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おまけのお話
たかいのです
しおりを挟む「リト」
ジェディス邸に遊びに来てくれた、おかあさんのザィハが、リトに向かって腕を広げてくれる。
ずっと、ずっと逢いたかった、おかあさん
抱きついて、あまえても、いいのかな。
ほんとの、ほんとに、おかあさん……?
組みあわせた指で見あげるリトのしっぽが揺れる。
「おいで、リト」
やさしい声で、おかあさんの声で、呼んでくれるから
「おかたま」
ぽふり
抱きつくリトのしっぽが、ふあふあ揺れた。
「ずっと傍にいられなかった分、とびきりあまやかしたい」
凛々しい紅の瞳をやわらかに細めて、抱きしめて、髪を撫でて、笑ってくれる。
「……あまえて、いー……?」
「もちろん」
ちゅ
あまい口づけが、つむじに降って、ふわふわ熱い頬でリトがとろけて笑う。
見守ってくれるジゼの頬が、ちょっとふくれているのがうれしいだなんて、しっぽがぽふぽふ揺れちゃうなんて、内緒だ。
「リト、僕も、僕も! 抱っこ!」
絶世のきらきらのかんばせで、おとうさんのラヴァリアが腕を広げてくれる。
「おとたま」
ぱふり
抱きついたら、真っ赤な頬で笑ってくれる。
「リト、かわいい僕の息子」
ぎゅうぎゅう抱きしめて、髪を撫でて、ほっぺにちゅうしてくれる。
「……あの、それはちょっと……」
ものすごく複雑そうな顔のジゼに、瞬いたラヴァリアが唇の端を吊りあげた。
「やきもち? 僕、リトのおとうさんなんだけど」
「ほっぺにちゅうは、やりすぎじゃ……」
「するだろ!」
「するな」
おとたまと、おかたまが、うむうむしてる。
「ジゼ、おかあさまと、おとうさまの愛には口を出さないように。辛いだろうが、我慢だ」
ジゼのおとうさんゲォルグが、愛息の肩を慰めてる。
「がんばってください、ジゼさま」
微笑むセバにも応援されたジゼは、渋々のように頷いた。
「……その、もう、口は、出さない。……ごめん、リト」
伏せられたジゼの睫がけぶるように蒼の瞳を縁どって、リトはふるふる首を振った。
「ジゼしゃま、やきもち、うれし、でし!」
ぽふぽふ揺れるしっぽで笑う。
「リト、おいで!」
対抗するみたいに、おとたまが腕を広げて、くすくすあまい笑みを浮かべたリトは、ちょっと引きずる足で、ぽてぽて駆けて、抱きついた。
「えへへ」
おとたまの胸に顔をうずめるリトの頭を撫でて、しっぽをなでて、うれしそうな赤い頬で笑ってくれる。
おとうさん。
ほんとの、ほんとに……?
思う気持ちが遠くなるくらい、ぎゅうぎゅう、抱きしめてくれる。
「リト、おとうさんにおねだりは?」
「おね、だり?」
「何でもしてあげる」
おでこがくっついて、瞬いたリトは、手を挙げる。
「たかぃ、たかい!」
「おお!」
ひょいとリトを抱きあげたラヴァリアが、たぶんちょこっとした力で、リトを天へと投げあげた。
「きゃ──!」
飛んでる!
びっくりして、目を瞠るリトのふあふあの耳もしっぽも、びゃーびゃーしてる。
「リト──!」
悲鳴をあげるジゼを安心させるように、空高くから手を振った。
「へ、ぃき、でし、ジゼ、しゃま!」
声まで、びゃーびゃーしてる!
「きゃ──!」
ぎゅーんとあがって、ぎゅーんと落ちてくるリトを、大地を蹴ったラヴァリアが天空で抱きとめる。
「もっと、飛ぶ?」
ひょいと地を蹴ったザィハがラヴァリアのもとまでやってきて、リトを抱っこしたラヴァリアを、さらに空高くへと投げあげた。
「きゃ──!」
びゃーびゃーする耳としっぽで、おとうさんと笑う。
ふわりと浮きあがったおかあさんが、歓声をあげるリトに、ふうわり笑った。
「……たかいたかいさえ、異次元ですね」
地上のセバの目が遠い。
「さすがザィハさま、ラヴァリアさま」
ゲォルグが目を細めて、心配そうなジゼが手を挙げた。
「リト──!」
「だぃ、じょぶ、ジゼ、しゃま! たかぃ、たかい!」
おかあさんと、おとうさんと一緒に、空を翔る。
抱っこして、ほっぺたをくっつけて、おでこをくっつけて、一緒に笑う。
ほんとの、ほんとに……?
心配だった気持ちが、高い空に溶けるように消えてゆく。
天空も、高く飛ぶのも、こわくない。
きっとリトも、空を翔られる。
おかあさんと、おとうさんの、子どもだから。
「おかたま、おとたま、だいしゅき」
あまえるように抱きついたら、とろける頬で笑ってくれた。
────────────
ずっと読んでくださって、心からありがとうございます!
3巡目(笑) あ。 様のリクエストで、リトが子供らしく両親に甘えてるお話でした!
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