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未来
しおりを挟む「さあ、皆で食べよう! お菓子祭りだ!」
「わぁあぁあい──!」
ルァルの声に歓声をあげてお菓子に突進するのはノァとカィト、アリアスだ。
両手にお菓子を持って、口をくりぃむでいっぱいにしてる。
無表情でクールなはずのカィトの目がきらきらしていて、口が真っ赤なジャムまみれで、ノァが声をたてて笑ってる。
動かない他の人たちに、首を傾げたルァルが微笑む。
「ゲォルグ殿も、セバもどうぞ。ニフも、料理人の皆も、侍従、従僕の皆も、勿論、リトも、ジゼも」
「えぇ──!?」
仰け反ったのは、セバと料理人、侍従や従僕の皆さんだ。
「そ、そのような不敬なふるまいは……」
皆の気持ちを代表したのだろう、ニフが口を開くのに、ルァルは告げる。
「母帝と次代の俺が、身分を殺す。王を、貴族を、不敬を滅す。誰もが、己の才覚や努力で身を立てられる国を、築いてみせる。そのために、皆の力が必要なんだ」
国を率いる者の貌で、ルァルが笑う。
「ジゼ、カィト、ノァ、力を貸してくれるだろう?」
瞬いたジゼが、微笑んで膝をつく。
「御意」
「身命を賭してルァル殿下にお仕え申しあげます」
抜いた剣を胸に、カィトが膝をつく。
「がんばります!」
笑ったノァが膝をついた。
「ルァルしゃま、すごぃ!」
ぱちぱち拍手して飛びあがるリトに、硬直していた皆から笑顔がこぼれる。
「ルァルさまのお力となれますよう」
「全力を尽くします!」
次々と膝をつく皆に、ルァルは首を振る。
「誰にも膝をつかなくていい世界を、皆でつくろう」
微笑むルァルを見つめたジゼの唇が、ほころんだ。
「それでも膝をつきたくなる人こそが、皆を率いるべき人なのでしょう。
あなたにお仕えできることを、誇りに思います」
ジゼの言葉に、耳まで真っ赤になったルァルが跳びあがる。
「ほ、ほほほほほんとうか!?」
「……今更、何を……」
ぽかんとするジゼと、真っ赤になって悶えるルァルに、皆が笑う。
「さあ、皆、無礼講だ! 皆で食べる菓子のほうが、絶対うまい!」
笑うルファ陛下に、真っ赤になった料理人や侍従や従僕の皆さんがもだもだしてる。
わかった!
帝宮は、ルファ陛下ファンクラブだ!
アイドルの掛け声につられたように、皆の手が次々に並べられたお菓子に伸びた。
皆でとびきりお菓子を食べて、皆でとろけた頬で笑う。
やさしい声が、笑い声が、満ちてゆく。
「……よい国だ」
リトの胸から顔をあげたレォンが呟いて、ジゼは首を振る。
「獣人への差別も強制労働も、高位貴族の腐敗も、頭の痛い問題です。身分をなくそうとすると反発どころか戦になるかもしれない。それでも前へ進もうとするルァルさまを、お支えしたいと思います」
ルァルを見つめるジゼの瞳がやさしくて、耳まで真っ赤になったルァルが、両手で顔を覆ってる。
こ、これはやっぱりジゼ×ルァルなのかな!?
ルァル×ジセ!?
尊い──!
思わず拝んだ。
でもでも、ジゼのしあわせはアリアス×ジゼ、もしくはジゼ×アリアスにあるんじゃないのかな??
わたわたするリトの向こうで
「ジゼ×ルァル、尊い──!」
真っ赤な頬でアリアスがもだもだしてる。
ルァルとジゼの氷の目が刺さってる。
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