【完結】きみの騎士

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誓う

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「…………リイは……レミリアは……要らない……?」

 涙に揺れる星の瞳を、抱きしめる。

「まさか……!
 ……俺はどうしても、ルフィスを裏切りたくなくて。
 お慕いしてはいけないと思っていました。
 ……初めてお逢いした時から、忘れられなかった」

 ちいさな身体を、抱きしめる。

 レミリアはリイの腕のなかで、目を閉じた。

「…………恐い…………」

「……レミリアさま……それならどうかご無理なさらず──」

「…………私、ルフィスが憎くてたまらなかった。
 いつもリイを苦しめる、いつもリイに想われてる、絶対に勝てない敵。
 ──……それが自分だなんて、吃驚したの」

 涙の滲む星の瞳で、レミリアが笑う。


「私、ルフィスに戻る。
 戻った自分を殴ってやりたい。
 リイをこんなに泣かせて。
 レミリアは攻撃までされた!」

「申し訳ありません──!」

 頭を下げるリイの頬を、レミリアのちいさな掌がつつみこむ。


「もうしないわね?」

「お望みなら、どうぞ首を──!」

 星の瞳が、吊りあがる。


「冷たい骸を欲しがると思うの?」

 血塗れた光剣を掲げたリイは、左腕を胸に、跪く。

 命を懸けて忠誠を捧げるのは、あなただけだ。


「我、光騎士リイ。
 我が心身を賭してレミリア・レファーリア・レイサリア王女殿下にお仕え申しあげ、私のすべてで、レミリアさまを、ルフィスを、お慕い申しあげます」


 すべてを捧げるリイを、レミリアの腕が抱き締めてくれる。

 リイの胸に頬をよせたレミリアは、硬く澄んだ光の瞳で顔をあげた。


「ルフィスに、戻ります」


 王太子執務室を出ようとしていたレイティアルトは、ため息をつきながら戻ってきてくれた。


「目の前で堂々と抱きあうな!
 はばかれ!」

 深翠の瞳を吊りあげて叫ぶレイティアルトにあわあわするリイに、レミリアがぷくりと膨れた。

「リイは、兄さまがすきなの?」

 きょとんとしたリイは、断言する。

「俺は、初めて逢った時からずっと、ルフィスのものです」

 レイティアルトが長い長い長い長い溜め息をついて、ほんのり紅くなったレミリアは拗ねたみたいに唇を尖らせた。

「……レミリアは?」

「もちろんお慕いしています」

 堂々と言えるよ!
 ルフィス=レミリアさま!
 浮気じゃないよ! 裏切りじゃないよ!

 すっきりしたら『レミリアさま大すき』をようやく自覚できた。

 にこにこ胸を張るリイの頭をぽふりとはたいたレイティアルトが、レミリアに自分の服をぽふりと被せる。

「戻るんだろ?」

 こくりと頷いたレミリアは、レイティアルトの衣に着替えた。

「ぶかぶかね」

 ほのかな朱の頬で笑うレミリアを、もう見られない。

 にじむ涙で、手を繋ぐ。

 長い長い長い長い溜め息をつきながら、レイティアルトは書の森を掻き分け、光国旗の後ろに隠されていた銀にきらめく紋様にふれる。

 レイティアルトの指から放たれる銀の光を受けた瞬間、銀の魔紋が眩いばかりに輝いた。
 厚い壁が回転し、千年の埃とともに古めかしい書棚が現れる。

 レイサリアの血を継ぐ指を待つように輝く本に、レイティアルトがふれる。


 銀の光が、あふれゆく。





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