【完結】もふもふ獣人転生

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おまけのお話

こいがたき

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 エゥリケ王国から帰ってきてから、ふくれていたテデがしょんぼりしている。
 リトの耳もしっぽも、ぺしゃんとしてる。

「あ、あの……テデ……」

 何を言えばいいんだろう。

 ジゼを想っていた気持ちは、リトとおなじだ。
 リトより長い間、テデはずっとジゼを想ってきたのだろう。
 横から飛んできたもふもふに、ジゼを奪われてしまったテデの痛みと苦しみは、どれほどだろう。
 思うだけで、胸が塞がる。

 ちょっと顔をあげたテデは、ふくれた頬で呟いた。

「お茶淹れてよ、リト」

「あい!」

 ぴょこんと跳びあがったリトは、あわあわ厨房へと向かい、茶筒の棚へと引きずる足で駆け寄った。
 テデが後ろからついてきてくれる。
 厨房の隅にしつらえられた椅子をひいたら、座ってくれた。

 茶棚の前へと戻ったリトは、しょんぼりした気持ち、辛い思いを、やさしく包みこんで癒してくれる香りのお茶を、テデのすきなお茶から選んでゆく。
 お茶にぴったりなお菓子をガチムチ料理長コゴにお願いしたリトは、心をこめて最適な配分となるようお茶の葉を混ぜ合わせた。

 傷ついた心が、すこしでも癒されますように。

 そんなの、リトに一番祈ってほしくないかもしれないけれど。
 それでも願わずにいられない。

 テデだけの誰かが、はやく、はやく、見つかりますように。

 それがリトに飽きたジゼだったとしても。

『ジゼは、渡せない』とは思わない。思えない。

 ジゼはリトにとって、最愛の推しで、天上の人で、ふれられるなんて思ってもみなかった。
 こちらを向いてくれて、話しかけてくれるだけで奇跡なのに。

 救ってくれた。
 愛してくれた。

 ゆめみたいで。
 ほわほわしてる。


 だから夢から覚めたジゼが、ずっと支えてくれて愛してくれたテデを選んでも、当然だと思ってしまう。

「こら」

 テデの指が、リトのおでこを弾いた。

「いたぃたでし」

 おでこを覆ったリトに、テデが笑う。

「あんぽんたんなこと、考えただろう。それってジゼさまに、めちゃくちゃ失礼なんだよ、わかってる?」

 リトは、目を伏せる。

「……でも、僕……」

「自信ないのは、わかるよ。僕もそうだった。ゆめみたいで、ふわふわする気持ちもわかる。ジェディス邸に雇ってもらえて、ジゼさまのお傍でお仕えできるようになった僕も、そうだった」

 目を細めて、テデが笑う。

「自信をもって、笑顔で、ジゼさまの傍にいてよ。でないと僕も、アオも、救われない」

 ぎゅ、と唇を噛んだリトの頭を、テデの指がわしゃわしゃ撫でる。

「リトがそんな顔してると、誰もしあわせになれない。次に行けないんだよ。ね?」

 やさしい瞳で、笑ってくれる。

「リトー、茶菓子できたぞー!」
「ありあと、ござまし!」

 焼きたてのお菓子をコゴから受け取ったリトは、お茶を淹れる。
 テデを思って、テデの心が元気になるよう、心をこめて、お茶を淹れる。

「どぞ、でし」

「いい香り」

 目を細めたテデが、カップに唇をつけて、囁いた。


「リトの気持ちが、いっぱい籠もったお茶だ」

 恋敵に、笑ってくれる。


「ふぇ……! テデ……!」

 抱きつくリトを、テデの腕が抱きとめる。


「世界でいちばん、しあわせになって。そしたら僕も、世界でいちばん、しあわせになるから」

 やさしい瞳で、笑ってくれる。


「テデ、大しゅき、でしあ!」

 涙と叫んだら、ぷっくりふくれたジゼが顔を覗かせる。


「リト、早速浮気だなんて、酷すぎると思うんだが」

 テデはうるんんだ瞳で、ジゼを見つめる。


「ジゼさま、世界でいちばん、しあわせになってください」

 瞬いたジゼは、微笑んだ。


「もうすでに、世界でいちばん、しあわせだ」


 くしゃりと顔を歪めたテデは、振り切るようにおもてをあげる。


「リトは?」

 聞いてくれるテデに、ごしごし目をぬぐったリトは、笑う。


「世界、いち、しぁわせ、でし!」

「よし」

 わしゃわしゃ頭を撫でて、笑ってくれた。











────────────

 読んでくださって、心からありがとうございます!

  あ。 様が読みたいと言ってくださった、テデとリトのお話でした!


 テデもきっと、世界一しあわせになると思います!

 めちゃくちゃ執着されてデロ甘なほど愛されればいいと思います(笑)




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