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いきてるのでし
しおりを挟むきらきらの桜の瞳のアリアスに見あげられたナティの頬が紅くなる。
きっとリトとアリアスにだけ見えるのだろう、桜の花びらが舞い降りる。
「おぉう、こんなにかわいい子に名を知られているとは、俺も捨てたもんじゃないな!」
うれしそうに破顔するナティに、ルァルは吐息する。
「ふつうなら不法侵入で斬首だぞ。解ってるのか、ゾンデ王国王太子ナティヒ・メーア・ゾンデ」
フルネームで呼ばれたナティが跳びあがった。
「ぎゃあ! ごめんごめんごめん! 悪かったってば。だって、話の分からない人たちだったら、光魔法が使える子をさらってくしかないからさ、最後の手段として隠匿してたんだけど、バレるとこっちの立場がまずくなるから、焦ってつい攻撃しちゃったみたいだよ。ごめんなさい!」
ルァルの声が低くなる。
「ごめんで済んだら司法も処罰も要らぬ」
切れあがる陽の瞳に、ナティは凛々しいかんばせで愛くるしく唇を突きだした。
「済ませてよー。ちゅうしてあげるから!」
「いらねぇえぇエエエ──!」
ルァルに絶叫されたナティが泣いてる。
疲れ果てたようにルァルが吐息する。
「斬首してもいいんだが、隣国と戦になると血が流れる。それは望むところではない。──のでお茶だ。リト、茶を淹れてくれ」
ぴょこんとリトが跳びあがる。
「あい!」
「うわ、動いた!」
目を剥くナティに、リトは首を傾げる。
ふわふわのしっぽが、ほわほわ揺れた。
「い、生きて、る……?」
ジゼの瞳が凍りついて、あわあわしたリトはこくこく頷いた。
「僕、獣人、でし。ゾンデおこく、めずらし?」
「生きてる! 動いてる! 喋る! ぎゃあぁああ──!」
叫ぶナティが心配になったリトの隣で氷魔法が発動するよりはやく、真っ赤なナティが身をよじる。
「かぁわぁぁいぃイイイ──!」
ジゼの瞳が凍えてる。
ちょっと熱い頬で、リトは頭をさげる。
「あ、ありあと、ござまし」
垂れたこうべといっしょに、耳もしっぽも、ふあふあ揺れる。
ナティの目が、♡だ。
「かぁあわぁあいぃいいィイ──!」
両手で真っ赤な両頬を覆って、くねくねしてる。
「……アリアスを濃くしたみたいな性格か……?」
ぽつりと呟くカィトにノァが首を振る。
「アリアスは礼節を知る、かわいい子だよ。あれと一緒にするな」
あれ呼ばわりされた隣国の王太子は、とまどうリトの耳としっぽがぷるぷるしてるのに、くねくねが止まらない。
「ぼ、僕もいるのだぞ!」
レォンが胸を張ると、ナティの緑の瞳が限界まで見開かれて、とろけた。
「うきゃぁああぁあ! か──わ──い──い──!」
くねくねが二倍速になって、レォンのお背なのぱたぱたも二倍速だ。
おそろいだ。
かわいい。
「ああもういいから席につけ! リト、茶を淹れてやってくれ。何でもいい。……違うな、心が落ち着くものを頼む」
いつもきらきらなルァルが、ご心痛だ!
癒すお茶を淹れなくては!
ぴょこんと跳びあがったリトは、初夏の風にふわふわ揺れる耳としっぽといっしょに、うやうやしく膝を折る。
「かしこま、ましあ!」
皆が真っ赤な頬で、胸を押さえてる。
来たばかりだろうナティまで、さっそく帝都で大流行の癖を会得してるよ!
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