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生きてる
しおりを挟む息を吸ったリトは、声を張る。
「ジゼしゃま、僕、たすけ、くれた。ジゼしゃま、いなぃ、僕、死んだ。獣人、皆、ここ呼ぶ、ご飯、くれゆ、も、人間。僕ら、生かし、くれゆ、も、人間」
ぎゅ、とちっちゃな拳を握る。
「差別、くるし、憎しみ、さみし。僕ら、つぉい。人間、いしょ、すてき、世界、つくれゆ!」
ぎゅう、と唇を噛んだアオが、目を伏せる。
「……きれいごとだよ」
くしゃりとリトの瞳が歪む前に、アオの腕がリトを抱きしめた。
「でも俺を、ちっちゃな獣人の子どもたちを庇って、何度も鞭で打たれて、それでも笑ってくれたリトの言うことなら、信じてみたいと思う」
アオの大きなしっぽが、ぽふりと揺れる。
それが合図だったかのように、孤児院の扉が大きく開かれた。
「兄ちゃ──!」
「にぃちゃ──!」
「にぃに──!」
ちっちゃな獣人たちがリト目掛けて駆けてくる。
皆、ふわふわのもふもふになっている。
汚れて縮れてちっちゃくなっていた姿しか知らないリトには、誰が誰なのか、一瞬解らなくなる。
でも、なつかしい、皆の匂いで
鞭のかげで、こっそり繋いだ手のぬくもりを
皆でくっついて眠る、あたたかさを
どんなに辛く、苦しく、死に瀕した時でさえ
目があったら、微笑んだことを
まるで今のように、思い出した。
「う、ぅ、ぁ……!」
皆を抱きしめるリトの肩が、嗚咽に揺れる。
つらかったね
くるしかったね
どれだけ泣いて
どれだけ嘆き
痛む身体で
ボロボロの心で
皆、懸命に、生きた
「……生きて……くれ、て……あり、ぁと……」
あふれる涙で、抱きしめる。
「兄ちゃ──!」
「にぃに……!」
汚れてない
臭くない
縮れてない
ふわふわ、もふもふの皆を、涙の笑顔で、抱きしめた。
ちっちゃなふわふわの耳がぴこぴこして、もふもふのしっぽが、ゆさゆさ揺れる。
孤児院のなかは視界いっぱいが、もふもふ、ふあふあだよ!
リトをかわりばんごに抱きしめる皆のしっぽが、ぶんぶんだ。
くすぐったくて、あったかくて、ふかふかで、笑みが、あふれる。
「もふもふの楽園なんですけど──!」
真っ赤なテデが、もだもだしてる。
「……こ、れは……攻撃力が限界を突破していますね……」
セバの眦も赤い。
「わ──!」
うれしそうにレォンの翼がぱたぱたしてる。
皆楽しそうなのに、ジゼの肩だけがしょんぼりしてた。
「……こうなると思っていたから、来たくなかったなんて……狭量すぎるな」
落ちるジゼの肩に、飛びあがったリトは、ぶんぶん首を振った。
「ジゼしゃま、いつも、至高、でし!」
ちっちゃな拳を握るリトに、テデもうむうむしてる。
ぽふりと青い大きなしっぽが揺れた。
威嚇の仕草に、わちゃわちゃしてた獣人の子どもたちが一斉にびくっとなって固まった。
「かわいー♡」
うっとりして、青いしっぽを触ろうとするテデを、リトはあわあわ止める。
「アオ、おこでし。しっぽ、さわる、決闘、でし!」
「あばばばば!」
真っ青になったテデが、あわあわ手を引っ込めた。
「さわろうか?」
ジゼの氷の瞳が細くなる。
「望むところだ」
アオの群青の瞳が切れあがる。
た、大変──!
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