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ぽこん
しおりを挟む考えるように首を傾げたルァルが、にやりと笑う。
「闇龍様を国家としてもてなすため、帝宮にお部屋をご用意しよう。リトを闇龍様の従僕として指名する。帝宮に詰めてもらおう。それで異存ないか?」
「異存しかないだろう──! 厭がらせか──!」
絶叫するジゼに、ルァルは喉を鳴らして笑った。
「そういうジゼの顔が、見たかった」
伸ばされたルァルの指が、ジゼの頬をゆうるり辿る。
「はぅあ──!」
ルァル×ジゼが、尊すぎる──!
もだもだ燃える頬でうずくまるリトと一緒に、アリアスもうずくまってた。
友達になれる気しかしない。
帝宮でリトが暮らすのは、断固反対!
ジゼが。
セバがいないとどうしていいか解らないうえに、ジゼと離れたくないリトが。
という訳で、リトはジゼとレォンと一緒に、ジェディス邸に帰ることになりました。
玄関まで迎えに出てくれたセバが
「………………は…………!?」
顎が外れそうなほど、口を開けてる。
銀縁眼鏡が、傾いてる。
一緒に迎えに来てくれたゲォルグも、凛々しいお顔が真っ青だ。
「こ、此度は闇龍様が我が邸に滞在なさるとのこと、ジェディス家一門の譬えようもなき誉れにございます」
胸に手をあて腰を折るゲォルグに、レォンが首を傾げる。
「何か言ってる」
「来て、くれて、ありあと、ござまし、でし!」
通訳するリトに、レォンの頬がうれしそうに赤くなる。
ちっちゃなお背なで、ちっちゃな翼がぱたぱたしてる。
「そうか! 人間の菓子が見たい!」
「か、かしこまりました」
こんなに引き攣ってるセバ、初めて見たかも!
レォンしゃま、とってもかわぃーのに、どしたのかな?
不思議に思ったリトは、レォンから噴きつける魔力の渦に、ようやく気づいた。
凄まじい魔力の爆風も受けたので、あんまり気にしていなかったが、人間じゃないオーラがダダ洩れるほど、レォンの周りが異界すぎる。
『ウオォオオォアァオォン──!』って真っ暗なグチャグチャで渦々の何かが叫んでる感じ!
セバもゲォルグも引き攣るはずだ。
このままではレォンの愛らしさが微塵も伝わらない!
切迫した危機感を覚えたリトは、進言してみた。
「レォンしゃま、魔力、ちょと、抑えゆ、できゆ?」
さらさら長い闇の髪を揺らして、レォンがちっちゃな首を傾げる。
「ふむ? かなり抑えているぞ」
「皆、びくり!」
両手をあげて、しっぽをボフボフにしてみた!
ジゼとレォンとセバとゲォルグが真っ赤になって、胸を押さえた。
セバとゲォルグの顔色がよくなったみたいだ。よかた!
「そ、そうか、ふむ、リトくらいまで抑えればよいのだな。やってみよう」
目を閉じたレォンのつややかな髪が舞いあがる。
「ふぬぬぬぬぬぬ!」
闇龍の巨大な魔力が凝集する──!
ぽこん
なんか出た!
飛びだした艶々の闇色の珠を思わず掴んでしまったリトに、レォンが微笑む。
「それは僕の魔力の結晶だ。リトにやる。持ってるだけで、リトを守る」
「ありあと、ござまし!」
しっぽをぶんぶんして頭をさげるリトの向こうで、セバとゲォルグが卒倒しそうになってた。
「……闇龍様の、魔力結晶……」
「国宝どころか、世界の至宝です……」
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