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初陣!
しおりを挟む至光騎士戦はトーナメント形式、勝ちあがり戦だ。
貴族の子息は弱そうな平民と当たるように組まれたり、弱そうな子息は更に弱そうな平民と当たるように組まれたりという、なるべく貴族が勝ちあがれる方式になっているらしい。
がっかりだけど、シードみたいなものかなあ?
平民でも寄付金をはたくと、よいところに入れてもらえるらしい。
異世界転生でも、世の中お金だよ。
身分もあって、大変だよ。
しかし至光騎士戦は、光国民すべてに開かれた大会だ。
希望をいだく平民が大勢出場する。
膨大な数の者が参加しているので、闘技場の近くの野原であちこちを縄で区切って、一斉に試合が行われる。
有力貴族の子息は、初戦から闘技場で闘うらしい。
まあ、仕方ないのかなあ。
お金ないしね。
でも、シリウスがいる!
じいちゃんが貸してくれた白銀の鎧に身を包むと、身体の奥まで透明な風が走り抜ける気がした。
凛と大気が澄む。
目が開かれたように、闘気が研ぎ澄まされる。
春の風が、リイの長く伸びた髪を揺らした。
気持ちのよい場所で初戦を戦えるのは、さいわいだ。
初戦は、リイが腕を蹴りあげた貴族だった。
「ひぃいいいいい!!」
…………闘う前から相手が涙目です。
なんか可哀想になってきた!
「え、ええと……た、闘いますか?」
闘う前から審判の騎士に心配されてる!
腕を白い三角巾で吊った貴族は、根性だけはあるらしい。
出場もせずに帰ってくるなと怒られたのかもしれない。
「た、闘います!」
真っ青に震えながら槍を掲げた。
リイはシリウスの首を、そっと撫でる。
「初陣だ。
一緒に戦ってください」
透きとおる青の瞳が、リイを見つめる。
シリウスはこくりと頷いて、リイを背に乗せてくれた。
槍を構える。
じいちゃん愛用なのだろう白銀の槍は、もうリイの手に馴染んでいる。
シリウスが駆けだすタイミングも、リイが指示するまでもなかった。
リイの鼓動と呼吸を読み、シリウスが駆ける。
「ひぃいいいイイイ!!!」
及び腰の貴族が槍をおっかなびっくり突き刺すのを弾くことさえせず、宙を舞うように回り込んだシリウスとともに、貴族の腹を薙ぎ払う。
「うぎゃあぁあああアアア――――!!」
吹っ飛んだ貴族は、落馬した。
主のいなくなった馬が、所在なさそうに黒い瞳で見つめてくれる。
「あー、えー、闘いますか?」
審判の騎士が、倒れ伏した貴族を覗き込んで、首を振った。
「気絶により、戦闘不能とみなす。
勝者、ミナエ出身、リイ殿!」
拍手も歓声も何にもないけれど、リイはうれしく、シリウスと胸を張った。
初戦、勝ったよ、ルフィス!
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