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ふふん
しおりを挟む「きみみたいな子どもが?
男の子は大変だね」
リイは鼻を鳴らす。
「女の子だって大変だよ」
「違いない」
笑った青年の灰の瞳が細くなる。
「僕たちが捜しているのは人形のように麗しい、蒼と碧の目をした、君と同い歳ぐらいの少年だ。
いや、ぱっと見、少女に見えると思う。
見かけたら是非知らせて欲しい」
ちょっと眉を上げたリイは、首を傾げる。
「迷子?」
「そうなんだ。
我々が一瞬気を抜いた隙に抜け出してしまわれてね」
リイは眉を顰める。
「それって、監禁?」
「貴様、無礼だぞ!
こちらのお方は――!」
「止めなさい」
剣を抜く男を、再び青年は止めた。
「大切にお守りしているんだ。
尊い御身だから」
リイはぎゅっと唇を噛んだ。
「きみよりも、ずっとね」
青年の唇が弧を描いた瞬間、リイの首には抜身の剣が突きつけられていた。
月明りに銀にきらめく刃が、肌を撫でる。
油断していた。
動けなかった。
大失態だ。
「ルフィス様!
出て来てくださらなければ、平民の子の首を刎ねます!」
大声で呼ばわる青年に眉を顰めたリイは、青年の注意が洞窟へと向かった瞬間、青年の腹に拳を叩き込み、その腕の中から抜け出した。
「ぐはっ……!」
「貴様――!」
剣を抜き、振りかざす男たちを嘲笑うように、リイは駆ける。
幾度も襲いくる鋼の刃を、ひらり、ひらりと躱すリイに、闇鎧たちが目を剥いた。
「な、んだ、このガキ――!」
「速い――!」
男たちを麓の方へと誘導しながら、リイは逃げる。
短剣は持っているが、貴族を傷つけると後がまずい。
全員ついて来ているか確かめながら、森の木々の幹を蹴り、枝を掴み、宙を舞うように跳ぶリイに、男たちが息を呑む。
「……まさか、精霊……?」
「け、剣を引け!」
青年の声に、躊躇いながら男たちが剣を下ろす。
随分と麓の方へと降りさせられ、洞窟の方を見上げた青年の顔が歪んだ。
「しまった!」
人の気配のしなくなった洞窟に闇鎧たちが茫然としている間に、リイの身体は夜の山に溶ける。
「しまった……!」
二度目のしまったを背で聞き、ちいさく笑ったリイは、山の奥のルフィスの気配を辿るように、夜を駆けた。
枯れ葉を踏みしめるちいさな足音を聞き分けたリイは、ルフィスのもとへと向かう。
「リイだよ」
囁きとともに笑ったら、ビクンと震えたちいさな身体が跳び上がる。
「リイ……!」
押さえた悲鳴の涙声に、リイはルフィスを抱きしめる。
「怖い思いをさせて、ごめん」
「リイ、怪我は!?」
「大丈夫!」
笑ったら、蒼碧の瞳が泣きだした。
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