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お饅頭作戦
しおりを挟む「じいちゃん、すごい!!」
拍手したら、じいちゃんはほんのり唇をほころばせた。
「あ、あのあの、も、もしかして、か、貸して、くれ、る……?
絶対傷をつけないように頑張る!
絶対絶対絶対絶対返すから!!」
涙目で拳を握ったら、じいちゃんはこくりと頷いてくれた。
「うわあん!
ありがとう、じいちゃん!!」
思わず抱きついたリイの頭を、皺と骨の手がぽふぽふしてくれる。
やさしい仄青い瞳を、リイのうるうるの目が見あげた。
「馬、どうしよう、じいちゃん」
ちょっと首を傾げたじいちゃんは、リイの頭をぽふぽふして、ちょいちょい、手招きした。
家の外へと出たじいちゃんが、山の端を指す。
「ああ、うん、そこにばあちゃんが住んでるよ」
じいちゃんが、こくりと頷く。
「ばあちゃんに頼め?」
じいちゃんは、またこくりと頷いた。
「解った!
饅頭持ってってみる!」
できたての饅頭を持っていったとしても、馬の対価には遥かに遥かに及ばない――!
しかし、この手で作ることができるのは木の実饅頭だけなのです、ごめんなさい!
…………きびだんごみたいだな。
ちょっと思った。
家に帰って木の実饅頭をこしらえたリイは、早速山の東の端のばあちゃんの家に向かう。
今にも崩れ落ちそうな小屋を、鬱蒼と茂る樹々が護るように枝を伸ばした。
これ、ちゃんと開くのかな。
心配な扉を、ほとほと叩く。
「ばあちゃん、こんにちはー!
リイです。饅頭持ってきたよ!
それと、大事なお願いがあって」
ゴトゴト、小屋の奥から音がして、扉のつっかえ棒を外す、ゴトリという音がした。
ちいさな皺の手が覗いて、真っ白な髪に、真っ青な瞳のばあちゃんが顔を覗かせる。
にこりと、ばあちゃんは笑った。
このばあちゃんも無言だ。
饅頭を持ってゆくと、いつもとても喜んでくれるので、リイもうれしい。
「できたての饅頭、持ってきたんだ。
どうぞ」
青の瞳が輝いて、ばあちゃんのちいさな手が饅頭を受け取ってくれる。
首を傾げるばあちゃんに、リイは頷いた。
「俺、どうしても守りたい人がいて、騎士になりたいんだ。
でも至光騎士戦に出るには、馬と鎧と槍がいるんだって。
鎧と槍は、北のじいちゃんが貸してくれるって。
馬は、ばあちゃんに聞いてみなさいって言われて来たんだ。
どうしよう、ばあちゃん」
うるうるの目で見あげたら、ばあちゃんはちょっと首を傾げて頷いた。
皺の手が、リイの手をやさしく引いてくれる。
家の外に出たばあちゃんは小柄なのに凛として、周りの大気まで澄み渡る気がした。
――――――――――――――――――――――――――――――
はじめましての方、いつも読んでくださる方、お気に入りに入れてくださった方、エールをくださった方、投票してくださった方!
おひとつ、おひとつが、めちゃくちゃうれしいです。
ほんとうに、ほんとうにありがとうございます。
タイトルや表紙がころころ変わった上に、主人公の名前まで変わってしまって本当に申し訳ありません!
最近読んだ大すきなお話と主人公の名前が被っていることに気づいて、変更しました。
至らないところが多過ぎて本当に申し訳ないのですが、少しでも楽しんで戴けるお話になるよう、リイと一緒にがんばります!
いつも心から、ありがとうございます。
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