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こわくないよ!
しおりを挟む「平民が貴族に手を出したら、厳罰ですか」
「いや、この場合は正当防衛だ。
闘うなら闘技場の門のところ、ここから向こうまでの間で闘ってくれ。
記録魔術が作動している」
衛士が示してくれた門のところと白い敷石には不思議な紋様が描かれ、銀の光を放っていた。
何か不思議な力が、辺りを包んでいるのを感じる。
おお、これが魔法!
触っても痛かったり苦しかったりはしないみたいだ。
この記録魔術がないところで闘うと、適当なことを言われて平民が悪者にされて断罪されてしまうということですね!
言いがかりをつけられたらここまで逃げて来て、ここで闘えばいいんだな。
「了解」
リイが頷いた瞬間、
「無視するなあぁあああ――――!!」
突っ込んできた貴族の腕を、ひらりと宙へ跳び、蹴り上げた。
「ぎゃあぁあああアア――――!」
吹き飛んだ貴族が、腕を抱えて蹲る。
「お、折れた!!
腕が折れたあぁあああ――――!!」
のたうち回る貴族に、リイは首を振る。
「折ってない。
…………たぶん」
一瞬の出来事に、居合わせた誰もが息をのみ、目を剥いてリイを見た。
「……き、きみは……」
茫然とする衛士を、僅かに見あげる。
「ミナエ出身、リイです。
至光騎士戦に出場を希望します。
よろしくお願いします!」
丁寧に頭をさげた。
闘技場の周りに集まっていた人たちが、しばらくしてから我に返ったように、どよめいた。
「へ、平民の癖に、な、生意気な……!」
ののしりが、震えてる。
数に物を言わせて向かってくるかな、と思った貴族の子息たちは、顔を見合わせ、リイを集団でいたぶる計画を変更したらしい。
彼我の差が解るなら、きみたちも、そこそこ頑張ってたってことだね。
見くびって悪かったよ。
素直に反省したリイは、微笑んだ。
「………………こ、こえぇえええ――――!!」
「わ、嗤いやがった……!!」
「あ、あいつ、俺らを皆殺しにする気だ――――!!」
…………え、いや、反省したんだけど…………え、あの、笑顔なんだけど…………
思わず手を伸ばしたら、
「ひぃいいイイイ――――!!」
真っ青になった貴族の子息たちが逃げ出した。
「お、置いてかないでくれぇええエエ――――!」
腕を抱えた貴族が、よろよろ仲間たちを追いかける。
ちょっと笑った平民たちは、化け物を見るような目で、リイを見た。
そっと、距離を取られる。
登録してくれる衛士の手が、ふるえてる。
『こいつ、やばい』
皆の心の声が聞こえるんですけど――――!!
ま、まあ、言いがかりをつけられなくなるなら、いいか、な??
ここまで鍛えてくれたじいちゃん、ありがとう!
応援ありがとうございます!
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