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舞踏会編
おにあい
しおりを挟む闇龍のレォンが人けのないところでリトとジゼを降ろしてくれて、人化する。
「でけた!」
お背なの翼も、得意そうに、ぱたぱただよ。
「ぎゃ──! かーわーい──♡♡♡」
もだもだした透夜が風の魔法で皆を帝都まで運んでくれたら、バギォ帝国、帝都です。
皆で一緒に観光が、はじまりました!
いや『よい子の隠密団』の偵察の任務だったはずだけど、おかしいな?
首をかしげるリトのしっぽが、ぽふぽふ揺れて、透夜もロロァもレォンもジゼも、胸を押さえてる。
おお、この癖、バギォ帝国でも流行しているみたいだ。
大陸中で大流行!
リトも胸を押さえてみました。
ジゼがやさしい目で、リトの頭をなでなでしてくれる。
ふわふわ頬が熱くなって、とくとく胸が駆けてゆく。
「はー♡ かわいー♡♡♡」
リトにもだもだした透夜が、隣のレォンにくねくねしてる。
「龍もすごかったけど、人型になったら、めちゃくちゃ、かわいーですね!」
へにゃりと凛々しい顔を崩す透夜に、ちっちゃなロロァの頬がぷっくりしてる。
「とーや」
服の裾をちょこんとつままれた透夜が、ロロァを振りかえって、とろけて笑う。
ふたりの頬が、ふわふわ赤くて、ロロァを抱きあげる透夜は、とびきりしあわせそうだ。
同郷の転生者が、しあわせそうだと、リトもうれしい。
「おにあぃ、でし」
うむうむするリトの隣で、ジゼもレォンも、うむうむしてる。
「バギォ帝国の見どころは?」
ジゼの問いに、透夜とロロァが顔を見合わせる。
「帝宮かなあ? 今、瓦礫の山だけど」
透夜が指したほうには、昔はきらびやかだったのかもしれない宮の残骸が乱立していた。
それだけではない。帝都は竜巻が通り抜けたあとのように、あちこちで豪奢だったのだろう邸宅が崩壊している。まるで戦の跡だ。
「災害、でしぁ?」
いたましく眉をひそめたリトに、透夜が引きつった。
「……え、えーと……」
「とーや、皆を守るために、がんばったの。どっかーん!」
ロロァがちっちゃな両手を広げて『どっかーん』してくれる。かわいい!
じゃなかった。
……なるほど、ルァル殿下に聞いた、エゥリケ王国の暗殺部隊を退けるために、帝宮と帝都が崩壊したんですね。
それを、透夜ひとりで、成し遂げた……?
瓦礫だらけの帝都に戦慄するリトの隣で、ジゼの蒼の瞳がほそくなる。
透夜の力を見定めようとするように。
「……なるほど。……確かにおばあさまと闘えそうだ」
それは大陸で、一二を争うほど強いということだ。
びくりと震えるリトの隣で、透夜は首を傾げた。
「ジゼさまのおばあさま、闘われるんですか」
「今は腰が砕けてる。祖父のせいで」
ロロァがきょとんとして、透夜は真っ赤になった。
「そ、それは、仲むつまじくて、よかったですね!」
にこにこしてる。やさしい。
よくわからなかったらしいレォンは、元気に手をあげた。
「ここの名物を食べてみたいのだ!」
ちっちゃな胸を張るレォンの、ぱたぱたな翼に拍手したロロァも胸を張る。
「僕ら、鳥麺屋さん、してるんだよ!」
「とりめん?」
皆で首を傾げたら、透夜が笑う。
「俺の故郷の料理もどきなんです。雑穀を使った庶民の味ですが、召しあがってみます?」
「行くのだ!」
レォンの目も、ジゼの目も、きらきらしてる。
リトのしっぽも、ぽふぽふだ。
「行くでし!」
「ああ。案内をお願いする」
ふうわり、ジゼが微笑んだ。
「生ジゼさまの微笑み、尊い──!」
透夜が拝んでる。
すんごく強いのはびっくりだけど、仲良くなれそうな気がしてきたよ!
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おばあさまは腰が砕けてるのがデフォルトなので闘えないから大丈夫〜〜〜♪
いぬぞ~ 様、ご感想、いつもありがとうございます!
腰砕けがデフォとか、やばいですよね……!(笑)
たぶんほんとの緊急時には、おじいちゃんも考えてくれるはず……!(笑)
今更ロロァが悪役令息なんて出来ないから大丈夫。
2人の出逢いをリト君に話してあげたら共感されそう。
「ボロい天井踏み抜いちゃって落下して燭台にぶっ刺さちゃって〜」
「ぼろぼろ状態で重い石材背負っててぺしょする直前に助けられたでし〜。」
はたから聞いたらめっちゃ恐ろしい会話ですな。
いぬぞ~ 様、ご感想、いつもありがとうございます!
ロロァは透夜と仲間たちのおかげで、さらによい子に(笑)
ふた組とも、出会いがかなり痛い感じでしたね(笑)
良い子の隠密団はリトくんとレォンしゃま見たら「ほわわわわ〜💕」からのよくセバたんがなってる状態の塊が出来るのです!
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いぬぞ~ 様、ご感想、いつもありがとうございます!
ちっちゃい皆で「ほわわわわ~♡」めちゃくちゃかわいいですー!(笑)
セバがなってる状態の塊?? リトとレォンのためなら何でもやってやるぜーな?(笑)
ほんとによい子の隠密団、全員で闘ったら、ジーグもヴィルも、わたわただと思われます(笑)
たぶんちっちゃくて可愛くて戦えない──!(笑)
隠密団の他のおともだち、はじめてなのです! 書くのも楽しみですー!