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一緒にきゅー

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「ジゼしゃま、おとたま、かこぃー!」

 ぽふぽふ揺れるしっぽで、熱い握手を交わすジゼとゲォルグに、ぱふぱふ拍手した。

 ほんのり赤くなったジゼとゲォルグが、照れくさそうに誇らしそうに笑ってくれる。


「リト、意味わかってるか?」

 耳まで真っ赤なのに、突っ込みを忘れないセバ!
 さすが完璧な家令長でし!


「ジゼしゃま、お仕事、がんばゆ、えらぃでし!」

 尊敬の目で、ぱふぱふ拍手した。一緒にぴこぴこ耳が揺れる。

「……っ!」

 真っ赤になったジゼが、胸を押さえてうずくまる。


「……舌の根も乾かぬうちに、挫折しそうです、父上……」

「きもちわかるよ、ジゼ……」

 ちょっと赤い頬のゲォルグの目が、遠くなってる。
 



 ジゼのお傍に控える役目を言いつかったリトは、インクの補充をしたり、紙の補充をしたり、資料を持ってきたり、ごちゃっとなりがちな机をお片ししたり、お疲れになる前にお茶やお菓子をお出しし終わったら、執務や勉学に励むジゼを、うっとり眺める。

 見ても見ても見ても見ても見飽きないジゼ!
 世界の至宝なジゼ!
 最愛の推し、最高──!

「はぅ──♡」

 ほわほわのしっぽが、ぶんぶんしてる。

「……あ、穴が開きそうなんだが──!」

 耳まで真っ赤なジゼがうろたえてる。


「リト、任務は順調──じゃなさそうだな──!」

 ジゼの執務室にやってきたセバが、銀縁眼鏡の向こうで静かにおこだ。
 さっと目を逸らしたジゼの手元には、ぐっちゃぐっゃのカオスな文字が書かれていた。

『リトかわいー♡リトかわいー♡リトかわいー♡リトかわいー♡リトかわいー♡リトかわいー♡リトかわいー♡リトかわいー♡リトかわいー♡リトかわいー♡リトかわいー♡』を慌ててぐしゃぐしゃに消したみたいになってたけど、リトの文字の読解力はそんなに高くないので、間違ってると思う。

「紙、おとりかえ、しましあ」

 しゃっと落書きを引いて、さっと新しい紙を置く。

 ちょこっと仕事ができる従僕なのです!
 えへん!

 ぽふぽふ、しっぽが揺れる。

 ジゼとセバが赤い頬で胸を押さえる隣で、赤い頬のレォンは首を傾げた。

「リト、ゆーしゅー?」

 背中のちっちゃな羽をぱたぱた揺らすレォンに、ジゼがしっかり頷いてくれた。

「大変優秀だ」

 えへんと胸を張ってくれるジゼが、やさしすぎる──!

「あ、ありあと、ござまし」

 熱い頬で頭をさげたら、ジゼの手が、そっと伸びた。


 やさしく、やさしく、頭を撫でてくれる。

 それだけで、天上にのぼる気がする。



「ぼ、僕も、ゆーしゅーになる!」

 ちっちゃな拳を握るレォンのしっぽが、ぽしぽししてる。

「ぐ──!」

 胸を押さえたセバは、完璧な家令の顔を取り戻して微笑んだ。


「闇龍様には、人間の従僕の仕事を憶える必要性がないかと──」

 やわらかな笑みに、けれどレォンのちっちゃな眉が下がる。

「ぼ、僕だって、ゆーしゅーになって、あ、頭、なでなで、して、もらぅ、んだ──!」

 真っ赤な頬で叫ぶレォンに、セバもジゼもリトも胸を押さえた。


 あぁ、胸が、きゅーっとする!

「……リト?」

 ジゼの氷の目が刺さって


「じ、ジゼしゃまも、お胸、きゅー、でし!」

 思わず反論しちゃった!





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