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号泣のかなしみ

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 ぎゅっと唇を噛んだロロァは、頷いた。

「……ギビェを、名乗るなって……」

「辛かったな」

 ユィルのちいさな指が、ロロァのちいさな頭を撫でる。
 こくりと首肯したロロァが、ユィルのちいさな手を握った。

「ユィルも」

「……あ、あぁ」

 耳まで真っ赤になったユィルが、ぎゅっとロロァの手を握る。

「え、やっぱり俺、添え物なんじゃない?」

 切なくなる透夜の肩を

「がんばれ、トゥヤ」

 孤児仲間が叩いてくれる。



 やさしい皆のおかげで励まされた!
 しかし!

「帝都から出られないよ、どうしよう!」

 わたわたした透夜は、縋るようにユィルを見てしまった。

 この仲間で、一番頭がいいのは間違いなくユィルだ。
 前世から数えると40年以上生きていそうな透夜だが、全く全然貫禄も威厳も頭脳もないことは既に露呈した。

 繕うものなど、何もない!


「ユィルに何かいい考えはあるかな」

 全力で頼った透夜に、ちょっと赤くなったユィルが胸を押さえる。

「た、頼ってもらったのは、は、初めてだ。……う、うれしい、もの、なのだな」

 てれてれするユィルがかわいー。

 もだもだしてたら、きゅ、と裾を引っ張られた。


「とーや」

『め!』された透夜が崩れ落ちる。


「ああ、俺のモテ期はここで終わる──! 我が人生に、一片の悔いなし──!」

 絶叫した。
 孤児仲間たちの生温かい視線が、やさしかった。




 あれだよ
「おとうさんの、およめさんになる!」
 が
「親父、臭い、きもい」
 になるまで、僅か十年という過酷な人生──!

 号泣の哀しみを聞いても『リア充爆発しろ』しか思わなかった透夜の前世が遠くなる。


 せつない。

 今から想像して泣いちゃう。
 22歳かあ、加齢臭はまだじゃないかなあ……

 ちがうちがう、今から十年後を思って凹むのではなく!
 今あるモテ期を堪能しよう!

 別にモテてないとか聞こえない!
 子どもになつかれてるだけだとか、全く全然微塵も聞こえない!

 いいんだ、これは俺のモテなんだ!
 でないともう二度と来ないよう──!


 涙目な透夜の肩を、ユィルがぽふぽふしてくれる。

「戻っておいで、トゥヤ」

「う、うん」

 ぐすぐす鼻を啜る透夜を

「いーこ、いーこ」

 ロロァまで慰めてくれた。
 孤児の皆の視線が、更に生温かくなってた。




「帝都の結界を破るには、方法がふたつあったと思う」

 考え考え口にするユィルに、透夜が拍手する。
 一緒にロロァも孤児の皆も拍手して、真っ赤になったユィルは、ぽそぽそ続けた。

「え、えぇと、確か、帝宮の地下にある、魔導士たちが交代で結界を維持するために魔力を注いでいる結界生成魔道具を破壊する、がまず一つ」

「おお」

 期待の目になった透夜に、ユィルは首を振る。

「これはとても困難だ。帝宮は警護の衛士や近衛でいっぱいだから、突破するだけでも大変だ。帝都の守りの要である結界魔道具は警備も厳しいし、魔導士たちは魔力量の高い、歴戦の猛者だ。すべて倒して巨大な魔道具を破壊するのは現実的な案ではないと思う」

 巨大な魔道具の壊し方なんて、拳でぽこぽこするしか思いつかなかった(魔法を放つとなんか恐いことになりそう)透夜は頷いた。





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