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なますちる

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 ルァルに紹介されたアリアスが、桜の髪を揺らして微笑んだ。

「アリアス・ホボーラエでございます、ナティ殿下」

 微笑むアリアスが、めちゃくちゃかわいー!
 さすが主人公!

 思わず拍手してしまったリトと一緒に、ナティも拍手してた。

「め、めちゃくちゃかわい──!」

 ナティの周りが桜吹雪になってる!

「わかったから、とりあえず茶を飲んで落ちつけ」

 ルァルにぽんぽんされたナティは、リトのお茶をすすった。

「うまい!」

 笑ってくれるナティに、リトのしっぽがぽふぽふ揺れようとして、あわあわしゃんとする。

「か──わ──い──い──! きゃ──!」

 くねくねするナティの背を、ルァルのてのひらが叩く。

「国は大変なことになってるんだろ、思い出せ!」

 息をのんだナティの緑の瞳が歪んだ。

「ゾンデ王国に発生する魔物は、今は騎士団が押さえている。それでも被害が増えてきているんだ。魔物の出現の頻度も上がっている。最初は弱い魔物が出るだけだったのが、少しずつ強い魔物が現れるようになってきた。このままゾンデが瘴気の渦に呑まれたら、次はドディア帝国だ」

 ルァルは静かに頷いた。

「ゾンデやドディアだけじゃない、世界が危機に瀕するだろう。この世界が、魔界になってしまう。一刻も早く、止めなければならない。ゾンデの魔法使い総出で結界を維持しようと奮闘したが、魔力枯渇で昏倒する者が続出している。もう我らでは抑えきれない」

 ナティは深く頭をさげる。

「貴殿に多大な負担を強いることを理解している。それでもどうか、ゾンデの民のために、ドディアの民のために、世界の民のために、瘴気の浄化を伏して願う」

 膝をつき、こうべを垂れるナティに

「はぅあ──! ちっちゃいナティさまの生スチル尊い──!」

 一瞬はあはあしたアリアスが、しゃっと慈愛の主人公に戻った。

「僕にできることがあるなら、尽力します。でもあの、光魔法そんなに使えないので、あんまり期待しないでくださると……」

 語尾の消えるアリアスに、跳びあがったナティは頷いた。

「こんなに可愛い光魔法使いさまが来てくれたら、死にそうな魔法使いたちが皆復活できると思う! 何にもできなくても、光魔法使いさまがいらっしゃるというだけで希望なんだ。来てくれるだけでいい。ゾンデにできる報酬なら約束する」

 深々頭をさげるナティに、顔をあげてくださいとアリアスが微笑んで、ナティの周りの桜吹雪がすんごいことになってる。
 ナティが見えないよ!

「リトは光魔法が使えるのか」

 ルァルの声に、ぴょこんとリトが跳びあがる。
 ナティがぐりんと振り向いて、ジゼの瞳が凍りついた。

「リトはまだ5歳です。アリアス殿もお若いが、その半分も生きていない。ちいさな身体に魔力行使は甚大な負荷をかけるかと。先日吐血が止まったばかりです。リトの後見人として認可できません」

 氷の声に、ルァルもナティも頷いた。

「理解した」

「吐血──! だ、大丈夫だったの!?」

 ナティが泣きそうな顔をしてる。

 いい人だ!




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