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帰る
しおりを挟む隠しキャラの役割がおかしくなってるのか、これがセオの素なのか解らない!
しかし死刑宣告はいただけない。
「俺を死刑にするなら、きみが死ぬけど」
あっさり真実を告げてしまった。
真っ青になったちっちゃいセオが更にショロショロカタカタしてる。
……なんか、ごめん?
もしかしてちっちゃな子どもをいじめてる……!?
いや、今の言動はだめだろう──!
ちゃんと叱るんだ、じぃじ!
ってじぃじが叱る前に、真実を告げてしまった!
俺のほうがよっぽど悪役っぽい。
おかしい。
「セオさま、今のはセオさまが悪うございますよ。『め!』ですじゃ」
じぃじがやさしく叱ってあげてる!
どうしてこれを待てなかった、俺!
「すぱだりじゃないから?」
にやにやしてる藤の突っ込みが刺さって痛い。
「それで、この闇衣の人たちは?」
油断なく警戒したままの透夜の言葉に、じぃじは胸を張った。
「セオ様をお護りしております精鋭部隊ですじゃ」
「正しくは?」
更に低くなる透夜の声に、じぃじは微笑む。
「ここではちょっと。往来ですのでな。宿を取っております、どうぞそちらで。
皆さまは『よい子の隠密団』であられますな?」
透夜は冒険者同盟から貰った脅迫状みたいな依頼書を見せた。
「確かに。ではどうぞ、こちらへ」
じぃじが闇のローブを揺らしてセオの手を引き、夕闇に溶けるように歩いてゆく。
その背を見つめた皆が、目を細める。
「できるね」
突っ込み鋭い藤の言葉に頷いた。
「あの中では一番な。気づいたか」
透夜の低い声に、柳が頷く。
常葉は首を傾げた。
「こんなにあからさまなんだから、わざとじゃないのかな?」
「聞いてみよう。皆、警戒怠りなく。
殺しにくるなら、殺っていい」
低く低く潜められた声に、皆が頷く。
「まあできるなら昏倒で。無理なら殺」
「りょーかい!」
常葉が笑う。
「できるならって付けられるとさ、義務って感じだよね。だってできないと無能ってことでしょ」
藤が唇を尖らせて、柳がこくこくしてる。
「いちおー俺ら『よい子の隠密団』だからさ、殺しは最後の手段ってことで。
でも、皆の命のほうが比べようもないくらい大切だ。
危ない時は躊躇うな」
透夜の目が細くなる。
「一瞬で死ぬぞ」
声は、凍えた。
たくさんの死を、目の前で見てきた声だ。
「わかってる」
頷く皆の瞳は、暗殺人形だった頃の影を滲ませた。
皆の背を、透夜が叩く。
「絶対、無事で帰ろうな」
翳っていた皆の瞳が、瞬いた。
今までなら、ありえない言葉だった。
誰かが死んでも、その屍を乗り越え、任務は完遂する。
それが暗殺人形に課せられた使命だった。
誰かが傷ついても、死んでも、決して止まらない。
止まれなかった。
「誰かが怪我をしたら、今度こそ、俺は、止まるから。
絶対、皆を生きて帰すから。
仲間のところへ。帰る家へ」
見開かれた皆の瞳が、揺れる。
「……うん」
常葉の額が、肩に乗る。
柳が、朱い眦で、こくりと頷いた。
藤が透夜の背を叩く。
「皆で、帰るよ!」
藤が笑って
「おー!」
皆で笑った。
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