上 下
96 / 189

ぽこん

しおりを挟む



 考えるように首を傾げたルァルが、にやりと笑う。

「闇龍様を国家としてもてなすため、帝宮にお部屋をご用意しよう。リトを闇龍様の従僕として指名する。帝宮に詰めてもらおう。それで異存ないか?」

「異存しかないだろう──! 厭がらせか──!」

 絶叫するジゼに、ルァルは喉を鳴らして笑った。

「そういうジゼの顔が、見たかった」

 伸ばされたルァルの指が、ジゼの頬をゆうるり辿る。

「はぅあ──!」

 ルァル×ジゼが、尊すぎる──!

 もだもだ燃える頬でうずくまるリトと一緒に、アリアスもうずくまってた。
 友達になれる気しかしない。






 帝宮でリトが暮らすのは、断固反対!

 ジゼが。
 セバがいないとどうしていいか解らないうえに、ジゼと離れたくないリトが。

 という訳で、リトはジゼとレォンと一緒に、ジェディス邸に帰ることになりました。

 玄関まで迎えに出てくれたセバが

「………………は…………!?」

 顎が外れそうなほど、口を開けてる。
 銀縁眼鏡が、傾いてる。

 一緒に迎えに来てくれたゲォルグも、凛々しいお顔が真っ青だ。

「こ、此度は闇龍様が我が邸に滞在なさるとのこと、ジェディス家一門の譬えようもなき誉れにございます」

 胸に手をあて腰を折るゲォルグに、レォンが首を傾げる。

「何か言ってる」

「来て、くれて、ありあと、ござまし、でし!」

 通訳するリトに、レォンの頬がうれしそうに赤くなる。
 ちっちゃなお背なで、ちっちゃな翼がぱたぱたしてる。

「そうか! 人間の菓子が見たい!」

「か、かしこまりました」

 こんなに引き攣ってるセバ、初めて見たかも!

 レォンしゃま、とってもかわぃーのに、どしたのかな?

 不思議に思ったリトは、レォンから噴きつける魔力の渦に、ようやく気づいた。
 凄まじい魔力の爆風も受けたので、あんまり気にしていなかったが、人間じゃないオーラがダダ洩れるほど、レォンの周りが異界すぎる。

『ウオォオオォアァオォン──!』って真っ暗なグチャグチャで渦々の何かが叫んでる感じ!

 セバもゲォルグも引き攣るはずだ。

 このままではレォンの愛らしさが微塵も伝わらない!

 切迫した危機感を覚えたリトは、進言してみた。

「レォンしゃま、魔力、ちょと、抑えゆ、できゆ?」

 さらさら長い闇の髪を揺らして、レォンがちっちゃな首を傾げる。

「ふむ? かなり抑えているぞ」

「皆、びくり!」

 両手をあげて、しっぽをボフボフにしてみた!

 ジゼとレォンとセバとゲォルグが真っ赤になって、胸を押さえた。

 セバとゲォルグの顔色がよくなったみたいだ。よかた!


「そ、そうか、ふむ、リトくらいまで抑えればよいのだな。やってみよう」

 目を閉じたレォンのつややかな髪が舞いあがる。

「ふぬぬぬぬぬぬ!」

 闇龍の巨大な魔力が凝集する──!


 ぽこん

 なんか出た!


 飛びだした艶々の闇色の珠を思わず掴んでしまったリトに、レォンが微笑む。

「それは僕の魔力の結晶だ。リトにやる。持ってるだけで、リトを守る」

「ありあと、ござまし!」

 しっぽをぶんぶんして頭をさげるリトの向こうで、セバとゲォルグが卒倒しそうになってた。


「……闇龍様の、魔力結晶……」

「国宝どころか、世界の至宝です……」





しおりを挟む
感想 223

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

処理中です...