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ぷるっぷる
しおりを挟む『ど、どしたの!』
泣きだしそうなリトにびっくりしたように、ばさりと翼を広げたレォンに、皆がビクっと震えた。
レォンの激痛を思うと涙目になってしまったリトは、うるうるしながらレォンを見あげる。
「……あ、あの、いたぃいたぃ、止める……歯、抜く、でし……」
闇龍の巨体が固まった。
うろうろと闇の瞳が彷徨う。
『…………………………また生えてくるのかな?』
た、大変に残念なのですが!
「人間、大人、生えなぃ、でし」
ぺしゃりと耳としっぽを垂らすリトに、龍が胸を張る。
『僕、子ども!』
「レォンしゃま、子ども、歯、生えゆ?」
ふわふわの耳としっぽと一緒に首を傾げるリトに、皆が悶えて、皆で唸った。
「寡聞にして龍の歯の生えかわりは存じあげません……」
残念そうに眉をさげるテデと一緒に、リトの耳としっぽもぺしゃんと後ろに垂れる。
「知らな、でし」
哀し気にレォンの大きな瞳が垂れた。
『……抜かないと痛いまま?』
「抜かない、いたぃ?」
振り返ったら、テデは重々しく頷いた。
「これはかなり重篤な虫歯です。抜かない場合は痛いでしょう」
「いたぃでし」
『あぅあー!』
悶えるレォンにつれて真っ暗な世界が、ゆさゆさ揺れる。
「ぎゃあ!」
飛びあがったノァが早速逃げようとして、咄嗟に跳んだのだろうカィトがノァの腰に抱きついた。
「置いていくな!」
あれ、もしかしてカィト×ノァなの!?
いや、待つんだ、ここはノァ×カィトという涎ものの可能性も……!
「きた──!」
向こうのアリアスの目も爛々してる。
……というか、あの、アリアスは誰狙いなのかな……?
『わかた! 歯、抜く!』
『ずっと痛い』と『歯が無くなる』を天秤にかけて決意したらしいレォンが、涙の瞳で宣言した。
「歯、抜くでし、おてつだ、おねが、しましぁ!」
きゅ、とちいさな両の拳をにぎって、もふもふのしっぽを決意にぴんと立ててお願いしたリトに、皆が赤い顔で胸を押さえた。
「わ、解った。どうやって歯を抜く?」
復活したジゼの言葉に、テデはちょっと頭をひねる。
「ふつうなら鉗子を使って気合を入れて引っこ抜くんですが、歯がおっきいので……ジゼさま、魔法で歯の周囲を冷やし過ぎないように冷却してください。痛みを軽減、止血と感染症予防にもなります。カィト様、槍を歯に貫通させられますか?」
闇龍と大きな歯を見あげたカィトが引き攣った。
歯の一本だけで、カィトの身長くらいある。
ビビる気持ちは、とてもよくわかる。
こんなこともあろうかと、持ってこられた槍が、輝いた。
いやいやいや、こんなことないよね!?
突っ込んだのはリトだけだったらしい。
ふつう龍と闘うためには、距離を取って闘うためにも攻撃力としても槍が必須なんだって。
へー。
感心したのもリトだけだったらしい。
「や、やってみよう。リト、攻撃されないよう、お願いしてくれるか」
お願いするカィトが真っ青だ。
ぷるっぷるしてる。
腰が引けてる。
かわいい。
「かしこま、ましぁ!」
ぽふりとリトは胸を叩いた。
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