【完結】もふもふ獣人転生

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舞踏会編

3さい?

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 執務室に沈黙が降りる。

 不穏な空気にわたわたするリトの隣で、ジゼが唇を開いた。

「……険しすぎる山脈のせいで行き来の全くない、向こうが勝手に敵視してくるネメド王国ですか?」

「……王族や高位貴族に無断で口をきいただけで、首が飛ぶ?」
「特に何の旨味もない?」
「交流する意義を感じない?」

 続けるノァとカィトに、帝太子ルァルがちいさく笑う。

「そう、敵対しようが、どうでもよかったネメド王国だ」

「何かありましたか」

 蒼の瞳を細めるジゼに、ノァとカィトが眉をひそめる。
 ルァルは唇を吊りあげた。

「我らドディア帝国と急峻な山を挟んだ向こう、ネメド王国ヴァデルザ領に、魔導列車なるものが通ったらしい」

「…………は……?」

 ぽかんとするノァとカィト、ジゼの隣で、ぴょこんとリトが跳びあがる。

「まどー、列車!」

 魔石か何かで動く列車?

 リトもぽかんと口を開ける。

 大陸の最先端だというドディア帝国にも魔列車はある。
 魔法研究も工学研究も他国の追随を許さぬほど発展しているドディア帝国の最高機密とされ、ドディアの誇りとも謳われている。
 他国に真似のできるような機構ではない。

 それを、敵国が独自に編みだした、っていうこと?

 そ、それは、脅威なのでは……!

 あわあわするリトの隣で、ジゼが眉をあげる。

「最高機密が、洩れましたか」

 ルァルは首を振った。

「諜報院の報告によると、我らドディアと全く異なる原理で動く列車だそうだ。開発したのはネメドの天才と小人たちだが、発案したのは3歳児だという」

「はァ──!?」

 ノァと一緒に、カィトもリトもあんぐりした。

 ジゼの瞳もまんまるだ。

 皆の反応が思ったよりよかったらしい、ルァルはちいさく笑った。

「ネメド王国最貧バチルタ領主の第一子、ノィユ・バチルタ。ヴァデルザ領主ヴィル・ヴァデルザの伴侶だそうだ」

「はあぁあア──!?」

 皆と一緒に、リトも仰け反った。

 しっぽも、ぼふってなってる!
 ジゼの手がなでなでしてくれた。やさしい。うれしい。
 

「……3歳ですよね?」

「ヴァデルザの領主って確か髭もじゃの70代なんじゃ……」

 あんぐりしすぎなノァとカィトに、ルァルが肩をすくめる。

「3歳のノィユが、どうしてもと頼みこんで伴侶になったらしい」

「……すんごい筋肉なのか……!」

 カィトの目が、きらきらしてる。


「ヴァデルザ領って、あれでしょ、ゾンデ王国みたいに魔界との境界があるのか謎だけど、ゾンデより魔物が湧くっていうか魔物が暮らしてる、大陸で一番魔界っぽいところ」

 記憶を探索したノァが引き攣ってる。


「魔法じゃなくて、筋肉で倒すんだろう。化け物みたいに強いのが代々領主になるって聞いたことがある」

 カィトの目が、とてもきらきらしてる!


「その魔界なヴァデルザ領と最貧バチルタ領が縁を結び、魔導列車を通した。繋がる先はバチルタ領だ。火山の噴火で困窮していたバチルタ領が、農耕改革に魔石生産、化粧品生産で莫大な富を叩きだし、歴代の巨額の借金を完済したらしい。成し遂げたのが、3歳のノィユ・バチルタだ」

 ジゼもカィトもノァも、茫然としてる。


 リトもぽかんと口を開けた。


 ……3歳で?

 列車と農耕と魔石にさらに、化粧品……!?


 転生チートの匂いがする──!




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