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希望、発見!
しおりを挟む『……誰もね、僕が要らないんだ』
ルフィスは、そう言ってた。
『毎日毎日、死んでくれって思われてる』
それを5歳にして噛み締めるなんて、殺されるより自分で死のうとするなんて、ルフィスがどんなに辛くて苦しかったのか、思うだけで涙が出る。
殺意の理由が、隠し子なら。
望まれなかった子として、ルフィスの話はすんなり通る。
あれだけ輝く瞳が親の瞳と似ているのなら、孤児院に託すこともできなかっただろうことは容易に解る。
光騎士になれたら逢えると思っていたのに。
隠し子なら、情報を聞き出すまでが大変だ。
きっと、手が届くと思っていたのに。
もうすぐ、逢えると思っていたのに。
ずっと、ずっと、ルフィスに逢えることだけを夢見て、頑張ってきたのに。
ルフィスの面影まで霞んでゆきそうで、リイは唇を噛み締めた。
「では挨拶回りだ。第一印象が大切だからな。
背を正し、愛想よく!」
ぱんと背を叩かれたリイは、地の底から這いあがるように顔をあげる。
絶望の顔をしたリイに、ザインは眉を顰め、吐息した。
「リイ、騎士にとって一番大切なものは何か、解るか」
「……状況判断力でしょうか」
呟いたリイに、ザインは頷く。
「それも大事だがな。
平常心だ。
長年の親友が隣で殺されても、剣を振るってあるじを守り、己も守る。
泣くのも傷つくのも、寝る間だけだ」
大きな分厚い掌が、リイの頭をがしりと撫でる。
ザインの鋼の瞳を見あげたリイは、滲みそうな涙を拭って頷いた。
光騎士の衣は、白だ。
長く尾を引く白の上衣と、身体に添う下衣に、白の外套をまとう。
外套の背と上衣の胸の中央には王直属であることを示すレイサリア光国の紋章、白銀の星が輝いた。
憧れだった衣に、背筋が伸びる。
「王陛下はご病気であらせられるゆえ、最初にお目にかかるのは王太子殿下だ」
ザインの言葉に、リイは目を瞠る。
「……王太子殿下……?」
「御前試合でお言葉を賜っただろう。
レイティアルト殿下だ」
…………あの日、ルフィスを助けてくれたのは、王太子殿下の勅命書だった。
幼かったリイには何のことなのかよく解らなかったけれど、前世の記憶が蘇ったのはあれからすぐのことだ。
王太子殿下なら、ルフィスを守ってくれた方なら、きっとルフィスのことを知ってる!
目に見える勢いで元気を取り戻したリイに、鋼の瞳をまるくしたザインが吐息する。
「まあ、あの方は女にも男にも、頭がおかしくなるくらいモテる。
止めておけ、泣くのはリイだぞ」
「違います!」
握り拳で叫んだ。
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