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すきるあっぷ

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 ルァルに丁寧にお辞儀したリトは、さっそく王宮の従僕の皆さんが運んできてくれたワゴンから茶筒と花を選び取る。

「おしゅきな、かおり、あり、ましあ?」

 5つの茶筒と3つの花を並べたリトに、くねくねしていたナティが止まった。
 高い鼻がくんくん茶筒を嗅いで、褐色の長い指がお茶を2つと花をひとつ選ぶ。

「これとこれとこれ!」

「おちゃ、どちのほう、おしゅき?」

 かしげる首といっしょに、しっぽも耳も、ほわほわ揺れる。

「はぅあ──! なんだこのかわいー生き物はぁあぁアァア!」

 真っ赤な頬で悶えるナティに、ジゼの周りに凍気が滲んでる。
 直立不動のアオの目だけが、細く切れあがってる。
 こわこわでし。


 お茶ではやく一息いれたいみたいなので、皆のすきなお茶や香りを聞きたい気持ちを押しこめたリトのちいさな指が、流れるようにお茶を淹れてゆく。

 セバの特訓のおかげで3つのお茶を同時に淹れられるようになったリトは、レォン、ナティ、ルァルのお茶を最初に淹れた。

「うまいのだ!」
「わー、すごい、いー匂い……さっき嗅いだのに、なんか全然違う! こんな可愛くてお茶も上手に淹れられるとか最高かよ!」
「リトの茶でせっかく落ち着いたのを隣が叩き壊してくるんだが」

 眉をしかめるルァルも、たぶん褒めてくれてる。たぶん!
 ノァ、ジゼ、カィト、と淹れてアリアスだけ最後はかわいそうなので、必殺技、お茶同時に4つ淹れに挑戦してみました!

『あばばばば!』ってならないように、セバと一緒に特訓したんだよ。
 お茶をいっぱい飲んでくれたテデとジゼのおなかがたぷたぷしてたらしい。
 かわいい。

「わー、リトすごい!」

 目を輝かせたアリアスが拍手してくれる。
 熱い頬で笑ったリトは、ひとりひとりの気持ちがやすらかに落ちつくように祈りながら、しゃばばば! お茶を淹れた。
 獣人だから身体能力は高いみたいだよ。よかった!

「どぞでし」

「いや、個人のこのみにあわせたお茶を4つも同時に淹れられるとかおかしくない?」

 突っ込むノァにカィトもこくこくしてる。

「うまい」

 口をつけたジゼが笑ってくれる。

「うひゃあ! ふつう4つも一緒に淹れたら、まずくなるよねえ? なにこの飲んだことがないほど芳しいお茶」

 目をまんまるにしたノァが首をかしげてる。

「おちつく」

 口にふくんだカィトがうむうむしてる。

「わあ、香りも味もすごいよ、リト!」

 アリアスが褒めてくれた! ありがとう!

 きゃわきゃわしている皆に、ルァルが吐息する。

「……意図に反してあまり落ち着かなかったな」

 残念そうなルァルに、リトはあわあわこうべを垂れた。


「ち、ちから、ぶしょく、ごめなしあ」

「リトは素晴らしい茶を淹れた! 何うざいこと言ってんですかこの次期帝王!」

 激おこジゼの周りに氷柱ができてる。


「ジゼにうざいって言われた──!」

 ルァルが泣いてる。本気だ!


「う、うむ、ジゼの前で、不用意な発言は慎むがよい」

 レォンがうむうむしてる。


「なんかこの国、楽しいなあ。めちゃくちゃかわいー子いるし。俺、こっちに引っ越したい」

 うっとりするナティを

「全力で拒否する」

 ルァルが両断してる。





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