【完結】きみの騎士

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上司の評価が酷いです

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「レミリア殿下は他国の王太子と結ばれる御方にございます。
 やはりここはレイティアルト殿下に励んで戴かなくては――」

 レイティアルトが手を挙げると、不服そうにノゼが黙る。
 まだちょっと涙目なリイを見つめたレイティアルトは、微笑んだ。


「ルフィスという者について、時間があれば見ておく」

「あ、ありがとうございます――!」

 垂直に頭をさげるリイを押し退けるようにノゼが叫ぶ。


「時間などある訳ないでしょう――――!!
 この書類の山をどうにかしてください!!」

 レイティアルトが手を振って、渋々そうに黙ったノゼが執務室の扉を開ける。
 ザインとリイは騎士の礼をとり御前を辞した。



 王太子執務室を出た途端、リイはザインに庭木の影に連れていかれた。

「レイティアルト殿下だからお許しが出たが、自分より目上の貴族――リイにとってはそこらで歩いてる者全員だな、求められた時だけ答えろ。
 自分から口を利くな」

 いかついザインに叱られたリイは、項垂れた。

「申し訳ありません」

「リイの身を守るためだ。
 しょうもない言い掛かりで家族まで惨殺だなんて目に遭いたくないだろう」

 目を剥いたリイは、こくこく頷く。


「レイサリア王宮は生き馬の目を抜くところなんですね、理解しました!」

「……い、いや、そ、そこまでじゃないと思うが……ざ、斬新な表現だな」

 引き攣るザインに、てへ、と笑った。
 前世のことわざは、全く通じない。異世界だ!


「とりあえず、挨拶しまくって帰るぞ。
 リイのすることは、挨拶、騎士礼、以上だ!
 涙目になるな! 愛想を振りまくな! ムダにキラキラするな!」

「…………あ、あの、ザイン殿。
 俺への評価が、初日から酷くないですか?」

 手を挙げてみた。

「真っ当な評価だ!」

 叫ばれた。
 納得いかない!!



 ザインに連れられたリイは、王宮の偉いさんたちに身分の高い人から順番に挨拶して回った。

「これはこれは、また素晴らしい新人が来たね」

 髭のおじさんに、嘗め回すように見られたり

「ほほお、これは何とも――素晴らしい尻だな」

 頭がつるつるのおじいさんに、尻を撫で回されそうになったので、さっと避けたり

「――うっ……!
 ほ、微笑みかけられると、心臓が――!」

 顔色の悪そうなおじいさんに、胸を押さえて蹲られたりした。

「だ、大丈夫ですか――!」

 あわてて駆け寄ろうとするリイを、ザインの丸太のような腕が止める。

「放っておけ」

 小声の囁きに、ええ? と思ったけれど、

「こ、これは…………こ、恋……?」

 とか聞こえたので、何も聞こえなかったことにして、さっと帰った。






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