111 / 168
おでかけです
しおりを挟むお膝だっこなゲォルグ×セバ、もしくはセバ×ゲォルグの隣は、レォンには厳しかったらしい。
ふくふくのほっぺが、引き攣ってる。
「……い、いや、僕はリトの隣で……」
リトのしっぽが、ぽふぽふ揺れた。
「あい!」
両手を挙げてしまったリトに、ジゼもゲォルグもセバもレォンも、胸を押さえた。
ちょっと赤い頬でしゃっと立ち直ったのはゲォルグだ。
「では私が下座に。ジゼ、こちらへ」
「父上!」
「何事もレォンさまの思し召しのままに」
「は」
うやうやしくゲォルグとレォンにこうべを垂れたジゼが、ゲォルグと席を入れ替わる。
その間もセバのお膝抱っこを解かないゲォルグが、強すぎる。
ちょっと赤い頬のレォンが上座に座り、その隣にリト、その隣にジゼ、向かいにセバ抱っこのゲォルグが座った。
「出発しやす、よろしゅうございやすか」
御者さんが振り返って、ゲォルグが手を挙げた。
「出してくれ」
「は!」
ぽんぽん馬の首をたたいた御者さんに応えて2頭の白馬たちが駆けだした。
「おお!」
窓に手をかけたレォンのお背なの翼が、ぱたぱたしてる。
「馬が走って、牽いてくれるのだな」
「然様でございます。馬車と申す乗り物です、レォンさま」
微笑むゲォルグのお膝のうえで、セバが真っ赤な顔を覆ってる。
御者さんの誘導で、レォンによく見えるよう、ぽくぽくゆっくり白馬が駆けてくれる。
車窓から見える帝都の街並み、人間の営みは、レォンにはとても珍しく面白く映るらしい。
「あ、あれは何だ?」
市場の色とりどりの天幕を指すレォンに、リトは胸を張る。
「お店でし!」
「みせ?」
隣のジゼが微笑んだ。
「色んなものを売っているのです。野菜や果物、肉を焼いた串や、菓子もあります。鍋や防具も。ドディア帝国中のものが集まる、市というのです」
「ほう!」
闇色の瞳がきらきらしてる。
「今度、いしょ、いきまし、レォンしゃま!」
「う、うむ!」
ちっちゃな羽がぱたぱたして、ぎゅ、とリトの手を握る。
ジゼの唇がちょこっと尖って、ゲォルグが微笑んだ。
「あちらが帝宮、ドディア帝国帝王の住まう宮です」
天を衝く幾つもの白い尖塔を擁し、高く聳える白壁に護られた、帝王の城が見えてくる。
帝宮の前にある、大きな噴水がかろやかに水の弧を描く円形の馬車止めには、誰かの到着を待ちわびるように大勢の人が詰めかけていた。
馬車から降りる人がよく見える位置には、高位貴族らしいキンキンギラギラの衣をまとったおじいちゃんやおじちゃんが勢ぞろいし、その後ろにはキラキラ具合が劣る貴族なのだろう子弟が波をなし、さらにその後ろに平民たちまで詰めかけている。
「人いぱぃ!」
びっくりするリトに、ゲォルグが眉を顰める。
「闇龍様がいらっしゃるのは箝口令を敷いたはずだが、また高位貴族の阿保どもか。真っ先に歓迎して自らの顔と領地を売り込みたいのだろう」
吐き捨てるゲォルグの、イケオジ、いや絶対おじさんじゃない! かっこいーお兄さんなかんばせが、氷だ。
「陛下にお逢いになる前に帝宮の庭園をご案内しようと早く来たのだが、これでは行けぬ」
眉間の皺さえ、かっこいー。
「蹴散らしましょうか」
ジゼの微笑が、氷だ。
990
お気に入りに追加
3,214
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?
み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました!
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話
かし子
BL
養子として迎えられた家に弟が生まれた事により孤独になった僕。18歳を迎える誕生日の夜、絶望のまま外へ飛び出し、トラックに轢かれて死んだ...はずが、目が覚めると赤ん坊になっていた?
転生先には優しい母と優しい父。そして...
おや?何やらこちらを見つめる赤目の少年が、
え!?兄様!?あれ僕の兄様ですか!?
優しい!綺麗!仲良くなりたいです!!!!
▼▼▼▼
『アステル、おはよう。今日も可愛いな。』
ん?
仲良くなるはずが、それ以上な気が...。
...まあ兄様が嬉しそうだからいいか!
またBLとは名ばかりのほのぼの兄弟イチャラブ物語です。
異世界に召喚されて失明したけど幸せです。
るて
BL
僕はシノ。
なんでか異世界に召喚されたみたいです!
でも、声は聴こえるのに目の前が真っ暗なんだろう
あ、失明したらしいっす
うん。まー、別にいーや。
なんかチヤホヤしてもらえて嬉しい!
あと、めっちゃ耳が良くなってたよ( ˘꒳˘)
目が見えなくても僕は戦えます(`✧ω✧´)
転移したら獣人たちに溺愛されました。
なの
BL
本編第一章完結、第二章へと物語は突入いたします。これからも応援よろしくお願いいたします。
気がついたら僕は知らない場所にいた。
両親を亡くし、引き取られた家では虐められていた1人の少年ノアが転移させられたのは、もふもふの耳としっぽがある人型獣人の世界。
この世界は毎日が楽しかった。うさぎ族のお友達もできた。狼獣人の王子様は僕よりも大きくて抱きしめてくれる大きな手はとっても温かくて幸せだ。
可哀想な境遇だったノアがカイルの運命の子として転移され、その仲間たちと溺愛するカイルの甘々ぶりの物語。
知り合った当初は7歳のノアと24歳のカイルの17歳差カップルです。
年齢的なこともあるので、当分R18はない予定です。
初めて書いた異世界の世界です。ノロノロ更新ですが楽しんで読んでいただけるように頑張ります。みなさま応援よろしくお願いいたします。
表紙は@Urenattoさんが描いてくれました。
ひとりぼっち獣人が最強貴族に拾われる話
かし子
BL
貴族が絶対的な力を持つ世界で、平民以下の「獣人」として生きていた子。友達は路地裏で拾った虎のぬいぐるみだけ。人に見つかればすぐに殺されてしまうから日々隠れながら生きる獣人はある夜、貴族に拾われる。
「やっと見つけた。」
サクッと読める王道物語です。
(今のところBL未満)
よければぜひ!
【12/9まで毎日更新】→12/10まで延長
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる