上 下
152 / 189

出た

しおりを挟む



「アリアスしゃま?」

 反対側に首と一緒にしっぽを傾げたリトを

「かわい──!」

 抱っこしてくれたアリアスが、頭をなでなでしながら教えてくれる。

「ゲームを知らないリトに説明するとね、ナティルートは隣国で魔物が徘徊するようになって、困った王太子がドディア帝国に助力を嘆願に来て、光魔法が使える僕と仲良くなって、ゾンデ王国に一緒に行って魔物を浄化するんだ。僕が玉の輿に乗れるとハッピーエンドなんだよ。闇龍とのバトルほどじゃないけど、光魔法使えないと厳しいね。ちょこっと危険なイベントなんだよ」

「な、なるほろ!」

 丁寧に教えてくれるアリアスがやさしい!

「……いや、今のアリアスの説明で理解できるリトがおかしいだろう……!」

 ルァルが仰け反ってる。

 聞こえてた!
 そして殿がなくなるくらい、アリアスと仲良くなってる!
 いつの間に!

「え、えとえと、な、なんと、なく?」

 あわあわするリトの言葉に、ジゼがうむうむ頷いた。

「リトは大変優秀なのです、ルァル殿下」

 アリアスになでなでされたのをはらうように、ジゼがなでなでしてくれる。

「アリアスは博識だね、先日王太子になられたばかりのナティヒ殿下のご尊名まで知っているとは」

 ノァが目を剥いてる。

「……諜報員並みの速度じゃないのか……?」

 カィトの目が不審になってる。
 ジゼの瞳も、アリアスに向いた。

「いえあの、な、なんとなーく、みたいな?」

 てへ♡

 笑ってごまかすアリアスがかわいい!
 が、相変わらず、ごまかし方が雑なんですけど!
 ──って一緒だった!

「過日も予知のようなことを言っていたし、光魔法の特性なのかもしれません」

 ジゼしゃま、フォローかんぺき!

「なるほど」

 あっさり頷く皆の、ジゼへの信頼度がMaxだ!

「……ゾンデで魔物が徘徊しているとは聞いていない。が、箝口令が敷かれているなら──こいつらの狙いは俺ではなく、アリアスか」

 ルァルが呟いた瞬間、アオが跳んだ。

 何もない空間に向かって繰りだされた蹴りに、虚空が揺らぐ。

「ぎゃ──! 待った待った待った! な、何にもしないから!」

 両手を挙げて現れたのは、燃える炎の髪が褐色の肌によく映える、ひと目で攻略対象と理解できる次元の、緑の瞳の少年だった。
 皆が話してるのと同じ大陸共通語だけど、異国の薫るアクセントが響く。

「うひゃあ」

 ノァが仰け反ってる。
 カィトがぽかんとしてる。
 ジゼは凛々しい眉をしかめた。

 人間のごたごたに首を突っ込むと大変なことになるとジェディス邸でセバから説明を受けたのだろう、見守ってくれていたレォンが辺りを見回して、頷いた。

「もうだいじょうぶだ」
「ありがとうございます、レォンさま」

 うやうやしくこうべを垂れたルァルは、虚空から現れた少年を横目で見遣る。
 形のよい唇から吐息がこぼれた。

「……我らが国防は、ザルだな。隣国の王太子を王宮まで通すとは──」

「きゃ──! 生ナティさま、ちっちゃい! 尊い──! うそ、なんで隠しキャラが──!」

 真っ赤なアリアスが、もだもだしてる。






しおりを挟む
感想 223

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

処理中です...