きみの騎士

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 レイサリアの秘術を解くのは、レイサリアの血だという。

 レイサリアの血を継ぐ王と、世界中からただ一人選ばれし甚大な魔力の主の子だけが受け継ぐのがレイサリアの血、レイサリアの力だ。

 魔力のない者の子には、決して継がれることはない。

 何がレミリアとロエナを絶壁のごとく隔てたのか、今は解る。


 千年繋がるレイサリアの血を受け継ぐ、気魄だ。

 千年光国レイサリアを、双肩に背負う覚悟だ。


 千年受け継がれてきた魔力を従え、レイティアルトはおごそかに唇を開いた。

「始めよう。
 魔力を開放する」

 レイティアルトとレミリアの身体から、銀の光が溢れた。

 噴きあがる魔力に、ふたりの髪が舞いあがる。
 レイティアルトとレミリアの髪と瞳が、輝ける白金に染まりゆく。


 目を明けていられないほどの光が、世界を染めた。

 吹きつける魔力の爆風に、リイはぐらつく足を叱咤し執務室の中に踏み留まる。

 激烈な力を従え、弟と兄は手を重ねた。


「ルフィス・ルフィリアス・レイサリア」

 レイティアルトの唇が綴るルフィスの真の名を、レミリアの唇が紡ぐ。


「ルフィス・ルフィリアス・レイサリア」

 その声に応えるように、レミリアの身体を包む白金の光がひときわ輝き、鼓動のように明滅した。

 ふたりの指が描きゆく魔紋から、白金の光が噴きあがる。

 天を灼く魔力を従わせるふたりが重ねる掌が、輝いた。


「我、レイティアルト・レフィリアス・レイサリア」

「我、ルフィス・ルフィリアス・レイサリア」

「我が名と我が血を以て命じる。
 我ら、レイサリアの血を継ぐ者!」


 光芒が、天を裂く。


 リイの身体が、吹き飛んだ。

 白金の光の向こう、レミリアの声が響く。


「我に掛けられた記憶の封印を滅し、幻惑の魔術を灰に帰せ。
 すべての魔術を塵に。
 すべての秘術を霧に。
 我、ルフィス・ルフィリアス・レイサリア。
 我が名と我が身を取り戻せ」


 叩きつけられた壁の下で、リイは霞む目をまたたいた。

 光が翔る魔力の渦の中、レイティアルトがレミリアの額に口づける。

 レイティアルトの唇がふれたレミリアの額に、白金の光が燈った。


「ラフィスト・メテルキラス」

 額からあふれる光が、レミリアの身体を包みゆく。


「レミリアさま──……!」

 叫ぶリイの向こうで、魔力の光に包まれて

 レミリアは、ゆれる瞳で、リイを見つめた。


「…………戻った私も、想ってくれる?」


「どんなあなたも、俺は────!」

 叫ぶ声は、涙に途切れた。


 光の向こうで、レミリアが微笑む。

 セレネの花のほほえみが、まばゆい光に溶けてゆく。


「ベデルギゼリア・ギゼルフィス!」

「レミリアさま──……!」


 星の光がレミリアを呑み込み、噴きあがる。

 白花の指が、光に溶けた。








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