【完結】もふもふ獣人転生

ちっちゃ……

　皆、平均寿命５歳なのにどうやって繁殖してるんだって不思議だったよね？ 
　獣人は、成長速度が物凄いのです！

　種族によって違うけど、３歳くらいで成人が一般的、早いと１歳くらいで成人する。
　成人すると、一気に身体がおっきくなって繁殖できるんだよ。
　しかも多産なので、繁殖力は旺盛です。
　すんごくちっちゃく生まれるから母体に負担はあんまりないんだよ。
　すぐに、もふもふおっきくなるのです。

　だから強制労働で使い潰されて、どんどん殺された。
　ぎゅっと唇を噛むリトに、不思議そうな声が降ってくる。


「子ぢゅくりってなんだ？」

　首を傾げるレォンしゃま、お約束の質問をありがとう！

「しぁわせ、えちえちでし」

　ちょっと熱い頬でささやいた。
　ジゼの頬も、赤くなってる。
　テデとセバが、ちょっと赤い頬で、によによしてる。

「お、オトナな話なのだな！」

　真っ赤になったレォンが空気を読んでくれた！


「……いやでも、リト、５歳だけどちっちゃくない？」

　テデ、安定の突っ込みをありがとう。


「……僕、ちっちゃ……」

　ぺしゃんとなる耳としっぼに

「リトはちっちゃいのが堪らなく愛らしい！」
「リトはちっちゃくなきゃだめだろう！」

　ジゼとアオが同時に叫んで、セバもうむうむしてる。

「ちいさいリトが可愛い」

「いや、おっきくなっても可愛い！」

　拳を握るジゼに、アオがうむうむしてる。


「……獣人、種族で、成人、ちがぅ、でし……僕、まだ……」

　しょんもりするリトを、ジゼの腕が抱っこしてくれる。


「ゆっくりでいい。大きくなっても、ずっと今のままでも、リトはリトだ。最高に愛らしい」

　ふうわりジゼが笑ってくれる。

　ジゼが抱っこして、頭をなでなでしてくれたら、すんすん啜っていた鼻も止まり、ぺしゃんとしていたしっぽも、ほわほわ元気になった。

　爆速で元気です。
　ちょっとはずかしい。

　火照る頬でジゼに抱きつくリトの隣で、ジゼの腕のなかへとリトをさらわれたアオの群青の目が据わった。


「……人間じゃないか」

　低い声だった。

　怨みの声だ。
　憎しみの声だ。

　鞭打たれ、食べるものも着るものも毛布さえなく放置され、過酷すぎる労働を殺されるまで強いられた。
　目の前で、たくさんの獣人の子どもたちが死んでいった。


　すべての人間を怨み、憎み、殺したいと願っても、仕方のないことなのかもしれない。

　だからこそリトは、顔をあげる。


「ひどい、人間、いる。やさし、人間、いる。ひどい獣人、やさし獣人、いる、同じ」

　ぐ、と唇を噛んだアオに告げる。


「怨み、恨み、呼ぶ。憎しみ、苦しみ、呼ぶ。膨れ、ぁがる。止め、られ、なぃ」

　リトはちっちゃな胸を叩いた。


「止める、勇気、獣人、持てる。獣人、つぉい！」


　ぽふぽふ、リトのしっぽが揺れる。
　ほわほわの耳が、ぴくりと動いて、獣人の仲間たちを見つけた。

　扉の影から、獣人の子どもたちが、こちらをそっと伺ってる。

　人間と一緒に来た獣人のリトが信じられないのかもしれない。
　それでも、皆の耳がぴんと立って、一言も聞き漏らさないように、リトのほうへと向けられていた。

　リトを見つめる目が、不安そうに揺れている。
　リトと一緒に来た人間たちを恐れるように目を逸らす子どもたちも、耳だけはリトのほうを向いていた。