きみの騎士

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5階な理由

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「ここが食堂だよ」

 コルタが案内してくれた広やかな食堂には、木のテーブルが並べられていた。
 ほっとしたリイは、金銀の縁取りと雅やかな曲線を描く猫足に引き攣る。

 リイ愛用の、どこかちょっといびつな、手作りの木のテーブルと全然違うのは理解した。


「賄いさんは朝から夕方までいてくれるけど、その他の時間は自分で温めるか、冷めたまま食べるか選べるよ。
 作り置きはそこの棚に入ってるから、すきなのを自由に取って食べてね。
 騎士は身体が資本だから、食べ放題だよ!」

 にっこり笑うコルタが示す先で、山盛りの肉や山盛りのご飯が硝子棚の向こうで輝いた。

「料理ができるなら、賄いさんがいない時は、鍋とか竈とか自由に使っていいからね。
 買ってきた調味料とかには名前を書くこと!
 ……まあ、書いてても使われちゃうから、調味料は使う度に自室に持って帰るといいと思うよ」

 鍋や竈の場所と使い方を簡単に教えてくれる。


「やさしいですね、コルタ先輩!」

 思わず叫んだら、胡桃の目をまるくしたコルタが笑った。

「でしょ?」

 こくこく頷く。

 うれしそうにはにかんで笑うコルタは、ごつごつの手と、その身体を覆うみっしりした筋肉を見ていないと、アイドルさんみたいだ。
 是非、歌って踊って欲しい。


「お手洗いはそこね。1階にしかないから、余裕を持って降りてくるといいよ」

 おぉう、新人が5階な一番の理由を理解した。

「お風呂はそっち。部屋にもあるんだけど、部屋には浴槽がついてないから。
 水はいつでも出るけど、お湯は夕方から夜まで。
 部屋のも大浴場も、いつでも使っていいよ」

 ……よかった……!
 部屋に風呂がついている……!!

 一番どうしようと思っていた風呂問題が解決したよ――!
 豪華な寮、ありがとう!


「臭いと怒られるから、まめに入ってね」

「よろこんで!」

 リイの返事に、コルタが肩を揺らして笑った。


「じゃあリイの部屋に案内するよ」

 コルタに続いて階段を上がる。
 真っ白な石で造られた階段もぴかぴかで、手すりまで金の蔦や花で彩られ、窓硝子には透かし彫りの鳥が歌うのに仰け反った。


「…………ここ、寮ですよね」

 唖然とするリイに首を傾げたコルタは、納得したように頷いた。


「千年光国レイサリアの栄えある光騎士の寮なのに、質素でびっくりした?」

「逆です、逆!!
 豪華すぎる!」

 仰け反るリイに首を傾げたコルタは、納得したように頷いた。


「そっか、リイ、平民か」

 こくこく頷く。


「あ、コルタ先輩、貴族ですか!」

 そりゃそうだ、平民の光騎士は百年ぶりだった!

 あわあわするリイに、コルタは吹き出して笑う。


「いいよいいよ、気にしなくて。
 一期先輩のお兄ちゃんだよ」

 にこにこしたコルタが、リイの頭を撫でてくれる。


「先輩もなくていいよ。
 コルタでいい」

「え、あ、あの、コルタ殿?」

「殿もなくていいよ」

 ぽんと背を叩いて、笑ってくれた。





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