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お茶会です
しおりを挟む「若、到着致しやした」
うやうやしく扉を開けてくれる御者ソゾに
「ありあと、ござまし」
丁寧に頭をさげたリトが、しゃっと馬車を降りる。
ちょっと足は引きずるけど、気持ちは、しゃっと!
気合の入ったリトの耳としっぽがしゃんとしてるのに、リトに続いて馬車を降りたセバが、赤い頬でぷるぷるしてる。かわいい。
左手を胸に膝を折ったリトは、うやうやしくレォンに右手を差しだした。
「レォンしゃま、どぞ!」
「う、うむ!」
前回の心無い言葉を思い出したのだろう、硬くなるかんばせが
「おお! レォンさま!」
「いらっしゃいませ、レォンさま!」
「ドディア帝宮へ、ようこそ!」
皆の歓呼に、ふうわりほどける。
「みな、レォンしゃま、だいしゅき、でし!」
微笑んでレォンへと差しだしたリトの手を、赤い頬でレォンが握る。
「ありがとう、リト」
馬車を降りたレォンのお背なでちっちゃな翼がぱたぱたして、ジゼの頬がちょっぴりふくれてる。
「……俺は?」
すねすねジゼしゃま、世界の至宝でし──!
「ジゼしゃま、どぞ!」
熱い頬でもだもだしたリトが、しゃっとジゼに手を差しだした。
「ありがと、リト」
ほんのり朱い耳で微笑んだジゼが、リトの手をとってくれる。
白い衣を風になびかせたアオが、リトとジゼを守るように馬車の傍に控えた。
流れるような所作には、無用の動きがひとつもなかった。
群青の瞳はジゼとリトを映すとやわらかに細められ、辺りを警戒するときには切れあがる。
その鋭さと裏腹な長めの群青の髪と、ふわふわの青い耳とふさふさの青いしっぽが、凛々しいかんばせを、引き締まった長身の身体をあまやかに彩った。
獣人なら、アオの強さは、ひと目でわかる。
でも人間にも、伝わるものがあるのかもしれない。
『獣人』
馬車寄せに渦巻いた蔑みと恐怖が、衛士のお手本のような振る舞いに、清冽と愛らしさを併せ持つアオにほどけてく。
侮られるばかりだったリトと、場の空気さえ変えてしまうアオの違いは、体格もあるだろうけれど、何よりその強さなのかもしれなかった。
さわやかな初夏の風が抜ける外でのお茶が大すきらしいルァルが招いてくれたのは、花の庭だ。
獣人であるリトが気兼ねなく訪なえるように、との配慮なのかもしれない。
王宮の門は通してもらえるが、王宮には入る許可のない衛士や従僕も、庭園は散策することができる。
あざやかな青の花々が、よく晴れた空の蒼を映したようにきらめいた。
「おお、レォンさま、ようこそいらっしゃいました!」
迎えに出たルァルの陽の瞳が、輝いてる。
「う、うむ! お招き、ありがとうなのだ」
ちっちゃな胸を張って、お背なの翼をぱたぱたさせるレォンに、皆が真っ赤な頬で胸を押さえてる。
「最後になりましたね、ジゼ・ディオ・ジェディス、御前に」
膝を折るジゼと一緒に、リトとアオもさらに深く膝を折る。
「ほう」
ジゼを護る衛士としてこうべを垂れたアオの姿に、ルァルが目を瞠る。
先に着いていたカィトとノァも息をのんだ音が微かに聞こえた。
ぴょこんと跳びあがったアリアスの目が、きらきらしてる。
────────────
はじめましての方も、ずっと見てくださる方も、憧れのお気に入り3000ありがとうございます!
すぐ3000じゃなくなるかもしれないですが(笑)御礼だけでも!(笑)
BL大賞に参加させていただいたのですが、とても貴重な一票を投票してくださった方がいらっしゃったら、ほんとうにほんとうにありがとうございます!
たくさんの素晴らしいお話があるなか、この1年に読んだお話のうちで応援したい3つのお話の1つに選んでくださったことが、涙がでるくらいうれしいです。
心から、ありがとうございます!
リトとジゼのお話を延々続けたい気持ちを押しこめて(笑)完結に向かってがんばろうと思います。
これから書くのであと何字くらいになるか解らないのですが(笑)もしよかったら、しあわせになるに決まっている(笑)ふたりのこれからを、楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
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