もふもふ獣人転生

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びゃーびゃー

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「……え、いや、そ、それはちょっと、大恐慌かと……」

 おそるおそる進言するルァルが引き攣ってる。


 巨大な闇龍が帝都に降り立ったら、皆、世界の終わりだと思って泣き叫んで逃げ惑うよね。
 間違いない。

「みな、びくり!」

 両手を挙げたリトはしっぽをボワボワさせて、驚きを表してみた!

 顔を覆った皆が、うずくまってる。

 ?

 首を傾げたリトは、皆が泣いて逃げるだけじゃないことに思い至った。

 巨大な闇龍の出現に、攻撃されると勘違いして、こちらから攻撃を仕掛けたりなんかしたら、大変だ!
 闇龍の鱗に傷ひとつつかなくても、跳んでくる槍とか矢とかを払おうとして

『グォオァアオォオオ──!』

 ってなった瞬間、国が滅ぶ!

 ドディア帝国滅亡ルート、まだひっそり息づいてるかもしれない!

 あわあわしたリトは、ぽふぽふしっぽを揺らして手を挙げる。

「知らにゃい民、レォンしゃま、に、こぅげき、大変!」

 大変を、耳をぺしゃりとして表現してみた!

 リトの進言に、真っ赤だった皆が、真っ青になる。
 言いたかったことを完全に理解してくれたらしい、真っ青なルァルが、ダラダラ冷や汗をかいてる。

「……ま、間違いなく、国が亡ぶ……!」

 真っ青になってカタカタ震える皆に首を傾げたレォンは、巨大な鉤爪を掲げる。

『歯が痛くなくなったから、魔力使える。僕、人化できるよ!』

「レォンしゃま、人、なれゆ?」

 びっくりするリトに、おっきな龍が微笑んだ。

『幻影魔法の一種かな。おっきい身体だと不便なことがあるから、ちっちゃくもなれるんだ。その姿を人間に似せることができるんだよ』

「レォンしゃま、すごいでし!」

『えへん!』

 おっきな胸を張るレォンに、ぱふぱふ拍手する。

「……リト、レォン様は人の姿をとれるのか……?」

 おそるおそる聞くジゼに頷くように、レォンの巨躯が輝いた。

 ギュアァアァオォオ──!

 爆発する魔力の渦に

「わあぁ!」

 吹き飛ばされそうなリトを、ジゼの腕が抱き寄せる。
 飛ばされそうなジゼを、カィトの腕が支えてる。
 カィトの足には、ルァルもノァもアリアスもくっついていた。

 皆で、びゃーびゃーしてる。
 かわいい。


 びょーびょー逆巻く魔力の渦のなか、耳としっぽも、びょーびょーしながら、思わずによによするリトに

「ここは感動してくれるところじゃないのか?」

 すねたみたいに尖るジゼの唇が、世界の至宝だ──!




 魔力の渦がおさまったところには、つやつやの闇色の長い髪がさらさら揺れる、ちっちゃな少年が、リトを見あげていた。

 見あげられてる!

 ちっちゃい!

 3歳くらいかな?
 つやつやの闇色のおっきな瞳で、見あげてくれる。
 背中には、ちっちゃな闇色の翼と、おっきな闇色のしっぽが誇らしげに揺れていた。

「できた!」

 ちっちゃな両手を掲げるレォンに、ぱちぱち拍手する。

「おぉ! 人語、話しぇゆ!」

 噛んだ!

 ちっちゃいレォンが、生温かい目になってる。
 ちょっと切ない。

「リトと行くのだ!」

 えへんと胸を張るレォンが、めちゃくちゃ可愛くて、リトの耳としっぽがビリビリ震えた。
 ちっちゃな指が、リトの手を握ってくれる。

「はぅあ──!」

 燃える頬で胸を押さえてうずくまるリトに

「……強大な敵が現れたようだな」

 ジゼの目が凍えてる。




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