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そばにはいられるよ
しおりを挟むリトは胸に手をあててみる。
……光魔法、使える、のかな……?
きらきらの光の方を思い出す。
困ったときは呼んでねと笑ってくれた。
困ってないときにもと。
光魔法を教えてくれる人は、誰もいない。
主人公アリアスみたいにできるわけじゃないと思う。
それでも、もし、自分にできることがあるなら。
きゅ、と拳をにぎったリトは顔をあげる。
「お役、立たな、かも、でし、が、僕、行きまし!」
「リト──! ほんとは僕、めちゃくちゃめちゃくちゃめちゃくちゃ不安だったんだよ! だって12歳だよ? 光魔法の使い方なんて全然わからないし、浄化なんてできる気しないし! ゲームと全然違うかもしれないし、いきなり隣国行って浄化とか無理ですって言えない状況で号泣しそうだったんだよ──! リトが一緒に来てくれたら、めちゃくちゃ心強い──!」
だばだば涙をあふれさせたアリアスが、すがりつくように抱きしめてくれる。
「僕、何も、できな、かもでし、が、おしょば、いるでし!」
涙にふるえるアリアスの背をなぐさめるようにぽふぽふする。
ジゼとアオの眉が、ちょっとぴくんとしてる。
「リトを危険にさらさないと誓う。アリアスを支えるためにも、一緒に行ってくれないか」
ルァルの言葉に、リトは首を傾げる。
「いしょ?」
ぽふりと揺れるしっぽに、皆がちょっと赤くなって、こほんと咳払いしたルァルは唇を開く。
「ゾンデ王国のみならず、ドディア帝国、ひいては世界の危機である。母帝に進言し、ドディア帝国の魔法使い、国防に必要な者を除いてできる限りを掻き集め、俺とカィト、ノァとジゼ、アリアスとリトとともに隣国へ向かう」
手を挙げたルァルの前に、カィト、ノァ、ジゼ、アリアスが膝をつく。
リトもあわあわ膝をついた。ほんのちょっとよろけたリトをジゼが支えるより速く、しゃっと光のように駆けたアオが支えてくれる。
ジゼの瞳から凍気がこぼれて、ちいさく笑ったアオもリトの隣で膝をついた。
「あ、あの……」
見守ってくれていたレォンが口を開いて、ぎゅんと音が出るように振り返ったルァルがとろけるように微笑む。
「何でしょう、レォンさま」
「……僕も、皆のたすけになりたい、のだが……でも僕は闇龍で……瘴気との親和性が高く……瘴気のあるところにゆくと、僕が魔物を活性化かせてしまうかもしれない」
しおしお肩を落とすレォンと一緒に、ちいさな羽もしょんぼりしてる。
「レォンしゃま、おきもち、やさし! ありあと、ござまし!」
頭をさげるリトと一緒にしっぽもほわほわお辞儀する。
皆が赤い頬で胸を押さえながら、リトと一緒にレォンに頭をさげてくれた。
「ありがとうございます、レォンさま」
陽の瞳をやわらかに細めたルァルは、レォンにやさしい笑みを浮かべる。
「レォンさまのお気持ちは大変ありがたく存じます。どうぞお心やすらかに、ジェディス邸でお待ちください。なんともならなくても、どうにかします。ジゼが」
「俺か──!」
目を剥くジセに、ルァルが声を立てて笑った。
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