きみの騎士

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きみの騎士

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 目を明けていられないほどの光のなか

 なつかしい面影が

 泣いてる。



「リイ──……!」


 抱き締めてくれるのが、ルフィスだなんて。

 リイは信じられない目を、瞬いた。



 淡い亜麻色の髪が、吹きすさぶ魔力の風に舞う。
 光が入るたび彩りを変える蒼と碧の瞳は、幼い頃のままだ。

 凛々しいかんばせと、随分と伸びた背が、涙に霞んだ。

「…………ルフィス…………!」


 きみのそばで

 きみを、守りたかった。



 ルフィスの腕が、抱き締めてくれる。


 レミリアの腕じゃない。

 あたたかさも、逞しさも違うルフィスの腕が、リイを抱き締める。


「記憶がなくても、女になっても。
 僕はずっと、リイだけを──……」

 囁きが、耳朶に溶ける。

 声は低く、甘く、涙に揺れた。


 幼い頃とは違うルフィスの腕に、目を閉じる。

 広やかな背に伸ばした指が、すがるようにルフィスの衣を掴んだ。
 応えるように抱きしめてくれる腕に、めまいがする。


 …………ルフィス…………?

 ほんとうに、ルフィス…………?


 滲む目で、幾度も蒼碧の瞳を覗き込む。

 涙に染まるリイを、ルフィスの腕が包んでくれた。


「……僕だけの騎士に、なってくれますか」

 幼い頃と同じ、蒼にも碧にも輝く、不思議な瞳が揺れている。

 不安と恐れと期待と自信が混ぜ混ぜになった瞳を、知ってる。


 ──……ああ、ルフィスだ。

 やさしくて、きれいで、かわいくて、かっこいー、逢いたくて逢いたくて仕方なかった、ルフィスだ。


 リイは、笑った。

 瞳から溢れる涙で、ルフィスが霞む。


「きみを守るために、騎士になった。
 俺だけは絶対に、ルフィスを裏切りたくなかった。
 誰にも望まれないルフィスじゃなくて、俺にとって必要で仕方ないルフィスになって欲しかった」


 蒼碧の瞳から、涙が溢れる。
 嗚咽に震える、大きくなった肩を、抱きしめる。


「初めて逢った時からずっと俺は、きみのものだよ、ルフィス」


 左手を胸にあて、膝をつく。


「きみの騎士だ」






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