【完結】もふもふ獣人転生

  *  

文字の大きさ
上 下
186 / 208
おまけのお話

だいしゅき

しおりを挟む



「リトが、どんな風に暮らしてるのか、見たい」

 母ザィハの言葉に、父ラヴァリアもこくこく頷いて、ジゼ父ゲォルグもセバもいいよと言ってくれたので、リトがジェディス邸を案内するのです!

 ぽふぽふ揺れるしっぽに、ザィハが笑う。

「ラヴァリアにそっくり」

「おとたま?」

「ああ、うん、しっぽも出せるよ」

 ラヴァリアの身体がきらめいて、ふわふわのしっぽと、ほわほわの耳が現れた!

「わー!」

 ぱちぱち拍手するリトに、ラヴァリアがうれしそうに胸を張ってる。
 リトを抱えあげたザィハが、切れ長の紅の瞳を細めた。

「よく似てる。俺に似なくて、よかった」

「そんなことない! 口元とか、鼻のところとか、ザィハに似てる。ザィハ、めちゃくちゃかわいーんだから!」

 ぎゅう

 母をだっこする父の愛があふれてる。


「僕、おかたまに、似てる、うれし、でし。おとたまに、似てる、のも!」

 ぽふぽふのしっぽで笑ったら、母と父が頭をなでなでしてくれる。

「えへへ」

 おかあさんと、おとうさんと、手をつなぐ。

 こんなにうれしいなんて、知らなかった。

 胸があつくて、頬があつくて、目の奥がじんとする。

 しっぽも、ぽふぽふだ。



「ここ、僕、お部屋、でし! ジェディス家、従僕、にも、個室、くれゆ、すごぃ!」

 ちっちゃな茶筒が棚に敷き詰めるように並べられた、寝台と机と椅子の置かれた部屋に、ザィハもラヴァリアも目をまるくした。

「ここ?」
「確かに、リトの匂いがする」
「人間みたいに、暮らしてる?」

「あい!」

 ひょいとラヴァリアがリトを抱きあげる。

「辛くあたられてないか?」

 リトはぶんぶん首を振る。

「ジェディス邸、皆、やさし! 来る前、獣人、皆、強制、ろーどー、ジゼしゃま、ぽこぽこ、してくれ、ましあ!」

「……辛い目に?」

 ザィハの紅の瞳が揺れる。

「昔、は。獣人、皆、大変。でも今、皆、しぁわせ!」

 ラヴァリアの瞳が揺れる。

 何もできなかったことを哀しむ両親を元気づけたくて、リトは笑う。


「辛い、こと、ある、しぁわせ、わかる。僕、しぁわせ、でし!」

「……っ!」

 母の、父の腕が、抱きしめてくれる。

 おかあさんが、おとうさんが、泣いてる。


「……リトに辛い思いをさせて、すまない」

 涙声に、リトは首を振った。


「おかたま、おとたま、魔力、なくなる、まで、がんばて、僕、生んで、くれま、しあ。おかげ、で、僕、しぁわせ」

 ちいさな腕で、涙の両親を抱きしめる。


「ありぁと、おかたま、おとたま」

「リト……!」

 泣いてくれたら
 泣いてしまう


「ふぇえ、おかたま、おとたま、あぇて、うれし、でし!」


 だきしめる腕があって

 だきしめかえしてくれる腕があって

 皆で泣いて

 皆で笑える

 しあわせを、噛みしめる。


「いっぱいいっぱい、あまやかしたい」

 ラヴァリアが笑って、ザィハの腕がリトを抱き寄せる。

「いとしい息子」

 やさしくあまい声で囁かれたら、耳もしっぽも、ぼふぼふだ。

 恥ずかしくて、照れくさい気持ちをおしこめて、リトは両親の手をにぎる。


「おかたま、おとたま、だぃしゅき、でしあ!」


 真っ赤になった両親が、とろけるように笑ってくれた。









────────────

 読んでくださって、ありがとうございます!

 ここあ様のリクエストで、リトの親子のお話でした!


しおりを挟む
感想 256

あなたにおすすめの小説

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は? 最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか? 人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。 よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。 ハッピーエンド確定 ※は性的描写あり 【完結】2021/10/31 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ 2021/10/03  エブリスタ、BLカテゴリー 1位

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【完結】守護霊さん、それは余計なお世話です。

N2O
BL
番のことが好きすぎる第二王子(熊の獣人/実は割と可愛い) × 期間限定で心の声が聞こえるようになった黒髪青年(人間/番/実は割と逞しい) Special thanks illustration by 白鯨堂こち ※ご都合主義です。 ※素人作品です。温かな目で見ていただけると助かります。

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。

みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。 男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。 メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。 奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。 pixivでは既に最終回まで投稿しています。

異世界転生した俺の婚約相手が、王太子殿下(♂)なんて嘘だろう?! 〜全力で婚約破棄を目指した結果。

みこと。
BL
気づいたら、知らないイケメンから心配されていた──。 事故から目覚めた俺は、なんと侯爵家の次男に異世界転生していた。 婚約者がいると聞き喜んだら、相手は王太子殿下だという。 いくら同性婚ありの国とはいえ、なんでどうしてそうなってんの? このままじゃ俺が嫁入りすることに? 速やかな婚約解消を目指し、可愛い女の子を求めたのに、ご令嬢から貰ったクッキーは仕込みありで、とんでも案件を引き起こす! てんやわんやな未来や、いかに!? 明るく仕上げた短編です。気軽に楽しんで貰えたら嬉しいです♪ ※同タイトルの簡易版を「小説家になろう」様でも掲載しています。

処理中です...