【完結】きみの騎士

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 レイティアルトと光騎士団の皆は許してくれたけれど、おそらく性別を隠匿していたリイには処罰が下るはずだ。

 その前にと魔道具研究室に顔を出したリイを、魔石のさやかな光が迎えてくれた。

「メデュ、今、いい?
 お茶とお菓子持ってきたよ」

 研究室の奥で、青白い手が上がる。

 ドラキュラさんみたいだ──!

 いつも思うけど、内緒だ。


「魔道具研究室って、メデュだけなのか?
 いつもひとりだよな?」

 お茶を淹れながら首を傾げるリイに、メデュは頷いた。

「…………俺が……狂人だと、思われて、るから」

 呟きに、思わずメデュの頭をなでなでする。

「メデュはおかしくないよ!
 俺はちゃんとわかってるから!」

 ぎゅ、と手を握ったら、ほんのり赤くなったメデュはリイの手を握り返して頷いた。

「それで、あの、今日は大切なお知らせがあるんだけど……」

 口ごもるリイに、メデュが続きを促すように頷いてくれる。
 リイはそっと唇を開いた。

「俺、女なんだ」

 きょとんとしたメデュが、首を傾げた。

「?」

 リイも一緒に、首を傾げる。

「?
 え、あ、あの、男じゃないんだ」

 切れあがる瞳を瞬いたメデュは、こくりと頷く。

「知ってる」

「……え!? う、嘘──!?
 俺のこと、女だと思ってた? 最初から?
 光騎士にもレイティアルトさまにも、誰にも言わないでいてくれた?」

 茫然とするリイに、メデュは更に首を傾げる。

「どこをどう見たら、リイが男に見えるんだ?」

 限界まで見開いたリイの瞳が、涙に揺れる。

「うわあん!
 ルフィスに続いて二人目だよ!
 ありがとう、メデュ────!!」

 思わず抱きついたら、真っ赤になったメデュが抱き留めてくれた。


「……り、りりリイ……!」

「あ、ごめん! うれしくて!」

 思わず零れた涙を、あわてて拭って笑う。
 リイの涙目を見つめたメデュが耳まで紅くなって、ぎくしゃく頷いた。

「……ぱ、パソコン……」

「そうだ!
 無茶苦茶なお願いしてごめんなさい。
 俺、謹慎になるか処断されるか解らないけど、民とレイティアルトさまのために頑張ってくれたら、めちゃくちゃうれしい」

 ぶすりと膨れたメデュが、首を振る。

「……リイがいなくなるなら、研究止める」

「そ、そこを何とか!」

 ふるふる首を振ったメデュは、リイの手を握った。

「……処断されたら?」

 メデュの問いに、リイは目を伏せる。

「首ならお終い。追放なら、ギゼノスに行こうと思ってる」

 囁きに、メデュが目を瞠る。

「…………敵国か」

 リイはこくりと頷いた。

「ルフィスがいるのは、敵国だと思う。
 ……レイティアルトさまは許してくれたけど、議会の重鎮は許さないだろう。
 追放してくれたら、敵国にゆける」

「…………そこまで、ルフィスのために……?」

 リイは頷く。

「レミリアさまや、レイティアルトさまを裏切っても?」

 メデュの言葉に息をのんだリイは、目を伏せた。

「…………俺は、ルフィスを守りたくて…………」

「敵国に行くなら、レミリアさまやレイティアルトさま、コルタやキール、ザインと戦うことになる」

 見開いたリイの瞳が、歪む。

「よく、考えろ」

 項垂れたリイは、ちいさく頷いた。

「行くなら、知らせろ」

 ちいさな声に、リイは目を瞬いた。
 ほんのり朱い眦で、メデュが囁く。

「……ついてく」

「………………は!?」

 目を剥くリイに、メデュはおごそかに告げる。

「ひとりだと、やらかしそうだから」

 …………………………。

 否定できない!!

 涙目になったリイは、拳で目を拭って、笑う。

「ありがとう、メデュ」

 気持ちが、うれしい。
 告げたら、メデュは紅い耳で頷いてくれた。





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