153 / 168
すきるあっぷ
しおりを挟むルァルに丁寧にお辞儀したリトは、さっそく王宮の従僕の皆さんが運んできてくれたワゴンから茶筒と花を選び取る。
「おしゅきな、かおり、あり、ましあ?」
5つの茶筒と3つの花を並べたリトに、くねくねしていたナティが止まった。
高い鼻がくんくん茶筒を嗅いで、褐色の長い指がお茶を2つと花をひとつ選ぶ。
「これとこれとこれ!」
「おちゃ、どちのほう、おしゅき?」
かしげる首といっしょに、しっぽも耳も、ほわほわ揺れる。
「はぅあ──! なんだこのかわいー生き物はぁあぁアァア!」
真っ赤な頬で悶えるナティに、ジゼの周りに凍気が滲んでる。
直立不動のアオの目だけが、細く切れあがってる。
こわこわでし。
お茶ではやく一息いれたいみたいなので、皆のすきなお茶や香りを聞きたい気持ちを押しこめたリトのちいさな指が、流れるようにお茶を淹れてゆく。
セバの特訓のおかげで3つのお茶を同時に淹れられるようになったリトは、レォン、ナティ、ルァルのお茶を最初に淹れた。
「うまいのだ!」
「わー、すごい、いー匂い……さっき嗅いだのに、なんか全然違う! こんな可愛くてお茶も上手に淹れられるとか最高かよ!」
「リトの茶でせっかく落ち着いたのを隣が叩き壊してくるんだが」
眉をしかめるルァルも、たぶん褒めてくれてる。たぶん!
ノァ、ジゼ、カィト、と淹れてアリアスだけ最後はかわいそうなので、必殺技、お茶同時に4つ淹れに挑戦してみました!
『あばばばば!』ってならないように、セバと一緒に特訓したんだよ。
お茶をいっぱい飲んでくれたテデとジゼのおなかがたぷたぷしてたらしい。
かわいい。
「わー、リトすごい!」
目を輝かせたアリアスが拍手してくれる。
熱い頬で笑ったリトは、ひとりひとりの気持ちがやすらかに落ちつくように祈りながら、しゃばばば! お茶を淹れた。
獣人だから身体能力は高いみたいだよ。よかった!
「どぞでし」
「いや、個人のこのみにあわせたお茶を4つも同時に淹れられるとかおかしくない?」
突っ込むノァにカィトもこくこくしてる。
「うまい」
口をつけたジゼが笑ってくれる。
「うひゃあ! ふつう4つも一緒に淹れたら、まずくなるよねえ? なにこの飲んだことがないほど芳しいお茶」
目をまんまるにしたノァが首をかしげてる。
「おちつく」
口にふくんだカィトがうむうむしてる。
「わあ、香りも味もすごいよ、リト!」
アリアスが褒めてくれた! ありがとう!
きゃわきゃわしている皆に、ルァルが吐息する。
「……意図に反してあまり落ち着かなかったな」
残念そうなルァルに、リトはあわあわこうべを垂れた。
「ち、ちから、ぶしょく、ごめなしあ」
「リトは素晴らしい茶を淹れた! 何うざいこと言ってんですかこの次期帝王!」
激おこジゼの周りに氷柱ができてる。
「ジゼにうざいって言われた──!」
ルァルが泣いてる。本気だ!
「う、うむ、ジゼの前で、不用意な発言は慎むがよい」
レォンがうむうむしてる。
「なんかこの国、楽しいなあ。めちゃくちゃかわいー子いるし。俺、こっちに引っ越したい」
うっとりするナティを
「全力で拒否する」
ルァルが両断してる。
575
お気に入りに追加
3,214
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?
み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました!
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話
かし子
BL
養子として迎えられた家に弟が生まれた事により孤独になった僕。18歳を迎える誕生日の夜、絶望のまま外へ飛び出し、トラックに轢かれて死んだ...はずが、目が覚めると赤ん坊になっていた?
転生先には優しい母と優しい父。そして...
おや?何やらこちらを見つめる赤目の少年が、
え!?兄様!?あれ僕の兄様ですか!?
優しい!綺麗!仲良くなりたいです!!!!
▼▼▼▼
『アステル、おはよう。今日も可愛いな。』
ん?
仲良くなるはずが、それ以上な気が...。
...まあ兄様が嬉しそうだからいいか!
またBLとは名ばかりのほのぼの兄弟イチャラブ物語です。
異世界に召喚されて失明したけど幸せです。
るて
BL
僕はシノ。
なんでか異世界に召喚されたみたいです!
でも、声は聴こえるのに目の前が真っ暗なんだろう
あ、失明したらしいっす
うん。まー、別にいーや。
なんかチヤホヤしてもらえて嬉しい!
あと、めっちゃ耳が良くなってたよ( ˘꒳˘)
目が見えなくても僕は戦えます(`✧ω✧´)
転移したら獣人たちに溺愛されました。
なの
BL
本編第一章完結、第二章へと物語は突入いたします。これからも応援よろしくお願いいたします。
気がついたら僕は知らない場所にいた。
両親を亡くし、引き取られた家では虐められていた1人の少年ノアが転移させられたのは、もふもふの耳としっぽがある人型獣人の世界。
この世界は毎日が楽しかった。うさぎ族のお友達もできた。狼獣人の王子様は僕よりも大きくて抱きしめてくれる大きな手はとっても温かくて幸せだ。
可哀想な境遇だったノアがカイルの運命の子として転移され、その仲間たちと溺愛するカイルの甘々ぶりの物語。
知り合った当初は7歳のノアと24歳のカイルの17歳差カップルです。
年齢的なこともあるので、当分R18はない予定です。
初めて書いた異世界の世界です。ノロノロ更新ですが楽しんで読んでいただけるように頑張ります。みなさま応援よろしくお願いいたします。
表紙は@Urenattoさんが描いてくれました。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
ひとりぼっち獣人が最強貴族に拾われる話
かし子
BL
貴族が絶対的な力を持つ世界で、平民以下の「獣人」として生きていた子。友達は路地裏で拾った虎のぬいぐるみだけ。人に見つかればすぐに殺されてしまうから日々隠れながら生きる獣人はある夜、貴族に拾われる。
「やっと見つけた。」
サクッと読める王道物語です。
(今のところBL未満)
よければぜひ!
【12/9まで毎日更新】→12/10まで延長
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる