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光の都
しおりを挟む「レイサリア光国が光都レイサリアへようこそ!」
衛士が笑って槍を掲げる。
開かれた門の向こうには、白く輝く街が広がり、白銀にきらめく城が聳え立つ。
大勢の人が行き交い、白い布を張った露天には光国中の野菜や果物がつやつやの光をふりまき、いい匂いの焼き串やお饅頭が湯気を立てている。
鍋も包丁も、剣も鎧も毛皮も並べられ、吊り下げられて、店主の元気のいい呼び声とともに朝の光に輝いた。
窓から排泄物を投げ捨てるなら相当臭いはず、と心配していたのに、臭くない!
それどころか、前世の記憶の世界より、街は美しかった。
ゴミがないのだ。
あちこちに煙草の吸殻だの、ハンバーガーの包み紙だの、レジ袋や空き缶だのがぐっちゃり雨に打たれて縮こまっている、道の端には必ずある、店の前を毎日毎日掃いても必ず湧くゴミがない!
煙草の吸殻もレジ袋もないからかもしれないけど、真っ白な石で造られた道は掃き清められ、王城への大通りには掲げられたレイサリア光国旗がひるがえる。
藍の地に銀の星の輝く旗が、王城までの道を示すように、街を華やかに彩った。
「ほへえ……!」
思わず感嘆の声をあげたリイに、周りの人がくすくす笑う。
「おお、兄ちゃん、光都は初めてかい」
焼き串を売っていたおじちゃんが掛けてくれた声に、リイはこくこく頷いた。
「リディリア大陸一の大国、並び立つものなき光の国、レイサリア光国の光都へようこそ!
他国の大使はさ、光都を見るだけでビビって帰っちまうって話だぜ。
こんな都を持つ国に喧嘩売ろうたあ、思わねえよなあ!」
誇らしげに胸を張るおじちゃんに、リイはこくこく頷いた。
これはびっくりする。
前世の記憶があるリイでさえ、びっくりした!
「兄ちゃん、随分立派な馬を持ってるが、売りもんだとしても危険だ。
衛士に言って、先様に渡すまで護衛してもらった方がいい。
光都は華やかで綺麗だが、悪いことする輩はどこにでもいるからな」
おじちゃんの忠言に目を見開いたリイは、慌てて頷く。
「ありがとう!」
こんな人込みのなかをシリウスに乗ってゆくのは在り得ないし、シリウスを引いていくのも相当あり得ないな、と思っていたので渡りに舟だ。
門のところにいる衛士に相談すると、槍を下ろした衛士は首を傾げた。
「もしかして、至光騎士戦に来たのかな?」
「はい!」
拳を握るリイに、衛士が上から下までリイを見つめる。
「平民?」
こくりと頷くと、衛士は心配そうに眉を寄せた。
「酷いこと言われるかもしれないけど、気にしたら負けだから。
至光騎士戦に使う馬なら、闘技場で預かってくれるよ。
闘技場はあっち」
衛士が指してくれたところに、白い石で造られた巨大な闘技場が聳え立つ。
うわあ、リアルコロセウムだ!
…………見たことないけど。
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