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おでかけです
しおりを挟むお膝だっこなゲォルグ×セバ、もしくはセバ×ゲォルグの隣は、レォンには厳しかったらしい。
ふくふくのほっぺが、引き攣ってる。
「……い、いや、僕はリトの隣で……」
リトのしっぽが、ぽふぽふ揺れた。
「あい!」
両手を挙げてしまったリトに、ジゼもゲォルグもセバもレォンも、胸を押さえた。
ちょっと赤い頬でしゃっと立ち直ったのはゲォルグだ。
「では私が下座に。ジゼ、こちらへ」
「父上!」
「何事もレォンさまの思し召しのままに」
「は」
うやうやしくゲォルグとレォンにこうべを垂れたジゼが、ゲォルグと席を入れ替わる。
その間もセバのお膝抱っこを解かないゲォルグが、強すぎる。
ちょっと赤い頬のレォンが上座に座り、その隣にリト、その隣にジゼ、向かいにセバ抱っこのゲォルグが座った。
「出発しやす、よろしゅうございやすか」
御者さんが振り返って、ゲォルグが手を挙げた。
「出してくれ」
「は!」
ぽんぽん馬の首をたたいた御者さんに応えて2頭の白馬たちが駆けだした。
「おお!」
窓に手をかけたレォンのお背なの翼が、ぱたぱたしてる。
「馬が走って、牽いてくれるのだな」
「然様でございます。馬車と申す乗り物です、レォンさま」
微笑むゲォルグのお膝のうえで、セバが真っ赤な顔を覆ってる。
御者さんの誘導で、レォンによく見えるよう、ぽくぽくゆっくり白馬が駆けてくれる。
車窓から見える帝都の街並み、人間の営みは、レォンにはとても珍しく面白く映るらしい。
「あ、あれは何だ?」
市場の色とりどりの天幕を指すレォンに、リトは胸を張る。
「お店でし!」
「みせ?」
隣のジゼが微笑んだ。
「色んなものを売っているのです。野菜や果物、肉を焼いた串や、菓子もあります。鍋や防具も。ドディア帝国中のものが集まる、市というのです」
「ほう!」
闇色の瞳がきらきらしてる。
「今度、いしょ、いきまし、レォンしゃま!」
「う、うむ!」
ちっちゃな羽がぱたぱたして、ぎゅ、とリトの手を握る。
ジゼの唇がちょこっと尖って、ゲォルグが微笑んだ。
「あちらが帝宮、ドディア帝国帝王の住まう宮です」
天を衝く幾つもの白い尖塔を擁し、高く聳える白壁に護られた、帝王の城が見えてくる。
帝宮の前にある、大きな噴水がかろやかに水の弧を描く円形の馬車止めには、誰かの到着を待ちわびるように大勢の人が詰めかけていた。
馬車から降りる人がよく見える位置には、高位貴族らしいキンキンギラギラの衣をまとったおじいちゃんやおじちゃんが勢ぞろいし、その後ろにはキラキラ具合が劣る貴族なのだろう子弟が波をなし、さらにその後ろに平民たちまで詰めかけている。
「人いぱぃ!」
びっくりするリトに、ゲォルグが眉を顰める。
「闇龍様がいらっしゃるのは箝口令を敷いたはずだが、また高位貴族の阿保どもか。真っ先に歓迎して自らの顔と領地を売り込みたいのだろう」
吐き捨てるゲォルグの、イケオジ、いや絶対おじさんじゃない! かっこいーお兄さんなかんばせが、氷だ。
「陛下にお逢いになる前に帝宮の庭園をご案内しようと早く来たのだが、これでは行けぬ」
眉間の皺さえ、かっこいー。
「蹴散らしましょうか」
ジゼの微笑が、氷だ。
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