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だいきらい?
しおりを挟む皆がとても美味しそうにお菓子を食べているからだろう、レォンのお腹の消化速度が上がったみたいだ。
「もちょっと、食べる!」
涙をリトの胸でぬぐったレォンが顔をあげる。
「食べゆでし! ジゼしゃま、おかしでし!」
レォンの手を右手に繋いで、ジゼの手を左手に繋いで、リトが笑う。
ぽふぽふ揺れるしっぽに、ふたりが胸を押さえてうずくまる。
「くぅ──!」
もだもだするふたりを後ろに、陽の髪を揺らしたルァルが前に出た。
「たまには俺と喰おう、リト。これがおすすめなんだ」
にこにこしたルァルが示してくれたお菓子は
「たるてあ! ぴゃー! ルァルしゃま、僕のこと、だいきらぃでし!」
泣きだしたリトを抱きしめたジゼの氷の目がルァルを刺した。
「……殿下……?」
ゴォオァアァオオオ──!
リトを護るように、ジゼの周りに凍気の渦が噴きあがる。
「ぇ、えぇ!? な、なんだ!?」
わたわたするルァルの肩を、ノァがぽんぽんした。
「お茶会でこの菓子を出すってことは『お前が大きらいだ』って言うのと同義なんですよ」
真っ青になったルァルが仰け反った。
「だ、からニフが苦い顔をしたのか──! いやだって、最高に美味いだろ!? レォンさまには最高に美味い菓子を召しあがってもらいたくて──!」
「リトのほうがお菓子のことは勉強しているようですね」
ジャムを口の周りにべったりつけたカィトの突っ込みに、ルァルの目が遠くなってる。
「す、すまん、リト。俺が無知だった。
無知は罪だ。申し訳ない」
頭を下げてくれるルァルに、跳びあがったリトはぶんぶん首を振る。
「……あ、あの、ルァルしゃま、僕、きらぃ……?」
「まさか! 大すきだぞ!」
ぎゅう
抱きしめてくれた。
「ふぇえ……! よかたでし……!」
ぐすぐす泣くリトを、ルァルの鍛錬で硬い腕がぽんぽんしてくれる。
「うわ、リト、ふぁっふあで、やーらかぃ……み、耳としっぽが、く、くすぐった……!」
耳まで真っ赤になって悶えながらぎゅうぎゅうしてくれるルァルを、ジゼの手がひっぺがした。
「終了です、ルァル殿下」
瞳が、氷だ。
レォン歓迎のお菓子祭りは、皆の笑顔で終了しました!
……ジゼの氷? いや、さいごは皆、美味しいお菓子でにこにこだったと思う!
いつものテデの診察に、リトはいい子でお座りだ。
ぽふぽふしっぽが揺れるのはデフォルトだよ。
すきな人や、やさしくしてくれる人に会うと、ついしっぽがぶんぶんしちゃう。
『この子のしっぽ、よく動くなあ』思ってくれたらうれしいな!
『この子、俺のこと大すきだなあ』はちょこっと恥ずかしい。
ちょこっとね!
リトの脈にふれ、目を覗き、肺と心臓の音を聞いてくれたテデが、微笑んだ。
「うん、魔力がだいぶ身体になじんできたみたいだね。もうぎゅってしても吐血しないかな?」
ぎゅう
「どう?」
テデにぎゅっと抱っこされたリトは、ほわほわの耳でテデを見あげる。
「あたかい、でし」
ふわふわ笑うリトの後ろで、ジゼの凍気が溢れだす。
「……それは診察なのか、テデ」
ジゼの声が、地を這った。
「勿論です! 脈の変化や魔力の変化、免疫の過剰反応がないかを確認しつつ、ぎゅう!」
ぎゅうううう
抱っこしてくれるテデの顔が、真っ赤だ。
「……う、リト、ほあほあだ……!」
「テデ……?」
ジゼの瞳が、凍えてる。
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