きみの騎士

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いじめ反対!

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 春の陽が中天に懸かり、ザインはぐしゃぐしゃ鋼の髪を掻きあげる。

「俺が疲れた。
 飯を食ったらまた挨拶回りだ。
 頼むから、笑うな! 無表情で挨拶しろ! ムダにキラキラするな!!」

 怒鳴られた。

 ふ、不服だ!




 レイサリア王宮に、正午を告げる鐘が鳴る。

 やっとお昼ご飯だよ!

 衛士や騎士たちが使う、24時間ご飯が食べられるらしい食堂にザインと向かう。

「おい、あれ――」

「噂の平民か」

 ざわりと食堂の空気が変わる。
 皆の視線を一身に受けたリイは、ぴしりと立った。


「新しく光騎士になりました、リイです。
 どうぞよろしくお願いします!」

 何度もこなして段々コツが解ってきた騎士礼で挨拶した。

 新人だからね。
 挨拶大事!

 食堂がどよめいて、奥の机からぱちぱち拍手が聞こえた。

「よろしくねー。
 リイ、一緒にご飯食べよー!」

 美少年コルタが手を挙げてくれる。

「コルタ!」

 破顔するリイに、食堂がまたどよめいた。


「…………見たか」

「すげえな」

 ざわつく衛士や騎士たちに、うんざりしたように肩を落としたザインは、ぽふぽふリイの肩を叩いた。


「コルタに面倒見てもらえ。
 鐘が鳴ったら光騎士殿に集合、それまで自由時間とする」

「は!」

 胸を叩いて光騎士の礼を返したのに、

「…………俺にまでキラキラしなくていい…………」

 げんなりしたようにザインは溜め息をついた。

 上司の対応が酷いです――――!!



 ちょっと涙目で『聞いてよー』とコルタのところに行こうとしたら、

「平民ふぜいが」

「光騎士になったからって、何様のつもりだ」

 蔑んだ目と、ののしりが降ってきた。


 いじめだ!
 こういう輩は身分の低いのをいじめて、高いのにはへつらうんだ、お決まりだ!


 むかっとしたリイは、

「あ!」

 蚊でも見つけたように声をあげる。

「え?」

 皆がそっちを見た瞬間、さっと回し蹴りを炸裂させた。

「ぐはあ――!!」

 衛士二人が壁まで吹き飛んで、ズルズル壁伝いに落ちてゆく。

 じいちゃんが叩き込んでくれたリイの回し蹴りは、たぶん、ふつうの人には見えない。…………と思う。

 誰も見えないから、蹴ったことにならないし、だからバレない、はず!


「………………え………………」

 食堂にいた全員が凍りついて、ザインが向こうで頭を抱えた。
 胡桃の目をまるくしたコルタが、お腹を抱えて笑ってから、にこりと微笑む。


「光騎士は王帝陛下直属、有事の際は独断で王族を捕縛する権利さえ有している。
 光騎士に喧嘩を売るということは、反逆の意図があると見ていいのかな?」

 ギュァアア――――!

 コルタが纏う闘気に、食堂が軋む。

「ぎえぇえええ――――!!」

 涙目になる衛士や騎士たちの向こうで、光騎士たちが肩を揺らして笑って、ザインは遠い目になってた。






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