、特大の魔法お願いします!」
『はちみつはー?』
「たっぷり!」
精霊さんたちとの会話が解ったように、ロロァがはちみつの瓶を掲げてくれる。
『がんばるー!』
精霊さんたちが、きらきらだ。
「皆ー! しょーしゅー!」
透夜の声が風の精霊さんの力で帝都に響いた次の瞬間『よい子の隠密団』が全員集合した。
「皆、よくやってくれた! 結界に入ってくれ、特大魔法で一掃する! 結界の精霊さん、お願いします!」
『むうー!』
ミィをセオをロロァを、皆を守る結界が立ちあがる。
「風と土の精霊さん、お願いしますー!」
『いっくよー!』
透夜の底抜けの魔力が噴きあがる。
瞳に閃光が走った次の瞬間、石礫を抱きこんだ竜巻が帝都を染めた。
「いっけえ──!」
バギォ帝国とエゥリケ王国から掻き集めたのだろう闇衣たちを呑み込んだ竜巻のなかで、石礫にぽこぽこにされた闇衣たちがぽたぽた落ちてくる。
「戦闘不能な昏倒でいいからねー」
『あいよー!』
風の精霊さんと手を繋いだ土の精霊さんが、楽しそうに笑った。
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