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舞踏会編
任務でし!
しおりを挟む「よぃこ?」
きょとんとするリトと一緒に、皆もぽかんとしてる。
おごそかに頷くルァルも、ちょっと不審そうに『ほんとによい子なのかな?」という顔になってる。
「冒険者同盟が『裏切らない』と魔法契約を結ばせたと請け負ってくれても、冒険者同盟そのものが裏切って裏契約を結ばせている場合がある。看破できるのは光魔法の使い手だけだという」
リトはちっちゃな手を挙げる。
「アリアスしゃま!」
「と、リトだ」
ルァルの言葉に、ジゼは蒼の瞳を剣呑に細めた。
「まさかリトに光魔法を使わせる気ですか。まだ5歳ですよ」
低くなるジゼの声に、ルァルはいかめしく頷いた。
「万一、リトに危険が及ぶときは、ラヴァリアさま、ザィハさまが出てくださるだろう。それを期待せねばならぬほど『よい子の隠密団』が裏切ったときは危険だ」
息をのんだ皆が沈黙した。
「我らは親善を願っている。だが相手はそうではないかもしれない。それでも行動を起こさなければ大抵関係は悪化してゆく。ネメド王国が魔導列車を造るほど力をつけてきたなら、ドディア帝国の脅威になる」
帝王の目でルァルはジゼを、リトを見つめる。
「『よい子の隠密団』が此度の依頼に相応しいかどうか、その目で確かめてきてくれ。反応を見るために、依頼はすでに出してある。ジゼとリトの判断で、依頼を続行するか、取り消すか決定する」
ルァルの目を正面から見つめ返したジゼは、吐息した。
「……御意」
「ぎょぃ!」
手を挙げるリトのしっぽが、重責にぼふぼふしてる。
皆の顔が、いっぺんに緊張から、ほにゃにゃになってる。
「最も近くの同盟国まで転移門を開こうと思う。そこからは馬でバギォ帝国まで向かってくれ」
ルァルの指示に、世界地図を見つめたリトは、跳びあがる。
「だ、大旅行、でし!」
あわあわするリトをジゼがぽふぽふ宥めてくれる。
「リトはまだちいさい。体調を崩さぬか、心配だ」
眉をさげるジゼも、12歳だよ!
「ジゼしゃま、も!」
「俺は、大きいから」
胸を張るジゼが、かわいーでし!
「ルァル殿下から、任務を賜りました」
ジェディス邸に戻り、告げたジゼに、セバもゲォルグも心配そうに眉をしかめた。
リトはちっちゃな胸を叩く。
「僕、ジゼしゃま、お守り、しましあ!」
おかたまと、おとたまの血を引いているのです!
たぶん、頑張れば、すんごい、はず──!
ぽふぽふしっぽのリトに、皆の顔が、はにゃにゃになってる。
お出かけが決まったら、大切なのは、おやつです!
リトはちっちゃなリュックに、料理長コゴが作ってくれた焼き菓子を詰めてゆく。
「おやつ、幾ら、まで、でしぁ?」
「いくらでも」
抱っこして、なでなでしてくれるジゼが、甘やかし大王でし。
「リト、どこかへ、お出かけなのか?」
お背なの翼をぱたぱたしてきてくれたレォンに、リトは世界地図を広げる。
「だぃ、ぼぅけん、なのでし!」
ぽふぽふのしっぽに顔を赤くしたレォンが、ちっちゃな胸を張る。
「僕が、お背なに乗せてあげるのだ!」
「わぁ!」
ぱちぱち拍手して喜ぶリトを抱きあげたジゼが眉をさげる。
「しかしレォンさま、今回は危険な任務で──」
「なら尚更、僕がゆくのだ! ドガーン! なのだ!」
胸を張ってくれるレォンの闇の瞳が、きらきらしてる。
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