【完結】きみの騎士

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やくそく

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 至光騎士戦で優勝し、光騎士になる。

 5歳のリイでさえ知っている至光騎士戦は、身分を問わず、光国民すべてに開かれた大会だ。

 レイサリア光国で、平民が貴族の傍にゆける唯一の手段だ。


 光騎士になれれば、平民であっても、王太子殿下のお傍でお仕えすることさえ可能だという。

 底辺から天上まで一瞬で駆け上がれる唯一の手段だが、遥かな夢でもあった。


 ここ百年、平民から光騎士になった者はいない。

 暇を飽かせ鍛練に打ち込める貴族の子弟が優勝するのが常だからだ。

 女が光騎士になった話は、聞いたこともない。


 それでも平民のリイが貴族のルフィスを正々堂々、正式に守れる、唯一の方法だった。


「光騎士……!?
 ……リイが?」

「絶対なる!
 光騎士になって、ルフィスを守る!!」

 ぎゅうぎゅう、ルフィスの手を握る。

 見開かれた蒼碧の瞳から、涙が落ちた。


「……リイ……」

「絶対、絶対なるよ。
 ルフィスの傍に行くまで時間が掛かっちゃうけど、絶対、絶対ルフィスを守るから!!」

 ルフィスのちいさな腕が、リイを抱きしめる。


「……その言葉だけで、僕は生きてゆける」

 熱い頬で、リイはふくれる。


「俺のこと、信じてくれないの?」


 ルフィスのおでこと、リイのおでこがくっついた。

 さらさらの亜麻色の髪が、リイの頬で揺れる。


「信じてるから、生きられるんだ。
 リイが来てくれるまで、草を食べても生きる」

 ちいさな拳を握るルフィスに、リイは破顔する。


「食べられる草を教えてあげる!」

 リイの言葉に、ルフィスの蒼碧の瞳が丸くなる。


「……あ、あの……比喩、だったんだけど、食べられる草があるの?」

「俺、毎日食べてるよ!」

 にこにこしたら、ルフィスは恥ずかしそうに俯いた。


「僕は本当に物を知らなくて、無礼でごめんなさい」

 頭を下げるルフィスに、リイは熱い頬で笑う。


「ルフィスの知らないことを俺が知ってるの、うれしい」

 ちいさなルフィスの手を握る。


「捜索隊が落ち着いたら、山を案内するね。
 食べられる草、いっぱいあるよ!」

「楽しみにしてる」

 ふわふわ紅い頬で、ルフィスはリイを抱きしめる。

 広げられた腕が、リイの背を包み込むように抱きしめた。


「リイに逢うために、生きる」


 ちいさな声に、鼓動がとくりと音をたてる。

 光が入るたび色を変える蒼碧の瞳を、照れくささとよろこびに跳ねる胸で、真っ直ぐ見つめる。


「ルフィスを守るために、生きる」

 ささやいた。


 耳まで真っ赤なルフィスに、ぎゅうぎゅう抱きしめられる。


「……やくそく……?」

「約束!」

 ルフィスの背を抱きしめて、ぽかぽかのほっぺたで笑った。

 


 



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