153 / 209
すきるあっぷ
しおりを挟むルァルに丁寧にお辞儀したリトは、さっそく王宮の従僕の皆さんが運んできてくれたワゴンから茶筒と花を選び取る。
「おしゅきな、かおり、あり、ましあ?」
5つの茶筒と3つの花を並べたリトに、くねくねしていたナティが止まった。
高い鼻がくんくん茶筒を嗅いで、褐色の長い指がお茶を2つと花をひとつ選ぶ。
「これとこれとこれ!」
「おちゃ、どちのほう、おしゅき?」
かしげる首といっしょに、しっぽも耳も、ほわほわ揺れる。
「はぅあ──! なんだこのかわいー生き物はぁあぁアァア!」
真っ赤な頬で悶えるナティに、ジゼの周りに凍気が滲んでる。
直立不動のアオの目だけが、細く切れあがってる。
こわこわでし。
お茶ではやく一息いれたいみたいなので、皆のすきなお茶や香りを聞きたい気持ちを押しこめたリトのちいさな指が、流れるようにお茶を淹れてゆく。
セバの特訓のおかげで3つのお茶を同時に淹れられるようになったリトは、レォン、ナティ、ルァルのお茶を最初に淹れた。
「うまいのだ!」
「わー、すごい、いー匂い……さっき嗅いだのに、なんか全然違う! こんな可愛くてお茶も上手に淹れられるとか最高かよ!」
「リトの茶でせっかく落ち着いたのを隣が叩き壊してくるんだが」
眉をしかめるルァルも、たぶん褒めてくれてる。たぶん!
ノァ、ジゼ、カィト、と淹れてアリアスだけ最後はかわいそうなので、必殺技、お茶同時に4つ淹れに挑戦してみました!
『あばばばば!』ってならないように、セバと一緒に特訓したんだよ。
お茶をいっぱい飲んでくれたテデとジゼのおなかがたぷたぷしてたらしい。
かわいい。
「わー、リトすごい!」
目を輝かせたアリアスが拍手してくれる。
熱い頬で笑ったリトは、ひとりひとりの気持ちがやすらかに落ちつくように祈りながら、しゃばばば! お茶を淹れた。
獣人だから身体能力は高いみたいだよ。よかった!
「どぞでし」
「いや、個人のこのみにあわせたお茶を4つも同時に淹れられるとかおかしくない?」
突っ込むノァにカィトもこくこくしてる。
「うまい」
口をつけたジゼが笑ってくれる。
「うひゃあ! ふつう4つも一緒に淹れたら、まずくなるよねえ? なにこの飲んだことがないほど芳しいお茶」
目をまんまるにしたノァが首をかしげてる。
「おちつく」
口にふくんだカィトがうむうむしてる。
「わあ、香りも味もすごいよ、リト!」
アリアスが褒めてくれた! ありがとう!
きゃわきゃわしている皆に、ルァルが吐息する。
「……意図に反してあまり落ち着かなかったな」
残念そうなルァルに、リトはあわあわこうべを垂れた。
「ち、ちから、ぶしょく、ごめなしあ」
「リトは素晴らしい茶を淹れた! 何うざいこと言ってんですかこの次期帝王!」
激おこジゼの周りに氷柱ができてる。
「ジゼにうざいって言われた──!」
ルァルが泣いてる。本気だ!
「う、うむ、ジゼの前で、不用意な発言は慎むがよい」
レォンがうむうむしてる。
「なんかこの国、楽しいなあ。めちゃくちゃかわいー子いるし。俺、こっちに引っ越したい」
うっとりするナティを
「全力で拒否する」
ルァルが両断してる。
980
お気に入りに追加
3,867
あなたにおすすめの小説
【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は?
最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか?
人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。
よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。
ハッピーエンド確定
※は性的描写あり
【完結】2021/10/31
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ
2021/10/03 エブリスタ、BLカテゴリー 1位

前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい
夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが……
◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

非力な守護騎士は幻想料理で聖獣様をお支えします
muku
BL
聖なる山に住む聖獣のもとへ守護騎士として送られた、伯爵令息イリス。
非力で成人しているのに子供にしか見えないイリスは、前世の記憶と山の幻想的な食材を使い、食事を拒む聖獣セフィドリーフに料理を作ることに。
両親に疎まれて居場所がないながらも、健気に生きるイリスにセフィドリーフは心動かされ始めていた。
そして人間嫌いのセフィドリーフには隠された過去があることに、イリスは気づいていく。
非力な青年×人間嫌いの人外の、料理と癒しの物語。
※全年齢向け作品です。
【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので)
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる