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ロロァも?

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「ちょっと大変なことがあったんです。苦しく哀しい人を慰めるのは、浮気じゃないんですよ」

 ぽふぽふロロァの頭をなでなでする透夜に、涙をぬぐったセオが顔をあげた。

「なんか、めちゃくちゃかわいーのが来た!」

 セオのぶどうの目が爛々してる。

「はいはい、かわいい男の子が大すきなんだな」

「当たり前だ!」

 拳を握って力説してる。

 きもちわかる。


「あ、あの、倒れてる人、いる……僕、回復する?」

 そうっと見あげてくれるロロァに、透夜は微笑んだ。

「おじいちゃんからお願いできますか」

「う、うん!」

 じぃじの傍に座ったロロァは、ちいさな手をかざす。

「精霊さま、どうか、御力をお貸しください」

 あふれゆく緑の光に、セオが目を剥いた。

「な──!?」

「治癒魔法。ロロァさまは、奇跡の子です」

「かわいいだけでも奇跡なのに、治癒までできるなんて、すんごい奇跡だ!」

 ロロァを見つめるセオの瞳が、きらきらしてる。


 わがきみが褒めたたえられるのは、とてもうれしい。
 わがきみがモテるのも、うれしいはずなのに。

 どうして胸が、ぎゅうぎゅうするんだろう。



「……ぅ……あ……セ……オ、さ……ま……?」

 目を明けたじぃじに、セオが駆け寄る。

「じぃじ!」

 横たわったままのじぃじの目から、涙があふれた。


「……セオさま……わしは……間違い、ました……お詫びの、しようも、ない……」

 あふれる涙を、ふるえる声を、セオのちいさな腕が抱きしめる。


「……じぃじ、俺は、王太子でなくなろうと思う」

 セオの声も、ふるえてた。


「……セオさま……」

「平民になって、トゥヤとゆく。……じぃじも、一緒に来てくれたら……王太子じゃなくなる俺には、用は、なぃ……?」

 消えゆく声を、伸ばされたじぃじの腕が抱きしめた。


「愚かなじいを赦してくださるなら。命尽きるまで、セオさまのお傍に」

 ふたりの涙を見つめた透夜が、微笑む。


「一緒に暮らす仲間に、ふたり追加。いいかな?」

「勿論!」

 常葉と藤が笑って、柳もこくりと頷いた。
 驚いたように目を見開いた紅蓮も、常葉と藤に肩を叩かれて、頷いてくれる。
 じぃじを回復してくれたロロァは、朱い頬で透夜を見あげる。


「……ぅわき、しな、ぃ……?」

 もじもじ赤い頬で聞いてくれるロロァの前に屈む。
 瞳を重ねて、ささやいた。


「ロロァさまも?」


「…………え?」

 こんなこと、従者の域を超えてる。
 わかっているのに、唇は、止まらない。


「透夜以外の誰かを、お想いになりませんか?」

 大きな藍の瞳が、瞬いた。


 ふうわり、ロロァが笑う。

 悪役令息だなんて、絶対嘘だと思う、とびきり愛らしいかんばせで、ふわふわ紅い頬で、とろける藍の瞳で、笑ってくれる。


「とーやも、僕と、いっしょのきもちね」

 ちっちゃな腕で、抱きしめてくれる。



「だいすき、とーや」


 涙が、あふれた。



 常葉が、藤が、柳が、紅蓮が、セオが、びっくりした顔をしてる。

 ロロァがちっちゃな手で、頭をなでてくれる。



「いっしょに、泣いて、いっしょに、笑って、ずっと、ずっと、いっしょに、いようね」






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