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らんくだうん?
しおりを挟むシリウスは、リイの唯一のともだちになった。
ルフィスは、えとあの……初恋の人だからね。
ともだちじゃ、いやだ。
白銀の貴やかなオーラさえ纏うシリウスは畑を耕すのも手伝ってくれ、饅頭を売る時は村の近くまで乗せてくれる。
鍛錬も、シリウスと一緒だ。
畑仕事がめちゃくちゃ捗るようになって、父ちゃんは大歓喜だ。
頑張れば人参を食べられると理解してくれているシリウスも協力的で、とてもうれしい。
山を駆けさせたら右に出る者はいないと自負していたリイより、シリウスは速かった。
飛ぶように山を駆けてくれる。
シリウスが駆けると大気は澄み渡り、まるで樹々が道を開くように枝を伸ばした気がした。
村へと向かう時間が大幅に短縮されたので、鍛錬の時間をより多く取れるようになった。
じいちゃんは馬の乗り方も、ちょいちょいと手を振って教えてくれた。
馬に乗って剣を振るのと、地上で剣を振るのは随分違う。
槍なんて長物を抱えて突撃なんて、一朝一夕ではできない。
馬の背に乗った状態に慣れて、剣を振れるようになるまで、しばらく掛かった。
股の間とかお尻とか、身体のあちこちがやたらめったら筋肉痛になって痛いのが治って、身体をしっかり安定させて馬に乗れるようになるには、もっと掛かった。
シリウスが駆けてくれる時も剣を振れるようになるのは、更に掛かるだろう。
槍を扱えるようになるのはもっと掛かるし、駆けるシリウスの上で槍を構えて突撃するなんて、いつになるんだ!
「父ちゃんが早く教えてくれてよかった……!」
むつかし過ぎて涙目のリイに、じいちゃんも頷いた。
『頑張って騎士になろうとしても、馬がないからなれないよ』と早く諦めさせようとしてくれた親心だと思うけど、めちゃくちゃありがたい。
知らずに延々鍛錬してたら『持ってくるもの』の時点で終了してた!
「シリウスもありがとう。
俺、絶対絶対、シリウスと騎士になる!」
ふんと鼻を鳴らしたシリウスが、ぽふりとリイの頭に頭を乗せる。
熱い頬で笑うリイに、じいちゃんはやわらかに仄青い瞳を細めた。
じいちゃんは、凄かった。
剣も凄いが、槍も凄い。
馬の扱いも、魔法のようだ。
じいちゃんを見ているだけで、自分まで強くなったような気がするのだけれど、頑張れば頑張るほど、速くなれば速くなるほど、彼我の差に打ちひしがれる。
……才能、ないのかな。
ほんとは、弱いのかな。
泣きたくなるたび、ルフィスを思い出して踏ん張った。
絶対、絶対守るよ。
きっと、ルフィスの傍にゆく。
祈るように、髪を伸ばした。
叶うまで、切らない。
少女のような思いに恥ずかしくなるけど、今は5歳だ!
ゆるされる、はず!
照れ照れしながら髪を伸ばし、革紐で括る。
「…………女男…………」
村の子どもたちの目は更に胡乱になったけど、ふんと鼻息を鳴らして、飛んでくる石礫を蹴り返した。
「ぎゃあ!」
「いてえ!」
「速え!」
「人間じゃねえだろ!」
…………女男からランクダウンした気がするんだけど、気のせいかな?
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