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熟練?
しおりを挟むセバ、ジゼ、ゲォルグ、リトも一緒にレォンの前に膝をつく。
一斉に垂れられた皆のこうべに闇の瞳をまるくしたレォンは、ふるふる首を振った。
「……リトが、セバが、ゲォルグが、ジゼが、かわいーって言ってくれたから。いい」
はにかむように微笑んで、ぎゅ、とリトの手を握ってくれる。
「レォンしゃま、とびきり、かぁいーのでし!」
赤い頬で照れくさそうに笑ってくれるレォンが、天使だ。
首が飛ぶ覚悟をしていたのだろう、王らしき男の子は涙と鼻水の顔を地面に擦りつけた。
「ああ、おやさしき闇龍レォンさまに、素晴らしき未来があらんことを! 救国のジェディス家に栄光あれ!」
王の言葉に、ルァルと土下座したままの人々が唱和する。
「おやさしき闇龍レォンさまに、素晴らしき未来があらんことを!」
「救国のジェディス家に、栄光あれ!」
目をまるくしたままのレォンが、恥ずかしそうにこくりと頷く。
「えと、あの、皆、立って、ください。あの、僕、闇龍レォンです。人間のお菓子が食べたくて、来ました。よろしくお願いします」
お背なのちっちゃな翼が、ぱたぱた揺れる。
「天使のご光臨だ──!」
号泣する王が、真っ赤な顔で拝んでる。
「ほんとうにほんとうにほんとうにほんとうにほんとうに申し訳ございません──!」
土下座のままなルァルが泣いてる。
「わたくしがレォンさまを庭園にご案内しようと、早く来たのが悪かったのです。誠に申し訳ございませんでした」
ルァルと一緒に膝をつくゲォルグを、レォンのちっちゃな手が立たせる。
「この国で一番と謳われる庭を見せてくれようとしたのだろう。心遣いを、うれしく思う」
微笑んでくれるレォンが、天使だ。
「もしよろしければ、ご案内いたします」
レォンの赦しを得て立ちあがったのは、華奢で愛らしい男の子だ。
陽の髪のうえに、ちょこんとちいさな冠がのってる。
ルァルとおそろいの陽の瞳が、もうすぐ夏の光にきらめいた。
ルァルの凛々しさを、やさしい甘さに変換したような顔をしている。
並ぶとルァルとそんなに変わらない。
歳の近いお兄ちゃんに見えた。
「……へぃか……?」
思わずそうっと聞いてしまったリトの呟きに、ぴょこんと跳びあがった男の子が、冠のくっついた頭をさげる。
「重ね重ね申し訳ございません! わたくしはルファ・シィル・ドディア、ドディア帝国の王にございます」
たおやかに腰を折るルファの隣で、ルァルも一緒に腰を折る。
「わたくしルァル・シ・ドディアの母帝にございます」
おかあさん!
おにいちゃんじゃなかった!
「よく似ている」
微笑むレォンのお背なで、ちいさな羽がぱたぱた揺れる。
「……っ! レォンさまは、ほんとうに、なんと愛らしい──!」
感激に打ち震えるように真っ赤な頬を両の手で覆ってもだもだする母を、ルァルが小突いた。
「母上、闇龍様の御前です、控えてください」
ルァルの突っ込みが、慣れてる。
もしかして、熟練……?
「は! も、申し訳ございません、闇龍様──!」
ズザァア──!
しゃっと立ちあがって、ザッと伏せて、ザザァアア──! と滑るスライディング土下座が素晴らしく上手なんだけど、もしかして熟練……?
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