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がんばるおとたま

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「なあ、リト、相談なんだが、ジゼさまのお勉強も領地経営も鍛錬も、ちっとも全く全然微塵も進まないんだ。リトはジゼさまの従僕だろう。ここはジゼさまにやる気になって貰えるよう、ジゼさまのお傍でお仕えしてみないか」

 セバの両手を両肩に置かれて、説得されたリトのしっぽが、喜びにぼわぼわ揺れる。

「あい!」

 両手を挙げるリトに、拗ねた唇でレォンの頬がふくれた。

「僕のお世話は!」

「リトがジゼさまのお傍でお仕えするので、リトに構ってほしい場合は、くっついていらしてください、というのはいかがでしょうか」

「よき!」

 よいのか!

 ジゼとリトの口があんぐりしたが、セバは完璧な家令の顔で微笑んだ。
 誇らしそうに、ちょっと小鼻が膨らんでた。

 かわいー





 ぽぽらっぽっぽっぴー!

 ジゼのやる気が出るのかどうかは謎ですが、リトはお傍でお仕えすることになりました!

「わーいわーい!」

 ぽふぽふ揺れるしっぽに

「わーいわーい!」

 楽し気についてくるレォンのちっちゃな翼が、ぱたぱたしてる。

「なんだこの生き物は──!」

 ジェディス邸の皆さんが、胸を押さえて、うずくまってる。
 ジゼの広やかな執務室のまん中が、ぽふぽふとぱたぱただ。

「愛らしすぎて、つらい」

 ぽそぽそ呟くジゼの背を慰めるセバも、胸を押さえてる。

「攻撃力が2倍になったようですが、心して執務に励みましょう」

「……リトが隣にいたら、リトしか見ないと思うんだが」

 ぽそぽそしたジゼの突っ込みに、セバの銀縁眼鏡の向こうの目が遠くなる。

「……『あんぽんたんまっしぐら!』の旗が立ってますね……」

「解っているのだが、どうにも──」

 息子とセバの窮地に気づいたのだろう、ジゼの執務室へとやってきたゲォルグが、ジゼの両肩に手を置いた。

「いいかい、ジゼ。かわいい、かわいい、かわいい、かわいい、かわいい、かわいい最愛の子に養ってもらいたいのか、おいしいものを食べさせて、やすらかに眠らせて、可愛がってあげるだけの財力を得たいのか、よくよく考えなさい」

 おそろいの蒼の瞳が、ジゼの目を見つめる。

「養ってもらいたいなら、すべてを捧げて愛せばよい。もし何かしてあげたいと願うなら、今は無用に思える努力も、きっときみの糧になる」

 微笑むゲォルグを見あげたジゼは、呟いた。

「……そうやって、父上は懸命に執務をしておられるのですね」

「そうだ! 隣でいかにセバの細い腰がひらひらしてようと、眼鏡を外した時の流し目が絶世の艶やかさだろうと、『あまいお菓子はいかがでしょう』色っぽさ全開の小悪魔みたいな目で微笑まれても、執務を頑張っているんだ──!」

 泣いてる。

 後ろで耳まで真っ赤になったセバが、顔を覆って轟沈してる。


「わ、かりました、父上──! 軟弱だった愚息をお許しください。心を入れ替え、リトにおいしいものを食べさせ、やすらかに眠ってもらい、もふもふもふもふもふもふさせてもらえるよう、全力で頑張ります──!」

 拳を握るジゼに、ゲォルグが涙の瞳で微笑んだ。


「一緒にがんばろうな、ジゼ」

「はい、父上!」

 ふたりが熱い握手を交わした!




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