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見破られました
しおりを挟むぺしょぺしょになったリトに、ジゼがぶんぶん首を振った。
「俺が悪かったんだ! リトは何もわるくない!」
月影の馬の前へと駆けたジゼが、深く深く頭を下げた。
「サザの気持ちを思い遣れず、ほんとうに申し訳なかった。すべて俺の不徳だ」
ジゼの後ろからちょっと足を引きずって駆けたリトも、深く頭を下げる。
「僕のせぃ、ジゼしゃま、わる、なぃ、ごめなしあ」
ぺしょぺしょの耳としっぽで頭を下げた。
「リトはわるくない!」
ブルン!
鼻を鳴らしたサザのたてがみが揺れる。
「あ、あの、ジゼしゃま、と、テデ、サザ、おかげ、僕、たすか、ましあ。ありあと、ござまし」
深く頭をさげた。
『ふん!』
鼻息がリトのぺしゃぺしゃの耳を揺らす。
「ご、ごめなしあ!」
『泣いたらすぐ許されると思ってんだろー!』
「お、思て、なぃ、でし!」
あわあわリトは目に溜まった涙を拭った。
「リト──!」
あわあわリトを抱っこしてくれようとするジゼを止める。
ここで抱っこは火に油だ!
「ぼ、僕、いけなかた、でし、ごめなしあ」
泣かないように、ぎゅっと目に力を籠める。
ブルン!
鼻息が、リトのほわほわの耳を揺らす。
『反省してんの?』
「してゆ!」
今した!
お馬さんに運んでもらったことが遠い記憶とか、今は絶対言ったらだめだ!
『うさんくさ』
見破られた!
さすが最愛の推しの最愛の馬さんだ!
「ごめなしあ、でも、はんせぃ、ちゃと、すゆでし!」
「リトは何もわるくないんだ。俺は反省している。もっとサザとの時間をとれるように計らってもらう。なあ、セバ」
『領地経営とか鍛錬とか勉強とか、そういう時間を削ってくれるよな?』を目で問うジゼに
「ええ、リトがくるくるしているのを見ている時間を削減して戴きましょう」
にっこり、セバが完璧な家令の顔で微笑んだ。
「……く!」
一瞬苦渋の顔になったジゼが、首を振る。
「これからちゃんとサザとの時間をとる。ほんとうにすまなかった」
頭をさげたジゼの手が、つややかなサザにふれる。
うっとり目を細めたサザは、ジゼの手に鼻を押しつけた。
ジゼの手が、やさしく、何度も何度もサザを撫でる。
そっとジゼに寄り添うサザが、目を閉じた。
「はぅ──! そーし、そーあぃでし! とぉとぃ!」
思わず拝んだ。
後ろでじっと成り行きを見守ってくれていたレォンが手を挙げる。
「あ、あの、ぼ、僕は乗せて、もらえる、かな……?」
そうだ、レォンのほうが乗せてもらえると思う!
リトはもう絶望的だと思う!
「あの、サザ、レォンしゃま、乗せ、くれゆ?」
ギロリとリトを見たサザが、後ろのレォンにビクリとする。
魔力を極限まで抑えていても、やっぱりレォンが人間じゃないこと、凄まじい力を持っているのが解るのだろう、たてがみが震えてる。
「レォンしゃま、つぉくて、やさしー! でし。のせて、くれゆ?」
ブルン!
怖じ気づいてしまったことを恥じるようにサザが鼻を鳴らす。
『……乗ってもいー』
「わあ、ありあと、ござまし! レォンしゃま、サザ、のせて、くれゆ!」
「おお!」
真っ赤なほっぺのレォンの背中で、ちっちゃな翼がうれしそうにぱたぱたしてる。
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