もふもふ獣人転生

  *  

文字の大きさ
上 下
102 / 200

尊敬なのです

しおりを挟む



 一緒に胸を押さえていたセバが、何事もなかったかのように、銀縁眼鏡を光らせて背を伸ばす。

「ではレォンさま、手あたり次第に食べるのではなく、どのようなお菓子なのか説明しますので、解説を聞きながら、すきなお菓子なのか、そうでもないのか、考えてみてください。おすきなものは、こちらの白いお皿に、苦手なものはこちらの青いお皿に、半分残してください」

「す、すきなものも、半分なのか!?」

 絶望の目になるレォンに、セバは微笑んだ。

「たくさんありますから、半分ずつでもお腹いっぱいになりますよ。食べたら歯磨きです。また虫歯になっては大変ですからね」

「た、大変だ!」

 真っ青になるレォンに、リトはしっぽをぽふぽふしながらちっちゃな胸を叩く。

「僕が、歯磨き、お教え、しゅりゅでし!」

 噛んだ!

 生温かい目になったレォンが、背伸びしてぽふぽふ頭を撫でてくれる。
 やさしー!

「よろしく頼む、リト」

「あい!」

 胸を叩いて、しっぽぽふぽふのリトに、レォンのほっぺもセバのほっぺも赤くなってる。

 かわいー。

 セバがすごいのは、一瞬で立ち直るところだ。
 にやけて溶けた顔から一瞬で、しゃっと凛々しいかんばせに戻ったセバは、いかめしく腕を組んだ。

「ではリトは、お菓子の説明をよく聞いて纏めるように。後で試験するからな」

「ぴゃい!」

 ぼわぼわになったしっぽと一緒に涙目になったリトに、レォンが跳びあがる。

「ぼ、僕も試験か!?」

「レォンさまは、まず人間の世界のお菓子というものに、どんなものがあるのか知っていただこうと思うのです。リトは食べましたね」

「……うまうまでし」

 しょんもりしていいのか、ぽふぽふしていいのか謎な感じに、ふわふわの耳と、ほわほわのしっぽが彷徨った。

「り、リトが頑張るなら、僕も頑張る!」

 レォンがちっちゃな拳を握る。

 かぁいー!
 しかし殴られると世界が吹っ飛ぶ拳でし! つぉい!

 拳にちょっとビクっとしたセバは、ビクっとしたことを隠すように、うやうやしく口を開く。

「畏れながらレォンさまは、字をお書きになれますか?」

「精霊語なら書けるぞ!」

 えへんとレォンが胸を張る。
 すさかずセバとリトが拍手した。

「素晴らしい!」

「すごいでし、レォンしゃま!」

 なんだか接待みたいだけど、違うのです!
 ちっちゃいレォンが胸を張って、お背な翼ぱたぱたの愛らしさに、拍手せずにはいられないのです!

 目で語り合うリトとセバが、うむうむしてる。
 次の瞬間、セバは完璧な家令長の顔で、銀縁眼鏡を光らせた。

「ではお菓子の説明を簡単にしますので、書き留めてみてください。あとでリトと一緒に試験をしてみましょうね」

 紙やインクやペンをさっと用意してくれるセバの銀縁眼鏡に、ちょっとビクっとしたレォンが、ちっちゃな拳を握る。

「う、うむ、わかた!」

「レォンしゃま、わじゃわじゃ、しけん、うけりゅ、えらぃでし……!」

 噛みまくりのリトの目には、尊敬しかない。


「そ、そうか!」

 赤くなったレォンの羽が、ぱたぱた3倍速だ。





しおりを挟む
感想 251

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

【完結】守護霊さん、それは余計なお世話です。

N2O
BL
番のことが好きすぎる第二王子(熊の獣人/実は割と可愛い) × 期間限定で心の声が聞こえるようになった黒髪青年(人間/番/実は割と逞しい) Special thanks illustration by 白鯨堂こち ※ご都合主義です。 ※素人作品です。温かな目で見ていただけると助かります。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 時々おまけのお話を更新しています。

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました

十夜 篁
BL
 初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。 そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。 「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!? しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」 ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意! 「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」  まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…? 「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」 「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」 健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!? そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり… 《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》

処理中です...