【完結】もふもふ獣人転生

  *  

文字の大きさ
上 下
148 / 207

お茶会です

しおりを挟む



「若、到着致しやした」

 うやうやしく扉を開けてくれる御者ソゾに

「ありあと、ござまし」

 丁寧に頭をさげたリトが、しゃっと馬車を降りる。
 ちょっと足は引きずるけど、気持ちは、しゃっと!

 気合の入ったリトの耳としっぽがしゃんとしてるのに、リトに続いて馬車を降りたセバが、赤い頬でぷるぷるしてる。かわいい。

 左手を胸に膝を折ったリトは、うやうやしくレォンに右手を差しだした。

「レォンしゃま、どぞ!」

「う、うむ!」

 前回の心無い言葉を思い出したのだろう、硬くなるかんばせが

「おお! レォンさま!」
「いらっしゃいませ、レォンさま!」
「ドディア帝宮へ、ようこそ!」

 皆の歓呼に、ふうわりほどける。

「みな、レォンしゃま、だいしゅき、でし!」

 微笑んでレォンへと差しだしたリトの手を、赤い頬でレォンが握る。

「ありがとう、リト」

 馬車を降りたレォンのお背なでちっちゃな翼がぱたぱたして、ジゼの頬がちょっぴりふくれてる。

「……俺は?」

 すねすねジゼしゃま、世界の至宝でし──!

「ジゼしゃま、どぞ!」

 熱い頬でもだもだしたリトが、しゃっとジゼに手を差しだした。

「ありがと、リト」

 ほんのり朱い耳で微笑んだジゼが、リトの手をとってくれる。

 白い衣を風になびかせたアオが、リトとジゼを守るように馬車の傍に控えた。
 流れるような所作には、無用の動きがひとつもなかった。

 群青の瞳はジゼとリトを映すとやわらかに細められ、辺りを警戒するときには切れあがる。
 その鋭さと裏腹な長めの群青の髪と、ふわふわの青い耳とふさふさの青いしっぽが、凛々しいかんばせを、引き締まった長身の身体をあまやかに彩った。

 獣人なら、アオの強さは、ひと目でわかる。
 でも人間にも、伝わるものがあるのかもしれない。

『獣人』

 馬車寄せに渦巻いた蔑みと恐怖が、衛士のお手本のような振る舞いに、清冽と愛らしさを併せ持つアオにほどけてく。

 侮られるばかりだったリトと、場の空気さえ変えてしまうアオの違いは、体格もあるだろうけれど、何よりその強さなのかもしれなかった。



 さわやかな初夏の風が抜ける外でのお茶が大すきらしいルァルが招いてくれたのは、花の庭だ。
 獣人であるリトが気兼ねなく訪なえるように、との配慮なのかもしれない。

 王宮の門は通してもらえるが、王宮には入る許可のない衛士や従僕も、庭園は散策することができる。
 あざやかな青の花々が、よく晴れた空の蒼を映したようにきらめいた。

「おお、レォンさま、ようこそいらっしゃいました!」

 迎えに出たルァルの陽の瞳が、輝いてる。

「う、うむ! お招き、ありがとうなのだ」

 ちっちゃな胸を張って、お背なの翼をぱたぱたさせるレォンに、皆が真っ赤な頬で胸を押さえてる。

「最後になりましたね、ジゼ・ディオ・ジェディス、御前に」

 膝を折るジゼと一緒に、リトとアオもさらに深く膝を折る。

「ほう」

 ジゼを護る衛士としてこうべを垂れたアオの姿に、ルァルが目を瞠る。

 先に着いていたカィトとノァも息をのんだ音が微かに聞こえた。

 ぴょこんと跳びあがったアリアスの目が、きらきらしてる。





────────────

 はじめましての方も、ずっと見てくださる方も、憧れのお気に入り3000ありがとうございます!

 すぐ3000じゃなくなるかもしれないですが(笑)御礼だけでも!(笑)

 BL大賞に参加させていただいたのですが、とても貴重な一票を投票してくださった方がいらっしゃったら、ほんとうにほんとうにありがとうございます!

 たくさんの素晴らしいお話があるなか、この1年に読んだお話のうちで応援したい3つのお話の1つに選んでくださったことが、涙がでるくらいうれしいです。

 心から、ありがとうございます!

 リトとジゼのお話を延々続けたい気持ちを押しこめて(笑)完結に向かってがんばろうと思います。
 これから書くのであと何字くらいになるか解らないのですが(笑)もしよかったら、しあわせになるに決まっている(笑)ふたりのこれからを、楽しんでくださったら、とてもうれしいです。


しおりを挟む
感想 255

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。

みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。 男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。 メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。 奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。 pixivでは既に最終回まで投稿しています。

【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は? 最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか? 人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。 よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。 ハッピーエンド確定 ※は性的描写あり 【完結】2021/10/31 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ 2021/10/03  エブリスタ、BLカテゴリー 1位

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

そばにいられるだけで十分だから僕の気持ちに気付かないでいて

千環
BL
大学生の先輩×後輩。両片想い。 本編完結済みで、番外編をのんびり更新します。

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

処理中です...