【完結】きみの騎士

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 白銀にきらめく馬を連れて帰ったリイに、父ちゃんは仰け反った。

「ど、どどどうしたんだ、その高そうな馬!」

 引き攣る父ちゃんに、リイは胸を張る。


「一緒に来てくれた!
 餌は草でいいんだよな? 人参は俺が作るから!」

 胸を叩くリイに、父ちゃんは茫然と馬を見あげる。
 透きとおる青い瞳を見つめた父ちゃんは息をのみ、慌てたように背を正し、頭をさげた。


「……ありがとうございます。
 リイをよろしくお願いします」

 うむ、と頷く馬と畏まる父ちゃんに、目を見開いたリイは、父ちゃんと一緒に頭を下げた。


「よろしくお願いします!」

 はむはむリイの髪を馬が食べて、あわあわするリイに父ちゃんが笑った。





「鞍はよくわからんが、手綱を作ってみたぞ!」

「ありがとう!」

 父ちゃんが革で作ってくれた手綱をありがたく受け取る。


「つけてもいい?」

 ちょっと厭そうにした馬は、リイが乗るには掴まるところが必要だと理解してくれたらしい、渋々頷いてくれた。


 馬に乗るのは初めてだったけれど、物凄く頭のよさそうな白銀の馬がリイを乗せてくれる。

 落ちないか気をつけながら歩いてくれる姿に、

「ほわぁああ!」

 感動した。

 いつも地を駆けるリイは、その高さと、一歩馬が足を出す度にかなり揺れることにびっくりする。

「すごい!
 高い!
 揺れる!
 ふぁあああ!」

 父ちゃんが見様見真似で着けてくれた手綱を持って、ぽくぽく歩いてもらって、じいちゃんのところにゆく。

 白銀の馬の青い瞳を見つめたじいちゃんは、ほんのり唇をほころばせた。

 じいちゃんが潰れそうな小屋の裏手にゆき、手に持ってきたのは艶やかな漆黒の馬の手綱だった。

「じいちゃんの馬、かっこいー!」

 拍手したら、白銀の馬が鼻を鳴らす。


「あ、もちろんきみもかっこいーよ!
 え、えと、女の子? 男の子?」

 覗いてみた。

「おう」

 男の子だった。


 じいちゃんが首を傾げる。

「名前? お、俺がつけてもいいのかな?
 希望ある?」

 ふるると首を振った白銀の馬が、透きとおる瞳でリイを見つめる。


「……えと、じゃあ……」

 青く輝く白銀。


「シリウス!」

 ぱちりと馬は目を瞬き、じいちゃんも首を傾げた。


「え、えと、全天で一番明るい、青く輝く星の名前なんだけど……青銀のほうがいい?」

 今世の星は、見あげる夜空全部星みたいに輝いてるから、何が何だかわからない。
 星に名前があるのかどうかも、天体観測してる人がいるのかどうかも知らないよ。

 出したらだめな前世知識だったかも!
 ふつうに考えたら『尻薄』みたいに思える?
 侮辱になったら大変だ!

 悄気るリイに、馬はふるふる首を振った。
 リイの髪をはむはむ食べる。


「……シリウスで、いいの……?」

 こくりと馬は頷いた。


「シリウス!」

 熱い頬で、笑う。
 ぽふりとリイの頭に馬の頭が載って、じいちゃんはほのかに唇をほころばせた。






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