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年上なのです
しおりを挟む「け、けっとー、だめでし!」
ふたりの剣呑な空気に跳びあがるリトに、ジゼもアオも眉をさげた。
「……リトがいうなら」
「しない」
こくりと頷いてくれるふたりが尊い──!
が、バチバチしてる……!
あわあわしたリトは何とか、なごやかな空気にしようと口を開く。
「あ、のあの、アオ、犬、の獣人?」
もふもふしてる立派なしっぽも、耳も、犬っぽいよ!
わくわく聞いたリトに、アオの目が更に細くなった。
ぱたりと青いしっぽが揺れる。
ちっちゃな獣人の子どもたちが、カタカタしてる。
………………激おこだ。
「俺は、青狼の獣人だ。犬ではない──!」
地雷を踏み抜きました……!
ありがとうございました……!
「アオ、僕に、おこ、いぃ、けど、ちちゃい、皆、こわ、がる。だめ、でし!」
むんと腰に手を当てて仁王立ちするリトのしっぽが、ぴんと立つ。
5歳なので!
年上なので!
がんばて、説得するのでし!
ほわほわの耳もぴんと立ててみた!
ジゼもセバもテデもアオも、赤い頬で胸を押さえてる。
「アオ?」
聞いてゆ?
はっとしたように顔をあげたアオは、赤いままの頬でぽそぽそ呟いだ。
「……ご、ごめん」
「皆、に!」
おこですよ、を表すように、腰に両手の拳を当てて、胸を張る。
Akimboって言うんだよ。
辞書をめくったら、最初のページに、おこなエプロンおかあさんの絵入りで載ってたから憶えた!
……そんなのを覚えていて、なぜジゼルートを憶えていないかな、僕の脳みそ!
「ぐ──!」
ジゼもセバもテデもアオも赤くなって胸を押さえたけど、わたわた立ち直ったアオが、ちっちゃな獣人の皆に向かって頭を下げる。
「怖がらせて、ごめん」
ふるふる、ちっちゃな皆が首を振る。
謝られたことにびっくりしたような皆に、リトは告げる。
「獣人、世界、つぉい、えらぃ。でも、ジゼしゃま、レォンしゃま、みたぃ、つおぃ、やさし、至高、でし! アオ、なれゆ!」
ジゼとレォンとアオの顔が赤くなって、レォンの翼がぱたぱたしてる。
リトと目をあわせるように屈んだアオは、微笑んだ。
「がんばる」
「えらぃ、でし!」
ちっちゃな手で、ふわふわの群青の髪と、ほわほわの耳をなでなでしたら、群青の瞳が蕩けて笑った。
もふもふの苑で皆を抱っこするリトの隣で、皆を観察していたテデが眉を顰める。
「皆、応急処置はされてるけど、治癒魔法、使ってないね。これだと治るのに随分かかる。魔法が怖いのかな? 合わないと思ってる? 人間がだめなのかな」
リトは皆のちっちゃな顔を覗き込む。
「治癒まほ、こわこわ? 人間、こわこわ?」
ちっちゃなもふもふの皆が、顔を見合わせた。
「……にんげん、こぁい」
「いたぃ、いたい、すりゅ」
「僕ら、ぶつの」
「ぴ──!」
ボフボフになったしっぽと耳で泣きだした獣人の子どもたちを、あわあわリトが抱きしめる。
「もぅ、殴りゅ、人間、いなぃ、いない、だいじょぶ、だぃじょぶ」
やさしいリトの声と、リトの抱っこに、ボフボフになっていた皆のしっぽが、ほわほわに戻ってゆく。
「……なんだか、すべてが尊いですね……」
銀縁眼鏡の向こうで、セバの目が遠くなってる。
隣でジゼがうむうむしてる。
レォンのほっぺも、ぴかぴかだ。
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