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スパダリ認定
しおりを挟む夜が迫り、お腹と背中がくっつきそうになったので皆で倉庫の近くの終わりかけの市場に出かけた。
もう店じまいだからか、叩き売りだ。
そう、これを求めてた!
「これ、何?」
紅蓮が、ゴーヤっぽい野菜に、びっくりしたみたいにおののいてる。
「うまい?」
空が、置物の玉とトマトっぽい野菜を間違えてる。
「くえる?」
常葉が、もしゃもしゃを掲げる。
「それはタワシだ!」
「とーや、すごぃ!」
ぱちぱち拍手してくれるロロァは、天使だ。
いつも利発なユィルが、ぽかんとしてる。
「え、うそ、料理できるの、俺だけ!?」
おお、これはスパダリな俺を見せどころだな──!
……と思ったけど、前世でも別に料理が得意だった訳では……
インスタントラーメンくらいなら作れるけど……
人参とじゃがいもとセロリの違いとかも判るけど……
そ、それだけでスパダリ認定される今世、やばくない……?
い、いや、ここは大変ありがたいと思おう!
意気揚々と野菜とお肉と米(あった!)と鍋を買い込んだ透夜は、カチっと捻ってガスが出ないコンロに困惑した。
「……ど、どうやって煮たり焼いたりするのかな?」
薪? かまど? 難易度、高──!
「魔法を使ったらいいんじゃ?」
紅蓮、素晴らしい指摘をありがとう!
「えーと、じゃあ、弱火? 強火? そうだ、中火で!」
『ちゅーびって何?』
すぐに応えてくれる精霊さんがスパダリだ。
「ちゅーくらいの炎だよ。えと、こんくらい。俺の頭のなか見て」
『へー、この青い火みたいにすればいーの?』
「そうそう、一定で、やさしい火で、スープを煮て、ご飯を炊いてくれ!」
『やってみるー!』
さすが精霊さん、万能だ。
では火加減と煮炊きは精霊さんにお任せしよう。
一番むつかしいところを丸投げできるって最高!
じゃ、なかった!
異世界に来て、剣が扱えるようになったらやってみたかった№1!
人参っぽい野菜を宙に放り投げ
シャシャシャシャシャ──!
愛刀で乱切り!
された野菜が、精霊さんが出してくれた水を張った鍋のなかに、ちゃぽちゃぽちゃぽと落ちてゆく。
「おぉおおお──!」
皆から歓声があがった。
「とーや、すごい!」
ロロァが真っ赤な頬で、ぱちぱち拍手してくれる。天使だ。
「すごい」
ユィルまで真っ赤な頬で拍手してくれる。天使だ。
「さすがトゥヤ!」
仲間の皆の目がキラキラしてる。やさしい。
失敗して恥ずかしいことにならなくて、よかった──!
まな板代も節約できた。
さすが今世の俺、スパダリ。
えへんと胸を張る透夜に、仲間の皆の目が生温かくなってる。
じゃがいもっぽい野菜とセロリっぽい野菜、鶏肉っぽい魔物の肉を放り投げては
シャシャシャシャシャ──!
「おぉお!」
皆の拍手をもらいつつ、精霊さんが頑張って熱してくれている水を張った鍋のなかに切った野菜と肉を投入した。
これでスープができるはず!
米は水を入れて炊けばいいはず!
……どれくらい水入れる? 確か、1:1くらいだったか? ちょぴっと多め? 多めってどれくらいだ──!
「と、とりあえず、煮れば大抵の菌は死ぬ、煮れば喰える!」
お玉を掲げて叫んでみた。
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